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Let's Cooking!
今日使う食材は、カレイ。
まず、適当に三枚に降ろします。骨は後で使うので横に置いといて、切り身に塩をふりかけて10分ほど放置。こうすると、無駄な水分が外に出るんだよね。出た水は布巾で拭って、再度塩をふりかける。こうすることで、水が抜けた場所に塩が、というか味が染み込む。香り付けのハーブも一緒です♪
「なんで、僕が昼食を作ってるんだろうか?」
「そりゃ〜、若様が一番の役立たずだからですよ?」
ぐふっ!
ネリーの容赦ない一言が、僕の精神を抉る。
「……分かりきったことだけど、もうちょっと手加減してくれないかな?」
「自覚してることですよね? なら、いいじゃないですか〜。それに、さすがに若様に荷物運びとかさせられませんよ〜。立場的に」
水瓶から鍋に水を移す横で、ネリーは炭に火を入れている。
炭に火を入れるだけなら僕も出来るけど、ネリーがするのはそれだけではない。横長のコンロの片側には多くの炭を積み、反対側の炭は少なくする。こうするとで、強火の場所と弱火の場所を作ることが出来るのだ。
「……分かってるよ。ただ男の子として情けなくなっただけ。ただの愚痴だから聞き流して」
水を入れた鍋を弱火の位置に設置し、避けていた頭と骨を入れる。
何のためにって? そんなの、ガラから出汁を取るためだ。臭み抜きも兼ねて、香味野菜も一緒にドボンする。後は沸騰しないように気をつけながら、弱火でコトコトするだけ。
「そっちの骨も食べるんですか?」
「骨は揚げないと食べれないから、今回はなし。ただの夕飯用の下拵え」
ブイヤベースにでもすればいいかな?
ちょっとくらい傷んだ野菜だって消費できるし。
「なんだか、生臭くなりそうですね〜」
「だから香味野菜と一緒に煮込むんだよ。それに、牛とか羊の骨よりはマシだと思うよ」
いやマジで。
フォン・ド・ヴォーとか作る時はね、気が遠くなるくらい、アク抜きとか色々、面倒なんだよ。
「う〜ん、慣れないからよく分かりませんね。――付け合せの下拵えが終わったので、ここに置いときますね。他に手伝うことはありますか?」
「後は焼くだけだから大丈夫。男手が必要なら呼んでね」
「あはは、ゴーレムの手が足りなくなったら、呼びますね〜」
呼ばれないな、こりゃ。
ここはおとなしく、美味しい美味しいカレイのムニエルを作るとするか。
「やっぱり、定番のバターソースにするか」
皆、海の魚に慣れてないからね。
ソースくらいは定番にしておかないと、苦手意識を持たれるかもしれない。
そうなったら、
「……海が近いのに魚を食べられないとか、地獄だよね」
僕は肉よりは魚が好きなんだ。
ヴィクトリア姉上は別に無視してもいいけど、幼馴染の3人が嫌いになったら、食卓に魚が並ばなくなる。
それは困るんだ。すっごく。
「昼食はあくまでも前座。本命は――」
夕食用の、フォン・ド・ポワソンだ。
あえてフォン・ド・ポワソンにしています。