今から○○○を○○○いたします。
「はぁ~い。紳士淑女のみなさん、こんばんはっ!! 今宵も我が斜陽倶楽部の宴にお集まりくださり、誠にありがとうございます!!」
「だ、大盛況であった前回にも増して、こんなにも多くの方々にご参加いただけましたこと、主を含め、私共も大変っ。かっ、感激しております~!!」
「さて、第2回となります今回のオークションですが、5名の勇敢な紳士淑女が参加してくださいましたッッ!! 果たして彼らはいったい、どんな権謀術数を見せてくれるのでしょうか~ッッ!?」
「そして勝者はどんな快哉を叫び、敗者はどんな絶望の表情を浮かべるのか。ふひひっ。最後のその瞬間まで、是非ともお見逃しなく。……それではっ、第2回連帯責任オークションをここに開催させていただきますっ!!」
豪華なホールの壇上に、動物の仮面を被ったスーツ姿の4人が現れた。
ウサギ、オオカミ、クマ、ヒヨコをモチーフにした、ちょっとホラーチックな仮面。そんな不気味な4人組が大仰な素振りを見せながら、やたらハイテンションな口上を述べた。
彼らを拍手で迎えている観客も同じく、それぞれが思い思いの仮面を被っている。さながら仮面舞踏会の様相だ。
そして彼らが仮面をしている理由はと言えば、雰囲気作りというのもあるが……ここに居る殆どの者は、身分や顔がバレてしまうと社会的に問題となるからであろう。
「はいはぁ~い。では会場の準備が終了するまでの間に、この連帯責任オークションについてルールのおさらいを致しましょう。皆さま、こちらをご覧くださいっ!!」
ウサギの仮面司会がパチン、と指を鳴らすと、会場の照明がパッと消えた。と同時に、ホールの中心にプロジェクターが機械音を立てながら降りてくる。
「こ、今回、初めて参加される方々もいらっしゃいます。前回開催した際の録画映像を交えながら、あ、改めてご紹介いたしましょう!!」
今度はクマの司会が壇上のスクリーンを手で指し示す。
そこに表示されたのはフロア全体の地図と、5つのウィンドウに映された正三角形の部屋だった。そのどれもが、天井から見下ろした角度で撮影されている。
フロアの地図から察するに、どうやらこの5つの三角形の部屋は円状に並んでおり、上から見ると正五角形になるように配置されているようだ。
3つの壁に囲まれた4畳ほどの狭い部屋だが、見ている限り何とも形容しがたい圧迫感がある。インテリアは小さな机と簡素な椅子、そしてノートパソコンのみ。お世辞にも居心地が良いとは言えないだろう。
さらには若い男女が1人ずつ、5つの部屋にそれぞれ入れられていた。彼らが司会の言っていた5人の参加者に違いない。
「私どもの扱う連帯責任オークションは、普通の競りとはルールが大きく異なります~!!」
「名称からも分かるように、参加者5名には連帯責任が伴うのです。そしてなによりも特徴的なのは、このオークションは値段が上がっていくのではなく、時間と共に下がっていくということでありますッッ!!」
2人の司会の言葉と共にスクリーンの表示が変わり、オークションの説明が箇条書きでつらつらと示された。
①出品された商品は事前に参加者が希望したものが用意される。
②出品者が決めた即決額(上限)からスタート。
③入札額は10分ごとに即決額の10%ずつ下がる。
④入札者が出た時点で競りは終了。
⑤即決額と入札額の差額は入札者以外の参加者で均等に負担。
⑥入札者がおらず、ゼロ円になった場合は参加者全員で負担。
⑦支払い能力をオーバーした場合、その者はオークション終了後に自身を支払いに使用される。
⑧参加者は5人。何らかの理由により途中で人数が減った場合、オークションは残りの参加者で最後まで執り行われる。
「もしも支払いが出来なくなった場合……少しばかり過激なショーの主役になって稼いでいただきます!! その際にはここにいる心のお優しい皆さん。ふひひっ。可哀想な彼らにどうかご寄付のほどをお願いいたしますねっ!!」
つまりは他人の人生が終わる様を見て楽しむ代わりに、運営に金を寄越せというのだろう。
それのいったい何が面白いのか。だが会場ではハハハハ、と楽しそうな笑いに包まれていた。