56【辺境伯ラムーシャ】
この目的の無い異世界を旅する物語
【葉月博26歳】人種族
現世で死に異世界へと転生したごく普通の一般人である
カンナの婚約者で最近、ネーアとも婚約者となり領地ドラザーヌの領主と男爵を魔人王より任命された
【ターニャ17歳】女神族
天界で失敗続きだったので、神により天界から異世界に落とされた四級限定の駄目神
博を一人前にする事が天界へと戻れる唯一の方法である
【カンナ16歳】猫人族
元孤児院の心優しい女の子
今は博の第一夫人候補として常に側にいる
第二夫人候補のネーアとはある日を境に意気投合して姉妹のように仲良くなった
【ネーア13歳】竜人族
魔人領統括の魔王の四番目の娘、上には姉二人と兄が一人いる
成人の16歳を迎えると博と結婚出来るのでそれまでは側にいて悪い虫が付かないように牽制している
【ドーラ19歳】バンパイア族
博とネーアの使用人にして元警備兵隊長
代々魔王の城を警備する家系の子に生まれネーアとは年齢が近かった為、幼なじみとして共に育った、ドMの変態元騎士
【紅葉】犬人族
先代領主からの使用人でありメイドを統括するメイド長である
炊事洗濯から暗殺まで何でもござれのスーパーメイド
【リズベリー】妖精族
山賊に捕らわれていたので故郷まで送り届ける事となった
妖精王に知恵を借り人間の姿になり以後、博達と共に暮らしている
因みに空を数分なら飛行する事も可能である
博は現在ラムーシャとの会談を行っている
此方も魔人領とは言え一応領主で有るがゆえに無碍には出来なかったのだろう
突如やってきたにも関わらずラムーシャはいやな顔を一つせずに対応してくれた
本当にコイツが話に聞くラムーシャなのかと思わせる程に物腰の低い貴族である
「申し訳ないラムーシャさん、アポイントも無く押し掛けてしまって」
「いえいえ気にしないで下さい、それで本日は一体どのようなご用件でしょうか?」
「今日はですねワンダーラース里の借金返済についてお話させて頂きたくお伺いさせて頂きました」
「...返済ですか?」
「はい」
その返済と言う言葉を聞いた時にラムーシャの体がピクンと反応した事に俺は気付いた
彼は平常を装ってはいるものの何かやましい事があると何か裏があると
しかし俺はお構いなく目の前のテーブルに白金貨二枚を置いた
「利息分を含めた借金の白金貨二枚です
どうぞお確かめ下さい」
ラムーシャは慌てた様子も見せずに白金貨を手に取り確認した
「確認しました、では此方が借用書の原本となります」
借用書には、先代の長と複数人の幹部達の実印が押されていた
「今まで返済を待って頂いてありがとうございます」
博が素直に頭を下げた為か面を食らったラムーシャ
だか本題は土地の権利書であるが故に、こんな頭ぐらいいくらでも下げてやる
「それでですね、ワンダーラースの長から利子として預かっている土地の権利書の返済についてなのですが返済頂けないでしょうか?」
「それは不可能です」
「えっ?どういう事ですか?利息分を含め借金は返済しましたよね?
ですから借用書を返して頂かないと困るのですが?」
「ですから不可能です、あの権利書は既に私の物ですから、そう借用書にも書いてあると思いますが?」
博は借用書を読み返すと確かに契約内容に書かれていた
月々の利息分を支払えない場合は利息分と同等の金品等で支払う事が出来る
但しその場合、利息分として支払われた金品等の返還は行われずに貸し手側の財産となり返済の義務は無い
確かにバッチリ書いてある為どうする事も出来ない
契約書がある以上、彼から無理矢理手に入れればこちら側が犯罪者になってしまう
「ではラムーシャさん、その権利書をお譲り頂けないでしょうか?」
「?」
「タダとは言いません、ここに白金貨三枚ありますので、この金額でお譲り頂けないでしょうか?」
悪い話では無いはずだ、そもそもラムーシャは土地の権利書を手に入れたのは、その村の女共を手中に収める為の手段であり土地には何の興味も無いはず
さぁーこの話に乗って来いラムーシャ
しかしラムーシャは考え込む様子も無く直ぐに答えを出した
「それは無理な相談です」
「!?な、なぜですか?もしかして金額が不服ですか?
そちらの希望の額までは無理かもしれませんが努力はさせて頂きますので、どうかお考え下さい」
「いえ違うのですよ、もう権利書は私の手元には無いのです」
ラムーシャの話によると集めた権利書などは領主への献上品として既に贈ったとの事で、そしてその権利書は後日行われる武道会の優勝者に贈られるということが判明した
「その大会には誰でも出場出来るのですか?」
「ええっ人種なら問題無く出場出来ますよ」
やはりそこは亜人差別の多い人種領ならではだな亜人は参加する事が出来ない
取り敢えず借金返済を済ませた博達は一度エルタートの森に戻る事にした
「と言う事がありました」
各々に頭を抱える長達のなかエルフ族の族長だけが平然としており手を叩いた
パンパン!
するとどこからともなく全身黒ずくめの忍者が現れた
「エリンコートよ、そなたの意見が聞きたい」
「ハッ!この者達の話は本当でありあの貴族が書物を献上しそれが大会の優勝者に贈られる事を確認しております」
「確かか?」
「ハッ!」
「博殿、そなたは信用に足る者と信じて一つお願いがある
その大会に出場して是非とも書物を回収して下さらないだろうか?
無論向こうでの滞在費用などは此方が出す故どうか頼めないだろうか?」
「勿論大会には出場する予定です、ですがそれはあくまで紅葉の故郷を救う為であってそれ以外でもないんですが」
「そこを何とかお願いします」
エルフ族の長共々が額を地面にこすりつけ願う
「そうですね頼み事を一つ聞いて下さるのでしたら良いですよ」
「!?頼み事ですか?」
「ええっ、俺の頼み事は一つ
武神の祠への立ち入りを許可する、たったこれだけです」
「武神の祠への立ち入り!?」
長達が一斉に声を荒げた
「それは認められん」
「それだけはダメだ」
「人族がおいそれと立ち入ってよい場所ではない」
などなど、博をいや人族を批判する者も現れるしまつだ
「それはおかしいですね、そもそも武神の祠は人族の三英雄の独りを奉る為に建てたのでしょ?
なら同じ人族の俺が入った所で問題無いのでは?」
その言葉を聞いてもなお批判は収まらない
本当にこの長達は助けを求めているのだろうか?
しかしそんな中エルフ族の長だけが博の話に賛同した
「わかりました博殿、その条件を呑みましょう
ただし奪われた全ての権利書が却って来た場合のみですが、宜しいですな?」
「ああっそれで構わない、もともと他の権利書には興味なんか無いからな」
「わかりました、では大会期間中に私の側近で博殿の見張り役としてエリンコートをお付けします
エリンコートよ、くれぐれも博殿に失礼の無いようにな」
「ハッ!」
こうして話はまとまり博達は武道大会に出場するのであった
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