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 パチリと瞼を開くと部屋はまだ薄暗かった。しんとした部屋にゴソゴソと毛布の擦れる音が響く。私はゆっくり体を起こして、大きく背伸びをした。


 すぐそばでソフィちゃんが寝息をたてている。

 あれ? エリンちゃんの姿が見当たらない。もう起きてるのかな。


 私は立ち上がり、部屋を見渡した。…エリンちゃんがベッドから転げ落ちていた。


 どうしよう。抱き抱えてベッドに寝かせてあげることも出来なくはないと思うけど、起こしてしまうだろうし。


 どうしようもないのでそのままにしておくことにする。

 グラスに水を注ぎ、ソファーで飲んでいるとソフィちゃんが起きてきた。


「エリンさんはもう起きてるんですか?」


 私は首を横に振った。


「床よ」


「床?」


 暫しの沈黙。

 ソフィちゃんはきょとんしつつも、目線を下にやった。そして、ふっと小さな笑みをこぼす。


「アーメナ様がソファーで寝てたのってエリンさんが原因ですか?」


 何も言わず頷く私に、ソフィちゃんはふふっと笑っていた。




 部屋に明るい日差しが差し込んできた頃、エリンちゃんは目を覚ました。


 「どうして起こしてくれないんですか」とご立腹だ。

 背中の痛みを訴えたので、二人で背中をさすった。




 バスに乗り込むといよいよこの宿泊学習も終わりなのだ、と感じた。後は途中のレストランでお昼を食べるくらいで、バスで学校まで帰るだけだ。


 ホテルがぐんぐん遠ざかっていく。

 この三日間で私は少しは二人と仲良くなれただろうか。もっと色んな話ができた気もする。


「お昼ご飯楽しみですね」


「有名なお店みたいなので、美味しいと思いますよ」


 楽しそうに話す二人に目をやる。学校だけじゃ見られない一面を見れたことは確かだ。


 バードウォッチングのとき、エリンちゃんが輪から離れたところにいた私を、引っ張っていってくれたことが嬉しかった。そして、あそこまで寝相が悪いとは思わなかった。ソフィちゃんはルーム長に負けず劣らず面倒見がよくて、助けられてばかりだった。精神年齢なら私の方が高いはずなのに。


「もう終わっちゃうのね」


「あっという間でしたね」

 

「あと一泊くらいしたかったです」


「私もよ」


「私もです」


 しんみりとした空気が流れたのもつかの間。


「それにしても、ぜんぜんサビス様の姿を見られなかったです。やっぱり違うクラスだとダメですね」


 エリンちゃんの言葉で、すっかりいつも通りの雰囲気が戻ってくる。


「クラスごとに見学の時間がずれてたりしましたからね」


 そのおかげでサビスとはすれ違うことすらなかった。見学の時間もそうだけど、クラスが離れているおかげで、泊まった部屋の階が違ったのだ。

 

「再来年が勝負ね」


 エリンちゃんが意気込む。


「なんたって修学旅行がありますから」


 そう、再来年が勝負だ。もっとも物語が始まるのは中等部に上がってからなのだけど。中等部でのクラスは…漫画通りになるとするなら、期待しない方がいいだろう。

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