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さぁ、とうとう今日はパーティーの日だ。
ヒーローと遂に会うことになる。………やっぱり嫌だー! 行きたくないよ。怖いよー。だが、そろそろ腹をくくらなければなるまい。
いざ、出陣!
パーティーの会場にやってきました。ちなみに、コリスはお留守番だ。見送りのとき、少し不満げだったなあ…。そうだよね、一人で留守番なんて嫌だよね。まあ、お手伝いさんたちがいるけど。
待っててね、お土産を持ってすぐに帰るから。
小さいパーティーだと聞いていたのに、会場はめちゃくちゃ豪華で、広かった。きらびやかで、眩暈がするよ。大きいパーティーってどれだけすごいのだろうか。私もいつか行くことになるんだろうな。
代々付き合いがある人ばかり、というのは本当のようだった。お父様とお母様は会う人、会う人と親しげに話していた。一方の私は、ほとんど面識のない人で、初めましての繰り返しだった。そして、いつその時が来るのかと気が気じゃなかった。
美味しそうなものが沢山あるのに、てんで喉を通らない。なんてこと。
……にしても彼はいったいどこにいるんだろう。さっきから周りをちょくちょく見回しているんだけど、姿がみえない。庭園の方にいるのかな。顔を合わせずに済むほど幸運ことはない。
「アーメナ、こちらロイホン家の方よ」
きた。ついにきた。
振り返ると、ヒーローの、サビス・ロイホンが両親の傍らに立っていた。
…くわばら、くわばら……。
サビスは漫画通りの、オリーブ色の髪をしていた。まだ小さいから漫画のイメージとは、完璧には一致しないけど、やっぱりあのサビス様だな…。美少年だ。
「初めまして。アーメナさんだよね」
サビスのお父様、ロイホン様が声をかけてきた。優しそうな人だなあ。
「はい。アーメナ・ノーラドです。初めまして」
「まあ、可愛いらしい、お嬢さんね。アーメナちゃんの家とロイホン家は長い付き合いがあるのよ」
ロイホン夫人が微笑む。おっとりした美人だ。
「ほら、サビスも挨拶をしなさい」
ロイホン様に促されて、サビスが口を開く。
「初めまして。サビス・ロイホンです」
そう言ってサビスはじっとこちらを見つめてくる。え、私がどうしたの。
「……………髪が、」
サビスはぼそっと呟き、口をつぐむ。しかし、私は見逃さなかった。呟いた瞬間に、今まで無表情だった顔に一瞬、焦りが浮かんだのを。
いったい、なにを言おうとしたんだ。
「私の髪がどうかしましたか」
「いや、何でもない」
そんな言い訳が通用すると思うなよ。私はサビスをじぃっと見つめた。
「分かったよ」
勝った。
「髪が綺麗だなと、思った」
「は………?」
どういうことですか。褒められたのか?
まあっ、という声に目を向けると、お母様とロイホン夫人がそれは楽しそうに、談笑していた。時折、こちらに微笑まし気な視線を送る。
笑えない誤解を生んでいるようだ。
とりあえず、嫌われてはいないのかな、と思ったのだけど、その後は話しかけてもろくな返事をもらえなかった。やっぱり、嫌われているのか…。
パーティーが終わり、やっと我が家に帰って来られた。ああ、疲れた。猫をかぶってにこにこしているのは大変だ。
ただいまー。
ドアを開けると、コリスが駆けてきた。
「廊下を走ったら、だめでしょう」
「はぁい」
お母様が先生のようなことを言う。
「お帰りなさい」
「ただいま。これ、お土産だよ」
私は会場のホテルで買った焼き菓子を手渡した。
「わぁっ。ありがとう」
コリスが大きな瞳を輝かせる。
「お姉さま、パーティーは大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だったよ」
「そっかぁ。よかった」
にっこりと笑うコリスに、私も思わず笑みがこぼれた。