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第四話「剣姫」

 「――騒ぎあったと聞いて来てみたら……おい、サク一体何があったんだ?」


 厳つい顔立ちばかりの衛兵達の間をかき分け少し小柄でまだ若い顔立ちの兵士がオレに問いかけた。


 「おっ、その声はドレイクか」


 ドレイクはこの町の衛兵の新入りで最年少ながらも戦闘センスのある、いい兵士らしい……それと同時に超が付くサボり魔で有名な奴だ。

 因みにオレはそっちのイメージでしかコイツを知らない。

 オレとは町のコンビニでよく出くわし、どうでもいい話に花が咲く事も多々ある仲だ。


 「おうよ、ちょっと待てよ……おーい!ヒーラーはこの二人の治療急いでくれ~!」


 「オレは大丈夫、それよりもそっちのメイドを優先で頼むわ」


 その言葉を聞いて僧侶らしき女性がメリィに近づき回復魔法を掛け手際よく治療を終わらせる。


 傷がいえたメリィは気持ちが昂り落ち着かない様子で衛兵達に魔人の襲来を告げる。

 

 「兵士様聞いてください!! 魔人です魔人、魔人が現れたんです」


 その言葉に衛兵達にも少しどよめきが起きたのが感じ取れた。


 「おいおい、まずは落ち着けよメイドさん、焦っても仕方ないぜそれにしても魔人か…………どうしやすかい? 団長」


 困り顔のドレイクの視線の先には周囲の兵士とは雰囲気が違うオーラを放つ他の兵士よりも頭一つ抜けた巨体を持つ隻眼の男がいた。

 

 隻眼の男は周囲が沈黙に包まれ、皆が落ち着くのを少し待ってから口を開く。


 「……なるほど魔人ねぇ、この場所をを意図的に襲撃したとなるとそれは一大事だなぁ」


 団長の喋り口は穏やかだがそれ以上の緊迫感を感じさせる。

 

 その後団長は、うーんと頭を捻り何か考え事をした後に部下に指令を出した。


 「しょうがない事態が事態だ、俺はここにいるお二方と領主様に会いに行く事にするよ、魔人の件と屋敷の惨状も報告しないといけないしねぇ……現場は副団長に任せていいかな?」


 「はッ!!」


 副団長と呼ばれた男は強く返事をして、サッと周囲の兵士に手際よく指示を出し始めた。

 それを少しの間見届けた団長はその後はぁーっと軽くため息をついた。


 「おや、らしくないっすね団長」


 「はははッすまんなドレイク……魔人、これは本当に面倒くさい案件だ――それよりも」


 「オレ達の事か?」


 オレは二人の会話に割って入った。


 「……領主に会うっていうさっきの話だがオレは構わないぜ、どっちにしろ領主の持ち物の屋敷はぶっ壊れちまったし、この物損を報告せずに隠し通すなんて事は出来るとは思えん……な? メリィ」


 メリィはコクンと頷く。


 「私もここは正直に領主様に現状を伝えた方がよろしいかと」


 「うむ話が早くて助かるぞ ――動けるか? それならば急ぎで申し訳ないが今から領主様のもとへ向かう事としようか」


 こうしてオレとメリィは団長とドレイク、護衛の兵士数人に連れられコラーク領主の元へと足を運ぶ事となった。





 冒険者の町サロークから馬車で二時間程度、コラーク領主の住む邸宅へとたどり着いた。

 

 正門で厳重な身体検査を受け、オレとメリィと団長の三名が代表者として領主と面会することが許可された。

 談話室に通されたオレ達はソファに腰かけ待つように指示を受け、そこで領主がやってくるのをしばらく待った。

 





 「――――ふむ、魔人の襲来そしてそれによる屋敷の損失確かに聞かせてもらいました」


 

 直立不動のままキビキビと分かりやすい状況報告を行った団長に対し優しい声色でそう返答した整えられた髭がトレードマークの品の良い顔立ちの初老の男性。

 

 このナイスミドルこそコラーク領主アルベルト・キタハシその人であった。

 

 それに対し団長は、はいと返事を返した。

 場の雰囲気は領主という要人がいるにも関わらず、けして物々しいわけではなくどこか和やかな雰囲気すら感じさせられるものだった。


 ガチガチに緊張している団長を除いて。


 キタハシはテーブルに用意された茶菓子を口に含み紅茶をズズッっと啜る。

 それを見てソファに腰かけていたオレとメリィはテーブルに手を伸ばし紅茶と茶菓子を頂いた。


 「うちのメイドがブレンドしたものだ、お口にあったかな?」


 「ふんっまぁまぁね、それよりもオレ達はお茶会を開きに来たわけじゃないぜ」


 オレの言葉にキタハシはコクリと頷き飲み干したティーカップをテーブルに下ろし少し表情をこわばらせた。


 「……先の戦闘、まずは何より死者が出なくて良かった、なに屋敷の事はどうでもいい家は再び作り直せば良いだけだ」

 

 その言葉にオレはホッと胸を撫で下ろした。

 最悪場合賠償しろだーとか言われるんじゃなくてちょっとドキドキしていたからだ。


 「それよりも魔人の再襲来の可能性それが私にとっては気がかりなのだよ」


 今回の魔人の襲来は明確な新参転生者潰し、そう思わざるを得ない内容。

 このままでは仮にあの場所にまた新しく屋敷を建てたとしても転生者達が魔人の脅威に怯えて過ごす事になるのは免れないだろう――。

 

 ……あれだ、オレには読めたぞ次の展開が領主の言葉が、頼むからこの予想は外れていてくれよ!


 「一つ聞いてくれ……傷心の所大変申し訳ないが、一度魔人を退けた君達に頼みたい事が――」


 「いやです……」


 自分でも驚くほどの即答。


 「は?」


 「はぁ!」


 「はぁッ!?!?」


 この場にいたオレ以外の全員が一斉に声を上げた。

 

 なんだお前ら仲良しか?


 しばしの気まずい沈黙。

 おい、オレなんかやっちゃいました?


 

 

 コンコンっとドアをノックする音が響く。

 どうぞ、とキタハシが発した事で静寂の空気が少し和らぐ。


 ナイス来客!


 「まったく話を聞いていれば腑抜けたやつめ!! 私は『先輩』として恥ずかしくなったぞ!!」


 バタンと勢いよくドアを開き顔を出したのはオレよりほんのちょっと年上の雰囲気の女剣士。

 

 同性のオレでも見蕩れるような美しい顔立ちに手入れの行き届いた長い金髪、くすみの一切無いサファイアのような輝きを持つ眼。

 鎧で隠し切れていない胸の張り、ヒロインのテンプレのような女性がそこにいた。


 「こほん……紹介しよう彼女は――」


 「ライラ様ッ!! お久しぶりです!!!」


 彼女の登場に一番に反応したのは意外な事にメリィであった。


 「え? メリィこの人と知り合いなの?」


 「ゲホゲホッ……そう彼女は――」


 「はい! 彼女はライラ様、サク様が屋敷に来られる以前屋敷で私と過ごしておられた方です」


 「そう!! 私は君があの屋敷で過ごす前の先代転生者さ、つまりは君の先輩分かった?」


 ライラと呼ばれた女剣士は胸に手を当て、えっへんとこちらにアピールしてきたが敢えて触れないでおこう。


 「……オレの先輩?」


 思えば当然の事か、オレよりも先に転生した人がいくらでもいる世界なわけだし。

 そういやメリィもオレの17代前までの転生者を見てきたって言ってたな。


 ……あれ? メリィって今何歳???

 待て待て!! それは今考えるな、多分触れちゃいけないやつだ。

 

 「あのーそろそろいいかな?」


 キタハシは言い方こそさっきまでと変わらぬものだが少し怒ってる気がする。

 触らぬ神に祟りなし、空気を読みどうぞと頷いた。


 「…………うん、あらためて紹介しよう彼女はライラ・リ・アレクサンドル・ジブリール・サナエ、アマノサクくんの先輩転生者であり『剣姫』の称号を持つ剣の使い手……そして今後の魔人撃退を君達と共にやってもらう心強い味方だよ」


 「はぁ!?」


 急展開すぎるぞ、おい!


  ~~~~~~~


 名 前:ルト・ドレイク


 レベル:25


 スキル:【】


 ドレイクの能力値


   H P: 115


 こうげき: 35


 ぼうぎょ: 38


  まほう: 30


 すばやさ: 30


 かしこさ: 25


  そうび:兵士の鎧【銅】

     

     :兵士の剣【銅】


     :兵士の盾【銅】


 称号「B+兵士」


 ~~~~~~~


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