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第3話 お天気占い魔術

 「思考は言葉によって作られる」

 異世界で学んだことの一つである。

 言葉にして表現することで、人は様々なことを認識する。

 世界を知りたければ言葉を学べばよい。

 世界を広げたければ新しい言葉を創造すればよい。


 異世界のことを思い出すときに一番に脳裏に浮かぶのは、シュンカシュートーと言われる美しい異世界の季節だ。

 そもそもこの世界は季節という概念自体が薄い。

 暑さに体中が溶けてしまいそうで、水属性の魔術師たちが大活躍する『暑季しょき』。

 世界の多くが雪に埋もれ凍りつき、火属性の魔術師たちが東奔西走する『凍季とうき』。

 この世界にあるのはその二つの季節だけだ。しかもほとんどの人は月の名を言うだけで、『暑季』『凍季』という言葉すら死滅しかけている。

 けれど異世界のニホンには一年を四つに分けてそれぞれの美しさを讃える「四季」という言葉があった。

 ハルと呼ばれる季節は雪がとけて草木が芽吹き、その多くが花を咲かせる。ここの言葉で言うなら『花季かき』とでもしようか。

 アキと呼ばれる季節は暑さが和らぎ、木々は実を結び穀物も穂を垂れる。収穫の時であり『採季さいき』と言えよう。


 今ここに、『花季』『採季』というこの世界にない言葉を二つ私が創造した。

 思い浮かべると良い。ただただ暑い暑季からすべてが凍る凍季へと移り変わる境目に過ぎなかった季節が、『採季』という名前を与えられたことによってどんなにか嬉しく踊り出したい季節になることだろう。

 凍り付いた雪がとけて暑くなるのを待つだけだった季節が、『花季』という言葉を与えられたことでどんなにか美しく脳裏に浮かぶことだろう。

 この言葉を知ったことであなたの世界は確実に広くなった。しかもこの新しい言葉にはクレジットが設定されていないので、好きなだけご自由に使っていただきたい。

 プライスレス!


 さてこの四季という言葉から私が思いついた魔術式について語ろう。

 四季とは、天気や気候を表す言葉である。

 ところで何度も書いているが、異世界には魔術というものがない。であれば、さぞかし不自由な生活をしていたのだろう。諸君にはそう思われるかもしれない。だが異世界人たちはその不自由さを補うように様々な技術を生み出した。

「カガク」という技を使い四季をあらゆる角度から測定し、未来の天気や気温、嵐やそれに伴う被害などを細かく占うのだ。

 もちろんこの世界においてもそういうものを占う魔術は存在している。だが例えば数日後に嵐が来るかどうかを占おうとすれば、多大な費用と大掛かりな魔術式の構築が必要になる。しかもその結果は十割当たるというわけではない。

 そんなことではとてもとても、気楽に未来の天気を知ることなどできるわけがないだろう。

 そこで私が考えたのは、簡易的に三日後までの天気を占う魔術式だ。公開されているごく単純な初級の占いの魔術式に気温、気圧、この世界の基本的な四季の情報などを組み合わせることによって、従来の占いよりもずっと楽に占うことができる。

 もちろん占いというからには、その結果は絶対的に当たるわけではない。それは従来のお天気を占う魔術を見ればわかっていただけることと思う。

 だがたとえその占いの当たる確率がせいぜい七割程度だったとしても、日々の暮らしが非常に予定の立てやすいものになること請け合いだ。そして私が数十回試したところ、この天気占い魔術は九割近く当たっている。


 当たるも八卦、当たらぬも八卦。一度試してみてはいかがだろうか。このページにある魔術式に魔力を流すことによって簡単に起動できる。

 なお、この魔術式一回使用あたりのクレジットは100Gである。

 お天気占い魔術を使って、実り多き『採季』の訪れを人に先んじて感じてほしいと思っている。

 なお近隣の地域の気温、気圧等の情報を集めるためにかなり多くの魔力を必要とするので、魔力に余裕のある時に使うのがよい。



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