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本日、2話目の投稿~

 武芸科目の中間考査当日、僕は上機嫌だった。


「その気持ち悪い顔をやめてくれセド様。気が萎える」


「ヒドくない!? いくらなんでも気持ち悪い顔ってヒドくないかなっ!?」


 武官科の生徒にとって重要な試験だから、モチベーションが下がる要因を取り除きたいってのは分かるけど、言葉を考えてよ。

 ほっぺたを膨らませて抗議をするよ。


「なんか妙にご機嫌だけど、アレとけり付けるのそんなに嬉しいのか?」


「鬱陶しいにもほどがあったからね。伯爵に自分でけり付ける、なんて言うんじゃなかったかなって、ちょっと後悔したくらいだもん。――でも、それも今日まで」


 正直、勝っても負けてもどっちでもいい。

 負けることで鬱陶しくなくなるっていうんなら、喜んで負けるくらいだよ。


「ブラヴェ伯爵とは話を付けてるんだろう? あたい等に指示出せば、都合の良い舎弟が1人確保できるぞ」


「舎弟なんていらないし、別の面倒ごとが増えるからイヤ。彼が僕に本気でケンカを売ってきたら別だけど、アレは稚拙というか幼稚すぎる。それに、わざと煽った部分があるからね。行き過ぎたマッチポンプは嫌いなんだ」


「自分で煽って火をつけて鬱陶しいから潰すって、充分に行き過ぎだからな」


 そうかな?

 僕がやったことって、揚げ足取って大げさに騒いだだけだよ?

 伯爵を合法的に呼びつけたのはマッチポンプだったけど、わざわざ僕の視界に入って暴言をまき散らすのはアレの性格がねじ曲がってるからだ。

 中間考査でぶつかるのが分かってるんだから、僕を叩きのめす算段を付ければいいのに。


「行き過ぎって言うのは、武芸科目の中間考査がお祭り騒ぎになってることだと思うよ」


 参加人数多いから観客席があるスタジアムで試験をするのはいいけど、これ授業の一環だよ。

 観客席が埋まるくらい生徒が集まって、誰が勝つかを賭けてるってどゆこと?


「秋の武芸大会の予行演習を兼ねてるんだよ。――ちなみに、セド様のオッズは3.2倍で、アレは1.3倍だ。セド様は人気がねえな」


「暴言をまき散らすような輩なのに、アレは人気があるね。やっぱり剣もろくに振れないっていう噂がある僕と、武官科の優等生とじゃ仕方ないのかな?」


「ちなみにあたいはセド様に賭けたからな。勝ったら儲けを使って豪勢にパーティーを開こうじゃないか。セド様の好きな海産物を買い込んで、バーベキューだ」


「パーティーはいいけど、バーベキューはヤダ。アレは火加減が難しいから、せっかくの海産物が不味くなる。どうしてもバーベキューがいいなら、網じゃなくて鉄板焼きにしよう。ほぼ直火の網よりもマシになる」


「あー……、どうしてもバーベキューがいいわけじゃないから、セド様の家で美味しく料理すればいいんじゃないか? 立食形式ならそれっぽいし」


「うちでやっていいの? なら、僕が腕によりをかけて美味しい料理を作ろうじゃないか」


 最近は、伯爵の孫関連で忙しかったから、料理を作れてないんだよね。

 祝勝会という名目なら、タウンハウスを会場として使うことが出来る。そしてパーティーなら、普段作れない量と種類を作れるのだ。

 これはぜひとも勝たなくては。


「セド様が勝ったら開くってのに、それでいいのか? 楽しいならあたいは構わないけど」


「料理は僕の趣味だからね。お茶会で神経をすり減らすより、よっぽど楽しいよ」


「茶狂いのクセにすり減らすのか?」


「僕のは茶狂いじゃなくて食道楽。それとお茶会は政治。趣味の料理と違ってお仕事なの」


 ブラヴェ伯爵を招いたお茶会だって、完成度を上げるために苦労したんだから。

 でも頑張ったおかげで、伯爵家の不介入を確約させた。あと、ティーセットが思った以上の高値で売れたから、収支は大幅にプラス。頭金も受け取ったしで、ウハウハだよ。


「仕事じゃ仕方ねえか。あたいもセド様の隣にいる時は神経すり減らしてるし」


「それは、僕と一緒にいるのが仕事だってことかな?」


「ないとは言わないけど、1番の理由じゃないな。セド様の代わりに話を聞いて、覚えとかなきゃいけねえことが多いから、神経すり減らすんだよ」


 僕の代わりに話を聞く?

 覚えとかなきゃいけないことが多い?


「おいおいカーチェ、それじゃ僕の記憶力に問題があるって言ってるようなもんだよ」


「問題があるのは記憶力じゃなくて、人の話を聞かないって部分だよ」


 あれ、おかしい。

 冗談半分のニュアンスじゃなくて、100%本気で言ってるぞ。


「……もしかして僕、カーチェとの約束をすっぽかしたり、した?」


「いいや。ここんところ、セド様と約束を交わしてねえぞ」


「じゃあ……僕は一体、何の話を聞いてなかったのでしょうか?」


「中間考査の相手が追加されたって話だよ。証拠はこれな」


 カーチェが差し出したのは、対戦表とスケジュールが一緒になった用紙。

 目を皿のようにして自分の名前を探すと、確かに1人、戦う相手が追加されていた。


「……対戦者の名前、フレデリカってなってるんだけど、彼女?」


「短剣術A班のフレデリカは、1人しかいないな。真実の愛を叫ばれるあのフレデリカだ」


 めまいを覚える。

 なぜよりによって、あのフレデリカさんなのだ。


「対戦予定の相手がな、王子殿下や伯爵家の御曹司なんかからの圧力に負けて辞退したんだ。それで、伯爵家の御曹司にケンカを売る胆力があるセド様に話がきて、話をロクに聞いてなかったセド様が生返事で了承したんだよ。ちなみに、茶器巡りした翌日の話しな」


「……お茶会の内容考えてて、まったく聞いてなかった」


 僕を選んだ教師のセンスには脱帽だけど、生返事してるのが分からなかったのか?

 いや、生返事なのを良いことに押し通したな。僕でもそうするし。


「――てなわけで、そろそろ出番だ。フレデリカ戦もセド様に賭けてるから、勝って来いよ。権力を使っても許す」


「しないよそんなこと。……ちなみに、オッズは?」


「セド様4.7倍、フレデリカ1.07倍」


 ……僕、そんなに弱そうに見えるのかな?

 やっぱり、この体型が悪いのかな?

 体質だから痩せないんだけど、またダイエットに挑戦するか、真剣に考えてもいいかもしれない。


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