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やっぱりここは「loveラナンキュラス学園」の世界なんだなあ…。
この前のパーティーで、サビスに実際に会って改めてそんなふうに思った。
酷く疲れたけど、一つ良かったことがある
私は怖かった。サビスに会ったら、漫画のように好きになってしまうんじゃないかと。でも、そんなことはなかった! まだ物語は始まっていないから、油断禁物だけど、とりあえずは安心だ。
………漫画で見たキャラが目の前にいるなんてすごいことだよね。なんだか不思議な気分だ。
漫画のサビス様は、ぶっきらぼうでちょっと口が悪くて、でも、正義感がつよくて、実は優しい。 そして主人公は、サビスの不器用な優しさに惚れるんだよね。
アーメナに嫌がらせを受ける主人公を庇うシーン、あれはカッコよかったなー。
「あっ」
私は気づいた。パーティーでの不可解な一件についてだ。
サビスはこの世界ではあまりいない、私の黒い髪についてなにか言いそうになったんじゃないだろうか。
気味が悪いとか、カラスみたいだとか………。
絶対にそうだ。だから、焦ったんだ。
………なんて失礼な奴だ。
お父様の都合がついたので、旅行に行くことになった。行き先は海!
泊まるのは、海辺のコテージです。
うおー。広ーい。しかも綺麗だ。コリスがわぁっ、と声を上げる。
二人で中を探検しようということになった。なんだかワクワクする。
「姉さま、またベットルームがあるよ」
なんと。これで四つ目じゃないか。一人一部屋あるね、と笑い合う。
海は前世でも旅行に行ったなー。ただ、家からかなり距離があった。約七時間の車の旅だ。カーナビに海が映ったときは、興奮して、窓から身を乗り出して怒られたっけ。
昼間、砂浜でコリスと夢中で拾った貝殻を見つめる。
前世で拾った貝殻は家に帰ってからもずっと、大事に持っていた。
今はどこにあるんだろう。
旅行は好きなんだけど、この、夜になると淋しくなる感じが嫌なんだよね。なんだろう、ホームシックなのか………?
懐かしい人達に思いを馳せていると、いつの間にか、眠りに落ちていた。




