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ラナンキュラス学園には、初等部、中等部、高等部が合同で使う大きな図書館がある。お城のような外観の建物で、三階建ての吹き抜けだ。
初等部も利用するので、絵本や児童書まである。案内された時から、早く利用しようと決めていたので早速行くことにした。
途中、A組の前を通る。ドアの隙間から、サビスが女の子達に囲まれているのが見えた。
入学式からおよそ一週間、サビスは既に学年一のモテ男だ。いつかファンクラブが出来そうだな。
…さすがにそれはないか。ちょっと見てみたい。
図書館に来るのはこれで二度目。天井が高ーい。周りをぐるっと囲む本棚は圧巻だ。合同で使う施設なので、中等部や高等部の先輩方が沢山いる。初等部の生徒はいるかなー。
あれ? 私一人……?
アウェーだ。いや、初等部も使えるし。
気になるタイトルを見つけたので、手を伸ばす。
届かない。あと少しなのに。脚立的なものはないかと、辺りを見る。ないか。
もう一度チャレンジだ。つま先立ちをして、ぎりぎりまで手を伸ばす。うおぉぉぉ…。踏ん張っていると、上から手が伸びてきた。え、なに。
「この本でいいのかな」
爽やかな笑顔の好青年が本を取って、手渡してくれた。
「ありがとうございます」
「はは、気にしなくて大丈夫だよ」
日焼けした肌から、のぞく白い歯が眩しい。かっこいい。
「届かなかったら、司書さんを呼ぶといいよ」
そう言って去っていく先輩の後ろ姿を、私はぼうっと見つめていた。ネクタイの色は紺だった、中等部の生徒か…。年の差は少なくとも五歳。
どうしよう、先輩の笑顔が頭から離れない。
「アーメナ様、図書館に行っていたんですか」
教室に帰ると、取りまきの一人に話しかけられた。そう、私にはいつの間にか取りまきが出来ていた。
今話しかけてくれたエリンちゃんは、漫画にも出てくる。アーメナの悪事に加担するのだ。それを思うといまいち心を開けない。
「ええ、そうなの」
「どんな本を借りたんですか」
「探偵小説よ」
でも、ぼっちになる心配がないのは有難い。
「今日、サビス様はトマトの冷製パスタを食べたそうよ」
取りまきの子が嬉々として話し出した。なんだその情報。すっごくどうでもいい。
「まあ、そうなの」
「私が食べたものと同じだわ」
そんなことさえ、話のネタにされるサビスに深く同情した。
ベットの上で借りた本を読む。先輩のことを考えてしまってはかどらない。私が困っていたら、さっと手を伸ばしてくれて…。思い出して悶えた。
どうやら私は、恋に落ちてしまったようです。年の差なんて関係ない!