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○○○○オークションにご参加くださり、ありがとうございます。

 良かった、何とか間に合った。


 荒くなってしまった息を、ふぅふぅと整える。

 おっと、いけない。折角仕立てたばかりのスーツが、走ってきたせいで乱れてしまった。

 普段あまり着慣れないモノというのは動きづらいし、何となく落ち着かない。


 生憎とこのモニター室には鏡が無い。仕方がないので、着崩れた部分を手でパンパンと叩いて適当に直していく。



 あんまり直らなかった気もするけれど、どうせここには自分以外には誰も居ない。(ゆえ)に誰に見られるわけでもないのだが……こういうのは最初が肝心というものだ。ある種の様式美とも言えよう。



「……もう、いっかぁ。やめたやめた」



 ともかく、これで建前上は準備ができた。どうせ私に文句を言ってくる人間など居ないのだから、これでいいのだ。

 言っていることがさっきからコロコロと変わっているが、それが私なのだから仕方がない。



 意気揚々と私は部屋の奥へと歩いて行く。そこには大小さまざまなモニターが並べられており、雰囲気はまるでSFやスパイ映画で良く見る作戦室のようだ。


 実際、各モニターには様々なライブ映像が表示されていた。食事を楽しんでいる客や、トイレで女と密会している男、密室にある部屋で挙動不審な動きをしている者……などなど。


 これらの映像を撮影しているカメラは、私が今から開催するパーティ会場のいたる所に設置されたものだ。現代の技術によって最小まで小型化されているにも関わらず、画質も音質も最高レベル。まぁ、他人の情事なんて見たくもないけれど。

 だけどこれのお陰で、私はモニター室に居ながらにして会場の全てを把握できるようになっている。



 私はその中でも、中央にある巨大なモニターに目を付けた。

 各場所の映像がウィンドウでまとめて表示されていて、このモニターだけで全体をチェックできる。今は私一人だから、これが見える席にしよう。


 他の席よりも明らかに質の違う革張りのリクライニングチェアーに、私はドサっと座った。程よいクッションのお陰で、私を疲れさせないように包み込んでくれている。これなら長時間座っていても耐えられるはずだ。


 ふふふ、まるで玉座のようだ。ここの主は私なのだから、それもあながち間違いではないけれど。

 座り心地の良さに一先ず満足した私は、モニターに再び目を移す。



「さてさて? 今回の()()()()オークションはどうなることやら」



 モニターのウィンドウには、5人の男女が映し出されている。その誰もが緊張した面持ちで、尚且つソワソワとしている様子だ。

 それもそうだろう。彼らは今から己の人生を……いや、命を懸けた舞台に上がるのだから。


 これから起こるであろう彼らの奮闘を脳裏で思い描いているうちに、今度はパーティ会場の方で変化があった。どうやら司会進行役がステージに現れたようだ。



「ふふっ。皆さん、面白いショーになるよう期待していますよ」



 さぁ、私はここで高みの見物をさせてもらいましょう。


第一部まで投稿を予定しております。

本日は4話まで。全7話です。

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