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颯陸 翔は殺せない....  作者: 気宇由。
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第29話 面倒な奴ら..

「...?..ここは..?」

「はぁ..良かったぁ..」


 ここはとある病院の病室。何者かに刺され重傷を負っていた翔さんが目を覚ました。翔さんに怪我を負わせるなんていったい何者なんだ..?


「死んじゃったらどうしようかと思いましたよ..うなされているようでしたけど..悪夢でも見てたんですか?」

「まぁ..そんなところだ..」

「それにしても、翔さんを刺した相手って誰ですか? 一瞬でどこかへ消えてしまって見えなかったんですよ」

「さあな..どこぞで恨みを買っていたようだ..」


 本当に心当たりないのかな? そいえば沢田さんはどこに..


 考えていると、一緒にいた強子さんが。


「げ..元気になって良かったね..! じゃ..じゃあ私はもう帰るから!」

「う..うん! ありがとう!」


 どうしたんだろう? いつもと少し違うような気がする..元気がないというか....


 俺は病室を去っていく強子さんの後を追う事にした。


「翔さん、お大事に!」

「ああ」


 

「強子さん!」


 病院を出てすぐ、追いついた俺は強子さんを呼び止めた。強子さんは立ち止まって。


「聞こえちゃったんだよね..リッ君を刺した人が言ってたの..」

「そういう事か..」


 実は俺も少し気になっていた。殺し屋である以上人を殺める事自体は当たり前のことなんだろうけど、翔さんが家族を皆殺しにするのだろうか..? 確かに怖い人だけど、俺には信じられない。しかしこのままにしとけば、颯陸翔が殺し屋だとバレる事になる..ここは俺が何とかするしかない!


「そ..そんな訳ないよ! 翔さんに限ってそんな事する訳ないよ..!」

「そ..そうだよね..ありがとう..それじゃあ..!」


 強子さんはそう言ってその場を後にする。俺は真実を知るために翔さんのいる病室へと戻った。


「翔さん..あの..」

「聞こえていたんだろ? 奴が言ってた事」

「は..はい..あの言葉..本当なんですか?」


 そうだ、そんな訳ない..翔さんはそんな事する人じゃ....


「本当だ。俺を刺した奴は、メキシコで俺が殺した家族の子どもだった」

「やっぱり殺してなんか....え..?」

「最初から分かってたはずだろ? 俺は殺し屋だ。どんな奴でも依頼を受ければ必ず殺す..それだけだ」

「そ..そうなんですね..分かりました..」


 俺は知っているようで何も知らなかったんだ..この人は都市伝説と謳われるほどの殺し屋..俺は大バカ者だった..

 俺はわざとらしく笑いながら。


「考えてみたら当たり前ですよね! だって殺し屋ですもんね! あはは..」

「ああ..そうだな..」


 それから、何も言葉が思いつかなかった俺はそのまま病室を後にする。それと同時に、翔さんと一緒にいた自分に強い恐怖を覚えた。


 そして、病室に行かなくなってから数日が経過していた..






「こんなに静かだったんだな..1人というのは..」


 恐らく、沢田はもう一度俺を殺しにここにやって来る。あいつらがいると邪魔だからな..これで良かったんだ。


 入院してから数日が経過し、伊男達が来る事もなくなった。

これでようやく殺し屋業を全う出来る..

 すると、病室をノックする音が聞こえる。ついに来たな..沢田..


「い..いきなり来てごめんね..どうしても確かめたい事があって..」


 俺は予想外の客人に動揺する。


「か..開運寺強子..?!」

「そんなに驚く?!」


 こいつ..! 何で今来やがった..?! もし奴が来たら....


「....?!?!..」


 この殺気..!! 間違いない..沢田だ..!! 何でこうも絶妙なタイミングで! 俺は掛け布団を広げて強子に。


「強子! ここに入れ! 早く!!」

「え..いや..急にそんな..私達まだ未成年だし..」

「くだらん事言ってる場合じゃない! 早くしろ!」


 俺は半ば強引に強子を布団の中に引き摺り込んだ。


 すると、病室の扉がゆっくりと開く。俺は平然を装いながら。


「やはり来たか..何度か監視に来ていただろ」


 沢田は不気味に笑みをこぼしながら、懐からバタフライナイフを取り出す。


「便所ムシみたいな男と開運寺強子が邪魔だったからな..今日もいたらいっその事殺すつもりだったが..ついに見限られた訳だな」

「これが普段の俺だ..元々人と群れるつもりなど毛頭ない」


 くそ..強子のやつ..地味に動きやがって..くすぐったいだろ..!! まずい..冷静を保てん..!

 俺はわざとらしく咳払いをし掛け布団を叩く。


「まあいい..颯陸翔..死ぬ準備はできてるか?」

「好きにしろ、やるなら早く殺れ」

「何のつもりだ?」

「お前には俺を殺す権利がある..それだけだ..」


 言うと、沢田は声を震わせながら。


「何だよそれ..あれからお前を殺す為だけに人生を捧げて来たんだ..それなのに..ようやく殺せると思えばこれだ..」

「お前の父親がよく娘の自慢話をしていた、まっすぐで自分の信念は曲げない強い子なんだってな」

「黙れ..!! 軽々しく両親の事を口にするな! 散々人を殺してきたような奴が偉そうに..!」


 その時、布団の中で身を潜めていた強子が突然起き上がる。


「違う..! リッ君はそんな事する人じゃないもん! 貴方にリッ君の何が分かるって言うの?! ....って..沢田さん?!」


 このバカっ..! 何で出て来やがった..! 沢田は驚きながら。


「開運寺..強子..あんたたちそういう関係だった訳ね」

「そういう関係? どういう関係だ?」

「リッ君! 聞かなくても良いよ! ややこしくなるから!」


 強子は耳まで顔を赤くしながら言う。何なんだ?


「まあ何でもいいよ..2人とも殺すから..」

「ちょ..ちょっと待って..! 沢田さんどうしちゃったの?! 声も学校と違うし!」

「あれ偽りの私だ。本当の名はアリア..メキシコの小さな田舎町で生まれた農家の一人娘..そして、この男が紛れもなく私の家族を殺した張本人..」


 沢田はそう言ってバタフライナイフをこちらに向ける。まずい..このままだと強子が..


「強子..!!」


 俺は咄嗟に強子の前に身を乗り出す。くそ..まだ傷口が塞がってる訳じゃないってのに..何をやってる..俺は..


「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!!!」


 その時、男が病室に入ってくる。俺は男を見て。


「伊男..? なぜお前まで..」

「やっぱり..やっぱりそうじゃないか! この嘘つき..!!」

「...は?..」


 急に来て人を嘘つき呼ばわりだと? 何なんだ?


 すると、伊男は沢田を見つめて。


「沢田さん..残念ですけど、その人を殺しても..仇はとれませんよ..」

「何が言いたい..?」

「ですから、翔さんは貴方の家族を殺してないんですよ! 貴方の家族を殺したのはメキシカンマフィアの連中だったんです!」


 伊男はそう言って、一枚の紙切れを沢田に見せた。


「これは、その当時書かれていた記事です..頑張って探しました!(まあ正確には鬼きついFBIに探してもらったんだけど..)」

「そんな..バカな..」

「貴方は感情が昂りすぎて何も考えられない状況だったんでしょう..数日後にこうやって記事が出てました..」


 その記事に書いてある文にはこう綴られていた。


「メキシコの田舎町で農家を営む夫婦が、メキシカンマフィアの強盗に遭い死亡。しかし、時間から1日後メキシカンマフィアは壊滅、政府は『その事件に関しては我々も調査中であり、軍事勢力を持たなければ不可能だとコメントをしている』

世間では、神からの天罰だと囁かれているそうだ。」


 沢田は涙を流しながらその場で膝をつく。


「そんな..私は何のためにここまで..」

「必要なかったんですよ..復讐なんていうネガティブな感情は..これからは..貴方のために生きてください..ご両親の為にも」


 伊男が優しい口調で沢田に言う。俺は、体を震わせる沢田を見て。


「何かとお節介を焼く奴だったが..最後まで良い奴らだった..」

「翔さん..」


 言うと、沢田は涙を拭いながら足早に病室を後にする。追いかけようとする強子に。


「1人にしてやれ..」

「そ..そうだね..」


 すると、強子が突然俺に頭を下げて。


「ごめんリッ君..私..リッ君の事疑ってた..」

「....」


 何も返せなかった俺は伊男を見て。


「伊男..わざわざ調べたのか」

「すいません..でもどうしても信じられなかったんです..」

「バカか..お前は俺を買い被りすぎだ..」


 言うと、伊男ははにかんで笑う。全く..こいつらときたら..嫌でも俺に付き纏うつもりかよ。


「リッ君? ニヤついてる?」

「そ..そんな訳ないだろ..!」


 くそ..この女といるとやはりペースを乱される。だがまあ..今は良しとしよう..


「でも私びっくりしゃったよぉ〜、リッ君いきなりベットに引きずり込むんだもん」

「翔さん?! 何しようとしてたの?!」

「違う違う! 私を庇ってくれたんだよ!」

「そういう事か..心臓止まるかと思った..」

「そ! じゃあ私はバイトあるから! リッ君退院したらみんなでお祝いしようね! それじゃあ!」


 そう言って強子は病室を後にする。勘違いするな俺..強子は標的だ..俺の手で殺さなければならないんだ..


「翔さんはいつもそうだ、大事な事は何も話してくれない」

「何だと?」

「今回だってちゃんと話してくれたらややこしいことにならなくて済んだんですよ? 一応..相棒なんすから..」

「す..すまなかった..」

「やけに素直じゃないすか」

「うるさい..!」


 俺は少し顔を赤くして答える。しかし相棒か..俺にとっては縁もゆかりもない言葉だな..


「メキシカンマフィアの壊滅..どうせ翔さんがやったんですよね? 沢田さんに重たい十字架を背負わせたくなかったから..違いますか?」


 俺は鼻で笑って答える。


「単なる気まぐれだ」


 








 


読んでいただきありがとうございます。

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