第13話 一難去ってまた一難
「なるほど..生徒会長はFBIで、開運寺強子の監視をしていて、伊男を俺と勘違いしているという訳か..事情は分かった。速やかに殺..」
「ダメですよ! そんな事したら国際指名手配ですよ!」
とりあえず昨日あったことを翔さんに話した訳だが、俺がいつ殺されてもおかしくない状況は依然として変わっていない。何とかしてあの生徒会長に誤解を解いてもらわな..
「おい冴えない、茶を出せ」
「冷蔵庫にあるから適当に出して..って、いつの間にいたんですか?! アンナさん!!」
「今気づいたのか? 昨日からいたぞ、床下に」
「床下って..新手のストーカーじゃないんだから..」
とは言え、昨日アンナさんには命を助けてもらった身なので文句は言えない。とりあえず気が済むまで..
「おい冴えない奴、シャワー借りるぞ」
「洗面台の横にバスタオルあるからそれ使って..って、何であんたまでいんだよドM変態女!」
「誰がドM変態女だ! 私はただ、颯陸翔の拷問を受けに来ただけだ!」
休日だと言うのにゆっくり茶もしばけない。しかも俺は冴えないじゃなくて佐江那だし..しのぶさんに関してはもはや冴えない奴になっちゃってるし..なんかもう嫌..
「お前ら、人の家にズカズカ入り込みやがって..帰るときはしっかり掃除していけよ」
「翔さんもっと言ってやってくださいよ!」
「アンナ..床下はちゃんと掃除したんだろうな?」
「そういう問題じゃないでしょ?!」
しかし、せっかくみんな集まってる訳だし、ここは生徒会長をどうするのか話し合う良い機会かもしれない。
「皆さん、生徒会長の話は知っていると思いますけど、このままあの人を放っておけば俺たちの楽しい高校生活がお釈迦です。何か対策を考えましょう!」
「放っておけば良いだろ..牙を剥いて来たら殺せば良い」
「殺すのは無しです!」
翔さんのことだからそう言うだろうとは思っていたけど、さすがに殺すわけはいかない。他の人たちの意見も聞いてみよう。
「アンナさんは?」
「殺..」
「だからダメだって!」
ダメだ。この人たちの頭の中は殺す事しか考えてない。最後の望みはしのぶさんだ。
「しのぶさんは?」
「そうだな..縛られ..」
「はい却下」
1ミリでも期待した俺が馬鹿だった。だめだ。この人たちは殺傷能力はあっても危機管理能力が欠落している。俺は大きなため息をついた。
「はぁ..どうすればいいんだ..」
「伊男、俺は標的の追跡に行ってくる。話は後だ」
「あ! ちょっと翔さん!」
翔さんはそう言って強子さんの所へ向かった。つられてアンナさんたちも動き出す。
「面白そうだ、私も行く!」
「強子の所に行くのか?! 私も行くゾ!」
「2人まで! ちょっと待ってくださいよ!」
結局俺も行く事になり、休日だと言うのに俺は強子さん暗殺に駆り出された。
「ていうか翔さん、休みの日だしどっか出掛けてるんじゃないすか?」
「強子の携帯にGPSを埋め込んである、奴に隠れる場所などない(笑)」
(うわ..こわ..もはや引くレベルなんだけど..)
翔さんのGPSを頼りに強子さんの元へ辿り着いた訳だが、強子さんはどこか慌てているように見える。一体何かあったのだろうか。
「翔さん、なんか強子さんの様子おかしくないすか?」
「俺の殺気に気づいて怯えているだけだろ」
「いや..違うと思う..」
強子さんの様子は明らかにおかしい。心配になった俺は思わず強子さんの所に行ってしまった。
「強子さん! どうかしたんですか?」
「い..伊男くん! どどどどうしよう! 綾瀬先輩が..!」
「おい! 伊男! 何考えてやがる!」
「リッくんにアンナちゃんたちまで! 私の話を聞いて!」
そう言って、強子さんは動揺しながらも話を始めた。
「今から30分くらい前の話なんだけど、今日は綾瀬先輩と買い物に行く予定だったんです....」
『綾瀬先輩! お待たせしました!』
『来たか強子、すまないな付き合わせて』
『気にしないでください! タピオカ飲みたいんですよね?』
見た目の割に意外と女の子なのは気にしないで。それで私は綾瀬先輩が1人だと寂しいからという訳でついて行く事になったんだけど、突然綾瀬先輩の様子がおかしくなったの。
『綾瀬先輩? どうかしたんですか?』
『誰かにつけられている..』
『ええ?! ストーカー?!』
それから綾瀬先輩はやたらに周りばかり気にするようになって、少し怖くなって来た私も後ろを警戒するようにしたんだけど、突然綾瀬先輩が私の頭を掴んで下げたの。
『伏せろ! 強子!!』
『な..なに?!』
綾瀬先輩の一言と同時にすごいでかいマラソンのピストルみたいな音が鳴り響いて、気づいた時には柄の悪い男の人たちに囲まれてて..
『見つけたぞ..キャシー..』
『貴様ら..まさか?!』
『お前がとある学校を根城にしているのは知っている..次は止められるかな?』
『Damn!!』
それで私も抵抗したんだけど、綾瀬先輩がここで起きた事は全て忘れて家に帰れって..それで今に至るという訳。
「なるほど..何者かに攫われたって事か..でも一体誰が..」
「FBIの端くれなら恨み嫉みは付き物だ。珍しい事じゃない」
「確かに..翔さんの言ってる事は間違いですね」
放っておけない気持ちもあるが、正直に言えば俺たちにはメリットがない。むしろこのまま生徒会長が居なくなれば全ての問題が解決する..そう考えていると、強子さんが深く頭を下げて俺たちに言った。
「お願い!! 綾瀬先輩を助けて..!! 私の大事な友達なの!」
「強子さん..」
強子さんの気持ちに少し同情してしまう。どうしようかと迷っていた時、翔さんが言った。
「断る..俺には関係の無いことだ。むしろ邪魔者が居なくなればこちらにとっては好都合だ」
「そう..だよね..ごめんね! 無理言って..」
「強子..」
強子さんは涙目で翔さんに言った。それを見たアンナさんとしのぶさんも思わず強子さんの名を呟く。
「でも..! 私は行く! 私の事はどうなっても構わないから..友達の為だったら命だって惜しまない!」
「なに?」
翔さんが強子さんを問いただした。
「死ぬ覚悟で行くってこと!!」
そう言って強子さんは走ってどこかへ行ってしまった。慌てて止めようと翔さんたちの方を向くと、3人とも下を俯き何かを呟いている。
アンナ 「強子..」
しのぶ 「友達の..為..」
翔 「死ぬ覚悟..」
「3人とも..どうかしたんですか..?」
そして翔さんが言った。
「伊男..行くぞ」
「翔さん..」
(やっぱりこの人は何だかんだ良い人なんだ..)
「あいつが殺されてしまえば俺の任務は失敗になる! それだけは阻止しなければ..!」
「そっちの心配ね!!」
一瞬でも翔さんに感動してしまった自分を殴りたい。アンナさんやしのぶさん達も、続いて言った。
「強子は私を友達と言ってくれた..見捨てる訳にはいかない!」
「あいつは私に居場所をくれた..友達ってのがどんなもんなのかはまだあんまし分かってないが、こう言う事なんだろ?」
「2人とも..」
そして俺たちは、生徒会長救出作戦を実行する為、翔さんのGPS機能を頼りに強子さんの跡を追った。
「キャシー..この学校に爆弾を仕掛けた..タイムリミットは1時間..縛られた状態から爆弾を止め、生き延びることができるかな?」
「貴様..アメリカの爆破テロ組織「ボマー」の残党だな..? 私に爆破予告を阻止されたのがそんなに悔しいか?」
「ああ悔しいねぇ?! 悔しくて夜も眠れねえよ!! だから..次こそは貴様をこの爆弾で葬る! 絶対にな!!」
休日とは言え、部活動などで校内にいる生徒も少なくない。なんとかしなければ、多くの犠牲者を生む事になる。私に残されたタイムリミットは1時間。何としても、爆弾を食い止めなければ....
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