表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/37

10

 家庭教師を取ることになった。

 えー、まだ早くないか。前世では中学生くらいから、塾に通い出した記憶があるけどさぁ…。私は、まだ黄色い帽子の一年生ですよ。ただでさえ習い事で忙しいのに。色々言いたいことはあったけど事後報告だったのでどうしようもない。

 ノーラド家の名に恥じない成績を、というお母様からの無言の圧を感じます。





 後日派遣された家庭教師のレイチェル先生は、ベリーショートの気さくな方でした。家庭教師なんて初めてで、身構えていたんだけど、もうすっかり慣れた。


「おっ。正解。アーメナちゃん凄いよ。私が教えること何もないじゃない」


 えへへ。思わず、顔がにやける。このくらい余裕ですよ。




「アーメナちゃん、学校はどうかな」


 レイチェル先生はラナンキュラス学園出身だそうで、当時の面白い話をよくしてくれる。


「毎日楽しく過ごせてます」


「そっか、よかった。あっ。好きな人とか出来た?」


 ドキッ。どうしよう打ち明けてしまおうか…。こんな話ができるのはレイチェル先生くらいなんだよね。


「実は、気になっている人が…」


 そう言うとレイチェル先生はえっ、と驚きの声を上げて、同じクラスの人かと聞いてきた。

 いえ、クラスどころか、校舎が違います。


「中等部の先輩なんです」


「中等部…アーメナちゃん、年上が好みなのね」


 好みというか、精神年齢的に同い年の子達は正直、ガキ…じゃなかった、お子様にしか見えないんだよ。



 それから、あの先輩にはあれから一度も会えていない。図書館に毎日のように通っているんだけど。やっぱり叶わぬ恋なのかな。早めに諦めた方が身のためかもしれないなぁ。そんなようなことを話していると、


「私、友達が出来なくて」


 ついつい、こんなことまで話してしまった。


「話しかけてくれる子はいるんですけど、何というか…」


「そうなのね」


 レイチェル先生は私の言わんとすることを察してくれたらしい。


「友達かぁ。例えば私だと趣味が同じで、年齢関係なく友達になれたことがあるかな」



 どんな悩みにも真摯に向き合ってくれるレイチェル先生は、まるでカウンセラーのようです。






 そうか。趣味か。ところで私の趣味とはなんだろう。ピアノやバイオリンは習い事としてやっているだけだし。…うーん。そういえば最近本を結構読んでいる。図書館通いは不純な動機からだけど、実際お気に入りのシリーズも見つかったし。よし、これで行こう。



 作戦はこうだ。

 

 教室で本を読んでいる子を探す。タイトルを盗み見て同じ本を借りて読む。その子に話しかけてさり気なく、最近読んだ本の話を。なんと同じ本を読んでいたことが判明! 話は大盛り上がり。そのあとはおすすめの本を紹介し合ったり、仲良く図書館に行ったり…。

 ああ、なんて素敵なの。






 善は急げだ。教室を見渡してみる。

 本を読んでいる子は…。うん、ちょこちょこいるね。やっぱり女の子がいいかな。



 ああっ!


 あの女の子、私のお気に入りのシリーズを読んでいる。




 あの子となら、あの、人任せで一向に事件を解決しない探偵の魅力を語り合えるに違いない。

 そして、家柄をも超越した友情を築けるはず。


 どうしよう。どうしよう。今、話しかけたら迷惑かな。


 悩んでいるうちに、チャイムが鳴った。










 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ