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ガリバーの孫3 〜魔道士の洞窟〜

掲載日:2019/09/22

〜前作までのあらすじ〜

ガリバー旅行記で知られるガリバーの孫、カイン。

カインは、小人の国へ行き。

持ち帰った宝と船を交換しました。

そして新たな仲間、小人のチョップと共に巨人の国へ向います。

巨人の国で出会った魔女ウィザリン。

3人は、力を合わせ巨人の国から脱出。

無事、ウィザリンの故郷、ウエスト王国へ戻る事が出来たのですが、ウィザリンは犯罪者。

流刑地に送られる事を恐れたウィザリンは、ウィンフィと名前を変え、カイン達に合流するのでした……。

巨人の国から戻ったカインは、故郷の村に帰っていました。

次の冒険へ出かけようにも船が無いのです。

船の回収を約束してくれたジャックから、1ヶ月後には届けると連絡がありました。

島への立ち入り許可が下りるのに、時間がかかるそうです。

冒険続きだったカインには、良い骨休め。

毎日、のんびりとした生活を送っていました。


今は、午後のティータイム。

紅茶を飲みながら、チョップと次の冒険について話し合っています。

チョップは、小人族の若者。

手のひらほどの大きさで、緑色の服に青色のズボン。

小さなクリスタルのペンダントを提げた、カインの相棒。

食いしん坊のチョップは、身体の半分もある大きなクッキーに噛り付いています。


「軍資金が無くなってきたから、お宝が手に入る冒険が良いんだけどな…。」


カインは、『ガリバー航海日誌』と記された手帳をパラパラとめくりながら呟きます。


「ほひほのへんへふひ、はははのひま…。

ゲホゲホ…。」


クッキーを頬張ったまま、喋ろうとしたチップが咳き込みます。

カインは、笑顔を見せると、ティースプーンで、紅茶をすくいチョップに飲ませました。


「ゴクゴク…。

ふうー…。

小人の伝説に、宝の島の話があるんだ!

そこへ行こうよ!!」


紅茶でクッキーを流し込んだチョップが、ニコニコ顔で声を上げます。


(小人の宝…、船一杯でも片手で持てるからな。

いや、当座の資金にはなるか…。)


カインは、チョップの提案に興味を示しつつ、他に何か無いか手帳をめくります。

その時、


バターン!


と、勢いよく扉が開きました。

そこに真っ黒なゴシック・ロリータファッションに包まれた美少女が…。


「カイン!

一大事なの!!

大至急、魔道士ビザィオに会わないといけないのよ!!」


肩まで伸びた金髪が美しい細身の美少女が、部屋へ入って来るなり声を上げます。

美少女の名前は、ウィンフィ。

百年以上生きている、元ウエスト王国一の魔法使い。

罪人だった彼女は、“ウィザリン”から“ウィンフィ”に名前を変えました。

また若返り魔法の呪いで、この先、永遠に13歳のまま、年を取ることなく生きなくてはなりません。


「お帰りウィンフィ。

落ち着いて…。

ウエスト王国で、何かあったの?」


カインは、ティーカップに紅茶を注ぐとウィンフィに勧めます。

ウィンフィは、紅茶を口にすると椅子に腰掛け、理由を話し始めました。


この数日、ウエスト王国へ行っていたウィンフィは、ジャックの家にお世話になっていました。

ジャックは、ウィザリン(ウィンフィ)に恩を感じており、孫娘のふりをしているウィンフィに何かと便宜を図ってくれるのです。

そのジャックから、ウィンフィが成人するまで、生活費を援助したいとの申し出がありました。

ウィンフィは、大喜びで申し出を受けましたが、よくよく考えると永遠の13歳の呪い…。

2~3年は、不自然に思われないかもしれませんが、その内、成長しないウィンフィを不信に思うでしょう。

困ったウィンフィは、魔法の開発者…、ビザィオの事を思い出します。

もともとこの魔法は、14歳になると死んでしまう呪いがかけられた娘を救う為に作られた魔法。

ウィンフィも開発に手を貸しています。

共に研究して行く中で、解決しない問題が出てきました。

永遠の13歳もその一つですが、一番の問題点は、自分自身にしか、かけられないと言う事。

肝心の娘に使う事が出来なかったのです。

さらに研究を続けていた2人でしたが、王都からウィンフィに召集がかけられました。

ビザィオは、あとは一人で大丈夫だと言いました。

その言葉を信じたウィンフィは、王都へ向い魔法の豆の研究に入りました。

あれから数十年、ビザィオであれば全ての問題を解決していると思ったのです。


「ちょっと待てよ。

そんなに昔の話なら、ビザィオもかなりの高齢だろ?

もう亡くなっているかもしれないじゃないか…?」


カインの問いにウィンフィは、不敵に笑います。


「ふっふっふ…。

ウエスト王国で、いろいろと調べた…。

すると、奴の故郷ランブト山に『魔道士ビザィオの洞窟』と言うものがあるそうじゃ。」


「ウィンフィ…、ウィザリンの話し方に戻ってるぞ。」


カインが突っ込みを入れます。

ウィンフィは、舌打ちして悔しい顔を見せます。


「ちっ!

せっかく見た目に合った話し方になってきたと言うのに…。

まあ、お前達の前では良しとしよう!」


ウィンフィは、開き直りました。

カインも、それ以上突っ込まない事にしました。


「で、その洞窟にビザィオが居るってことなのか?」


「居るかどうかは分からんが、何らかの手がかりは掴める筈じゃ。」


カインは腕組みすると、考えます。


「ランブト山だと、馬車で片道5日と言ったところか…。

正直、金にならない冒険は遠慮したいんだけどな…。」


カインが呟きます。

ウィンフィがニンマリと笑いました。


「『魔道士ビザィオの洞窟』を攻略した者には、ビザィオの宝が与えられるそうじゃ。

今まで数百人を超える挑戦者がいたそうじゃが、誰も宝を手にしとらん。

どうだ、わしらで攻略して、宝を山分けと言うのは…。

ついでにビザィオの情報を得る。

まさに一石二鳥と言うわけじゃ。」


カインは、ウィンフィの魔法の力を借りれば、攻略が可能かもと思いました。


「よし!

当分予定も無いことだし、洞窟へ行ってみるか!!

チョップもそれで良いな?」


と、チョップを見ると自分の意見が無視された事に腹を立て、そっぽを向いていました。

ウィンフィが、チョップの機嫌を取ります。


「そうだ、チョップ!

お前にプレゼントを持ってきたぞ!!」


そう言ってウィンフィは、カバンからオウムの剥製を取り出しました。

プレゼントと聞いて一瞬喜んだチョップでしたが、直ぐにガッカリ顔に変わります。


「そんな物、要らないよ!」


「ふっふっふっ…。」


ウィンフィは、笑いながら剥製の背中を開きます。

と、丁度チョップが入れそうな空間が、そこにありました。


「まあ、試しに入ってみなさい…。」


ウィンフィの言葉にチョップは興味深々…、剥製の中に入ります。


「うわぁー! 外が見える!!」


チョップが、驚きの声を上げました。

カインも驚きます。

チョップの声に合わせて、オウムの口が動いたのです。


「チョップ、羽に手を入れて羽ばたいてごらん。」


チョップは、ウィンフィの指示に従います。

すると、オウムの剥製が空へ舞い上がりました。


「うわぁーい! 飛んでる!!

僕、空を飛んでるよ!!」


カインは呆気にとられています。

ウィンフィが、得意げに説明します。


「この剥製は、チョップの為に魔法で作った。

チョップが人前に出ると騒ぎが起きるのは目に見えておる。

かと言って、いつもカインのフードに隠れているのは可哀想に思ってな…。

オウムの姿であれば、人前に出ても問題なかろう。

と、言う訳じゃ…。」


「ウィンフィ! ありがとう!!」


チョップは、すっかり機嫌が直っています。


「よし! では、ビザィオの洞窟へ向うぞ!!

カイン、とっとと出発の準備をせんか!!」


ウィンフィに叱責され、カインは旅支度を始めました。


1時間後、3人を乗せた馬車は、ランブト山へ出発しました。

たづなを取るのはカイン。

カインは、ブツブツと文句を言っています。


「冒険の仲間が増えたのに、俺の仕事は減らない…。

いや、むしろ増えた…。

せめてウィンフィが、まともなメシを作れるようになってくれればな~…。」


ウィンフィとチョップは、馬車の中でカインの愚痴を聞いていました。


「ねえねえ、どうしてウィンフィの作るご飯は美味しくないの?」


ウィンフィの右肩に乗ったオウム姿のチョップが、無神経な質問をします。

ウィンフィは、苦笑いを浮かべます。


「わしは、13歳じゃからな。

カインぐらいの年になれば、美味しい料理が作れるようになるのじゃ。」


「ふ~ん…。」


チョップは、そんなものかと納得しました。

ウィンフィは、カインが愚痴を言えなくなるように魔法を唱えます。


「ザック!」


たづなを握っていたカインは、突然唱えられた身体強化魔法に驚きましたが、何の変化もありません。

首を傾げていると、馬が猛烈なスピードで走り出します。

ウィンフィは、馬に魔法をかけたのです。


「うあぁーーっ…」


カインは、馬を操る事で手一杯です。


「のんびりしとるから愚痴も出てくる。

しばらく忙しくしておれ。」


そんな様子をウィンフィは、楽しげに眺めるのでした。


そんなこんなで数日が過ぎ、一行は無事ランブト山のふもとの村に到着しました。

村の入口に、大きな看板があります。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

私の宝を洞窟に隠した。

宝を欲する勇者よ。

洞窟の謎を解き明かし、私の望みを叶えてみせよ。


魔道士ビザィオ

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


カインは、首を傾げます。


「ウィンフィ…、ビザィオは何がしたいんだ?」


カインの問いにウィンフィは、首を横に振りました。


「見当もつかん…。

しかし、意味無くこんな事をする人間ではない…。」


ウィンフィは、腕組みして看板を睨むのでした…。


一行は、村の宿屋に泊まることにしました。

宿屋でビザィオの情報を得ようと考えたのです。

宿屋の主人は、色々な事を教えてくれました。


今から、38年前…。

ウィンフィが、独房島へ送られた数年後に看板が立てられ洞窟が出来た。

国中から腕自慢の者が集まり攻略を試みたが、誰一人、宝を持ち帰る事は出来なかった。

そんな冒険者達のお蔭で村は潤ったが、近年では攻略不可能な洞窟として広く知られ、挑戦者は居なくなった。


「ビザィオさんのお子さんは、今どうしてるんですか?」


ウィンフィが、よそ行きの言葉遣いで質問しました。

主人は、腕組みすると記憶を探ります。


「ビザィオさんの姿が見えなくなって…、何年か…、ずっと一人で暮らしていた…。

あっ!?

そう言えば、フィリアが居なくなった日に看板が立った。

看板の事を聞きに行ったから間違いないよ!」


主人の言葉にウィンフィは嬉しそうな顔を見せるのでした。


部屋に戻った3人…。

カインは、ウィンフィに尋ねます。


「ビザィオの娘…、フィリアって、呪いをかけられた子だよな。」


「ああ、そうじゃ。

わしが独房島へ送られた年、14歳になる筈じゃった。

それが生きておる。

他人にかけられなかった魔法が、かけられるようになったと言うことじゃ。

さすが、ビザィオ!

これなら、永遠の13歳の呪いも解決しとるかもしれん。」


ウィンフィは、嬉しそうに答えました。


「ところで、フィリアに呪いをかけたのは誰なんだ?」


カインの問いにウィンフィの表情が曇ります。

ウィンフィは、ビザィオの事、フィリアの事、そして、ヘネーレの事を話し始めました。


フィリアが9歳の時、母が亡くなります。

しばらくして、ビザィオのもとにヘネーレと名乗る若く美しい魔法使いが遣って来ました。

ヘネーレは、弟子入りに来たのです。

女手の必要性を感じていたビザィオは、フィリアの面倒を見る事を条件に弟子入りを認めました。


弟子になり、ビザィオの凄さを知るにつれ、ヘネーレはビザィオに好意を抱くようになります。

そんなヘネーレの気持ちを感じ取ったフィリアは、父を取られると思いヘネーレを避けるようになりました。

1年が過ぎ、ヘネーレは、いつまでも懐こうとしないフィリアを疎ましく感じるようになります。


ある日、資料探しを頼まれたヘネーレが、書庫で封印されている魔道書を見つけました。

興味を持ったヘネーレは、魔道書の封印を解きます。


魔道書には、命に関する魔法が記述されていました。

ヘネーレは、その中から“14歳になると死ぬ魔法”に目を止めます。

そして軽い気持ちでヘネーレは、フィリアに魔法をかけました。

フィリアが居なくなれば、ビザィオと2人で暮らせると考えたのです。

フィリアが14歳になる前に懐いてくれれば、魔法を解こうと考えたのです。


しかし、ビザィオのもとで学んで行くうち…、知識が増えるうち…。

とんでもない事をしてしまったと気が付きます。


ヘネーレにとっての救いは、フィリアが10歳だった事…。

4年の猶予があったのです。

ヘネーレは、今まで以上に魔法を勉強しました。

しかし、学べば学ぶほどヘネーレは、絶望感で一杯になります。


フィリアが13歳になりました。

ヘネーレは、ビザィオのもとを離れ、ウィザリンを訪ねます。

そしてウィザリンに、


「ビザィオの娘、フィリアが死の魔法に侵されました。

14歳になると死んでしまう魔法です。

ビザィオが、助けを求めています。

お願いします。

力を貸して下さい。」


と、告げました。

ウィザリンは、二つ返事で協力を了承します。

ヘネーレは、他にも行くところがあると、ウィザリンと分かれました。

その後、行方知れずになります。


1週間後、ビザィオのもとを訪れたウィザリンは驚きました。

ビザィオは、娘が死の魔法に侵されている事を知らなかったのです。

ビザィオとウィザリンは、書庫で問題の魔道書を見つけました。

ヘネーレの手紙が挟まれていて、魔法をかけた経緯が書かれていました。

また、自身の呪いについても書かれています。


――――――――――――――――――――

2年前から皮膚が鱗のように固くなってきました。

今は服で隠れていますが、これ以上進行すると隠しきれません。

多分、人で無い何かに変わる呪いだと思います…。

先生に、こんな姿は見せられません。

もう二度と会えません。

わがままを言って申し訳ありません。

どうか、フィリアちゃんを助けてあげてください。


ヘネーレ

――――――――――――――――――――


ヘネーレは、魔法をかけた代償で、呪いにかかっていたのです。

ヘネーレの事も気になりましたが、今は2人協力して、フィリアの呪いを解く方法を探すことになりました。

世界一の魔法使いと王国一の魔法使い。

2人が一番に考えたのは、時間が足りないと言う事。

手助けしてくれたのは、ヘネーレのメモ。

責任を感じていたヘネーレが、必死に研究した結果です。

そこには、若返りの魔法と年齢を止める魔法について詳しく書かれていました。

ヘネーレは、呪いを解く方法の見当がつかなかったので、時間稼ぎを考えていたのです。


2人は、ヘネーレの研究もあり、若返る事で年齢を止める魔法を半年程で完成しました。

あとは、この魔法を他者に対して使用出来るようにするだけ…。

この時、王都から召集がかかり、ウィザリンはビザィオのもとを離れたのです。


黙って話を聞いていたカインが質問します。


「今、“14歳になると死ぬ魔法”って言ってたよな。

呪いじゃないのか?

…魔法と呪いの違いが、よく分からないんだけど…?」


「一般的には、反動魔法の事を呪いと言っておるんじゃが…。

暗黙の了解として、負のイメージが強い魔法についても呪いと言って良い事になっておる。

そうしないと魔法使いの印象が悪くなるからな。」


カインは、呆れた顔を見せると質問を続けます。


「反動魔法って?」


「簡単に言うと、特殊な魔法を使った事で、使用者本人がかかる魔法のことじゃ。

また、一般的な魔法は、時間の経過や魔力が尽きることで効果は切れるが、反動魔法では効果が消える事は無い。」


カインは、なんとなく分かったようで頷きました。

ウィンフィは、話を続けます。


「特殊な魔法…、人の命にかかわる魔法じゃな。

寿命を縮める、延ばす…。

命に対して何かしようとすると必ず反動が発生する。

例えば、眠りの魔法“スイムト”、これはもともと反動を伴う魔法“スリーミン”を改良したものでな。

年を取らない魔法を使った反動が、永遠の眠りと言う訳じゃが、今では普通の魔法として使っておる。

これは、解呪方法が判明した事で、眠りの部分だけを魔法化することに成功した、まれな例じゃ。

その名残として、“スイムト”で眠っている者は、異性のキスで目覚めると言う訳じゃ。

さて、夜も更けてきた。

話は、この辺にして、そろそろ寝ようか…。」


カインとチョップは頷くと、ベッドに横たわるのでした。


翌朝、3人はビザィオの洞窟へ向いました。

洞窟は、ランブト山の中腹にあり村から2時間ほど。

道は、整備されていてハイキング気分で苦も無く到着します。


「一番乗りーっ!!」


オウム姿のチョップが、洞窟へ飛び込みました。

カインが、チョップに続いて入ろうとするとウィンフィにぶつかりました。

洞窟に入ったら出口だったのです。


(??)


カインは、訳が分かりません…。

ウィンフィが、ニヤリと笑いました。


「ビザィオの仕業じゃな…。

洞窟に、一人しか入れなくしておるのじゃ。

仕方が無い、チョップの帰りを待つとするか…。」


と、洞窟横に並べられたベンチに腰掛けます。

カインもウィンフィの隣に座りました。


「ベンチまで用意してるなんて、まるで観光地だね。」


「挑戦者で溢れていたころの名残じゃろう。

一人しか入れんから、挑戦者が待機場所を作ったのかもしれんな…。」


そんな事を話していると、チョップが戻ってきました。


「チョップ! 中はどうなっていた!

何があった?」


カインの問いにチョップは首を傾げます。


「あれ!?

洞窟に入ったと思ったら出てきちゃった?」


チョップは、記憶を失っていました。


「ビザィオが、洞窟に罠を仕掛けておるのじゃろう。

その罠に引っかかると記憶を奪われ、洞窟の外へ追い出されると言う訳じゃ。

カインとチョップは、そこで待っておれ。

わしが、ビザィオに会ってくる。」


ウィンフィは、ベンチから立ち上がり、意気揚々と洞窟に入りました。

と、目の前にカインとチョップがいました。

洞窟に入ったら出口だったのです。

ウィンフィの顔は、恥ずかしさで真っ赤に染まります。


「チョップと同じ罠に、わしが引っかかったと言うのか…。」


ウィンフィは、呆然と立ちすくみます。

カインは右手を横に振りました。


「いや、違うと思うよ。

入ったと思ったら、直ぐ出てきたからね。」


「なに!?」


ウィンフィは、足元の小石を拾うと軽く上に投げて洞窟に入ります。

投げた小石が、ウィンフィの目の前を落ちて行きました。


「ふむ…、なるほどな…。

ふもとの村に書かれていた“宝を欲する勇者よ”とは、そう言う事か…。」


「どう言うことだい?」


「普通、勇者とは男を指す。

女の場合、女勇者と言うからな。

つまり、男しか入れない洞窟と言う訳じゃ。」


「じゃあ、俺が入ってみるよ。」


カインがベンチから立ち上がります。

入れ替わりにベンチに腰掛けたウィンフィが、カインを制止ました。


「待て!

念の為、身体強化魔法を使っておこう。

2倍強化のザックで、攻略出来ると思うのじゃが…。

ただ、ビザィオの事…。

お前の苦手な頭を使う罠も仕掛けているじゃろう…。」


(勝手に決め付けないで欲しいなー…。)


カインは、内心憤りを感じながら黙って話を聞きます。


「よし、お前の目と耳と口の力を借りる。

それで、わしの指示に従ってもらおう。

これなら攻略出来る筈じゃ!」


(??)


カインは理解出来ませんでした。

そんな様子を見たウィンフィは、鼻で笑います。


「チョップ、わしがカインに魔法をかけたら、頭の上に乗って目と耳の代わりをしてくれ。

緊急事態が発生した時は、わしの頭を突いて知らせるんじゃ。

分かったか?」


チョップは頷きます。


「よし! カインこっちに来て額を合わせろ。」


カインは指示に従いますが、こんな近くでウィンフィを見たことが無かったので、思わず目をつぶってしまいます。

ウィンフィは、カインの頭を掴むと額と額をくっ付けました。


「普通、目をつぶるのは女子の方なんじゃがな…。

ザック! カリック!」


苦笑を浮かべたウィンフィが、連続して魔法を唱えました。

ウィンフィは、カインの頭を離します。

カインは、身体強化で力がみなぎっているのを感じましたが、他はいつもと同じ感覚です。


「ウィンフィ…、洞窟へ入っても良いのか?」


『ああ、良いぞ。』


「うあぁーーっ」


カインの口が勝手にしゃべりました。


「俺の口が、勝手に動いて…。」


『黙れ!!』


カインは、自分が発した自分の声に叱られます。


『さっき、目と耳と口の力を借りると言ったじゃろう…。

洞窟の中では、わしが指示を出す。

もし喋りたい時は、目の前に手を上げろ。

で、話し終わったら手を下ろせ。

分かったか?』


カインは右手を顔の前に上げると、


「分かった。」


と言いました。


『よし! では、洞窟へ突入じゃ!!

と、その前にチョップ!

早く、わしの頭の上に乗らんか!!』


カインの様子に驚いていたチョップは、慌ててバサバサと羽ばたくと、ウィンフィの頭の上に降り立ちます。

カインは洞窟に入りました。


洞窟に入った瞬間、壁全体がぼんやりと光り始めます。

進んで行くと、100m程先に扉が見えました。

扉には1m程の大きな砂時計が付いています。

カインは一瞬立ち止まり、慎重に歩を進めます。


ガコン!


砂時計がクルリと反転しました。

同時に床が、入口の方へ動き始めます。


『カイン! 走れ!!』


ウィンフィが指示を飛ばします。

カインは駆け出しました。

ザックの効果もあり、さほど苦も無く扉に辿り着けました。


『砂時計を元に戻すんじゃ!』


ウィンフィの指示に従い砂時計を反転させると、床が停止しました。


ゴゴゴゴゴ…。


扉が音をたてて開きます。


(2倍の脚力無しでも、ギリ行けたかな…?)


カインは、先へ進みます。


扉を抜けた10m程先に、今と同じ砂時計が付いている扉が見えました。


『砂時計が反転すると仕掛けが動く仕組みじゃ。

動いたら直ぐに行動じゃぞ。』


ウィンフィの指示に、カインは頷きます。


ガコン!


砂時計がクルリと反転しました。

同時に、格子状の檻が扉の手前に落ちてきます。


『檻を持ち上げて、砂時計を元に戻すんじゃ。』


罠を見たウィンフィが、即座に指示を出しました。

カインは、檻に駆け寄ると力一杯持ち上げます。


(2倍の力で、この重さって…。

100kg超えてるって…。)


カインは、苦労して檻を持ち上げると砂時計を反転させました。

扉が音をたてて開きます。


(身体強化が無かったら、ヤバかったな…。)


カインは、一息つくと先へ進みます。


扉の先は、6畳程の部屋で、中央にテーブル、その上に宝石箱が置いてあります。

向いの壁には、砂時計が付いている扉…。


ガコン!


カインが、部屋に入ると同時に砂時計がクルリと反転しました。

近付いて、砂時計を元に戻そうとしましたが、ビクとも動きません。


『脚力、腕力…。

ここは多分、頭を使う罠じゃろう。

時間制限で、秘密を解けと言う訳じゃな…。』


ウィンフィが呟きました。

カインはテーブルの上の宝石箱を開きます。

と、蓋の裏に文字が書いてありました。


――――――――――――――――――――

柔軟で固い意志を併せ持つ者は、更なる宝を得る事が出来るだろう。

――――――――――――――――――――


(??)


カインには、意味が分かりません。

宝石箱の中には6つの宝石が…。

トパーズ、琥珀、アメジスト、サンゴ、ダイヤモンド、ルビー。


ウィンフィが考えているのでしょう。

沈黙の時間が流れます…。

と、閃いたカインが、右手を上げました。


「固い意志って、ダイヤモンドの事じゃないか!

これは宝石の硬度の事で、一番固い石…、ダイヤモンドを持って先に進めば良いんじゃないのか!!」


カインが右手を下ろすと…。


『50点…。』


と、残念そうにウィンフィは、言いました。

ウィンフィは、話を続けます。


『わしが今悩んでいるのは、サンゴと琥珀…。

どちらが柔らかいか?

思い出せんのじゃ…。』


カインが、右手を上げ言いました。


「琥珀だよ。」


少しの沈黙…。


『柔軟が琥珀。

固い意志がダイヤモンド。

併せ持つだから片手に持って先へ進むのじゃ!』


ウィンフィが、何事も無かったかの様にカインに指示しました。

カインは苦笑を浮かべると、左手に琥珀とダイヤモンドを持ちます。

そして、扉の砂時計に触れると…。


ガコン!


砂時計が反転し、扉が開きました。

カインは、部屋を出ます。


扉の先は、先程の部屋と同じ、中央にテーブル、その上に宝石箱…。

と、高さが異なる3個のワイングラスが置いてあります。

向いの壁には、砂時計が付いている扉…。


ガコン!


カインが、部屋に入ると同時に砂時計がクルリと反転しました。


『脚力、腕力、頭脳…。

まだ、何かあるのか?』


ウィンフィが呟きました。

カインはテーブルの上の宝石箱を開きます。

と、蓋の裏に文字が書いてありました。


――――――――――――――――――――

深い海から上を見ると、希望があり、喜びがあった。

両手に純潔の乙女を連れたる者は、更なる宝を得る事が出来るだろう。

――――――――――――――――――――


(??)


ウィンフィには、意味が分かりません。

宝石箱の中には5つの宝石が…。

トパーズ、エメラルド、サファイア、真珠、ルビー。


カインは、その中からサファイア、トパーズ、エメラルドを取り出します。

そして、一番低いワイングラスから順に宝石を入れていきました。


『カイン。

お前、意味が分かったのか?』


ウィンフィが、驚きの声を上げます。

カインが、右手を上げました。


「石言葉だよ。

サファイアの石言葉は、深い海、高潔、崇高の3つ。

“深い海”って、珍しい石言葉だから覚えてたんだ。

“希望”が、トパーズで、“喜び”が、エメラルド。

“深い海”が、一番下で、“希望”、“喜び”と背の順で、グラスに入れていくんだ。」


『なるほど、頭脳の次は雑学…?

いや、情緒。

ロマンティストでなければ解けない謎と言う訳か…。

で、他の石言葉は、何で知っとるんじゃ?

おおかた、女子にもてようと覚えたのであろう。

年頃の男は、必死じゃのう。

ヒューヒュー…。』


カインは、ウィンフィを無視して“純潔”の意味を持つ真珠を取り出します。

と、カインの動きが止まりました。

カインの様子に気付いたウィンフィが尋ねます。


『どうしたんじゃ?』


「両手に純潔…、この中で“純潔”の意味を持っているのは、真珠だけ…。

だったら真珠は2つ無いとおかしい…。

いや、石言葉は1つの石に3~4…。

残っているルビーに俺の知らない石言葉が…?」


と、ルビーに手を伸ばそうとした時、ウィンフィが、楽しそうに言いました。


『左手を開いてみろ。』


カインが、ゆっくりと左手を開くと、琥珀とダイヤモンドが…。


「あっ!?」


カインは、赤面すると琥珀をテーブルの上に置きます。

ダイヤモンドにも“純潔”の意味があったのです。

カインは左手にダイヤモンド、右手に真珠を持って扉の砂時計に触れました。


ガコン!


砂時計が反転し、扉が開きました。

カインは、部屋を出ます。


部屋を出ると、そこは大きなホールでした。

中央が、舞台の様に高くなっていて10段程の階段が付いています。

カインが、階段を登ろうとした時、突然ウィンフィが声を上げました。


『すまん! 緊急事態じゃ!!

あとは任せる!!

ビザィオにウィザリンが来たと伝えてくれ!!』


どうやらウィンフィの身体に、何らかの危険が迫ったようです。


「ウィンフィ! 大丈夫なのか!?」


返事は、ありません。

繋がりは切れたようです。

カインは不安を覚えますが、大きく息を吐くと階段を登り始めます。


階段を登りきった先に大きな看板がありました。

看板の先は左右2つの部屋に区切られています。

右側の部屋の中に大きな宝箱が見えます。

宝箱からは、金銀財宝が溢れていました。


左側の部屋には大きなベッド。

ウィンフィと変わらない年頃の娘がそこに眠っています。

ビザィオの娘、フィリアに違いありません。

カインは、看板を読みます。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

試練を乗り越え、ここへ至った者。

宝を持ち帰るが良い。

ただし、得られる宝は一つ。


と、ここまで読んだ貴君は、娘を選ばなければ、ゲームオーバーだと考えている事でしょう。


事情を説明します。

娘には、年を取らない魔法をかけてあります。

これは、永遠の眠りを伴う魔法です。

魔法を解く方法は、キス。


だから私は、娘にふさわしい男か、貴君の身体能力と知恵を試させてもらいました。

しかし、宝目的で来られた方には、関係の無い話。


宝目的の方は、右側へ行き、宝をお持ち下さい。

また、妻や恋人がいる方、情けで魔法を解こうとする方は、ゲームオーバーになりますので、宝をお持ち下さい。

この洞窟での記憶は消えますが、宝を持ち帰る事が出来ます。


娘の魔法を解いて下さる方は、左側へ行き、娘にキスして下さい。

この洞窟での記憶は消えませんが、以降、誰も洞窟に入る事が出来なくなります。

もちろん宝を持ち帰る事は出来ません。


最後に、この文章に嘘が無い事を誓います。


魔道士ビザィオ

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


「はあぁーーっ…。」


カインは、溜め息をつくと大きく息を吸って叫びます。


「同情無しに13歳の娘にキスしようとする挑戦者が居るかーーーっ!!」


洞窟内にカインの声が響きます。

もしかしたらビザィオが聞いているのではと、期待したのですが、何の反応もありません。


(あっ!?)


カインは、全く同情しない訳ではありませんが、一番の目的がビザィオにウィザリンが来たと伝える事なので、もしかしたら条件的にいけるかもと思ってしまいました。

恋人は居ない、同情心は薄い、ビザィオの行方を知りたいと言う理由だけでキスをする…。


(いやいやいや…、これは宝でしょ…。)


と、思ったカインでしたが、冷静に考えてみると…。


(数百人もの挑戦者…、何人ここまで来た…?

誰も宝を持ち帰れていない…?

はっ!?)


カインは、看板の一文に目をとめるとガックリと肩を落とします。


「なるほどね…。」


そう呟くと、両手を開き真珠とダイヤモンドを手放しました。

“得られる宝は一つ”

普通で有れば“娘を選ぶか? 宝を選ぶか?”の2択が書かれている筈です。

何も書かれていないと言う事は、娘と複数個の宝の中から一つと言う事…。

真珠とダイヤモンドの二つを持ったままでは、駄目と考えたのです。

で、宝箱の方へ行っても一つしか持ち帰れない…。


この事に気付いた挑戦者も居たでしょうが、“情けで魔法を解こうとする方”。

この条件で、挑戦者は宝を選び記憶を無くし、戻ったのでしょう。

カインも何も知らずに挑んでいたら、魔法を解いてあげたいと思います。

この時点で情けが入るので、選択肢は宝のみになります。

で、宝一つだけ持ち帰っても、攻略に失敗したとしか思いません。

一つだけ持ち帰ったと自慢する挑戦者など居ないのです。

これが誰も宝を持ち帰れない秘密だったのです。


カインは、宝を一つだけ持ち帰った場合を考えました…。

ウィンフィに罵倒され、再度、洞窟に入ることになるのは目に見えています。

そして洞窟の秘密を知ったウィンフィは、何度も俺を洞窟へ入れ、宝を増やそうとする…。

そして最後に、フィリアにキスをして、ビザィオの情報を得る…。

だったら…。


「はあぁーーっ…。」


カインは、大きく溜め息をつくと、フィリアのもとへ向います…。


フィリアは、真っ白なシルクのドレスを着て眠っていました。

腰まで伸びた銀髪、細身の美少女…。

カインは、ベッドの前で悩んでいました。

意識の無い少女にキスをする。


(駄目だろ~っ!!)


と、抵抗を感じていたのです。

しかし、ここで時間を取っている訳にはいきません。

ウィンフィが緊急事態なのです。

カインは、覚悟を決めフィリアにキスしました…。


しばらくして、フィリアが目を覚ましました。

フィリアは、大きく伸びをするとカインを見ます。


「まあ、ギリギリ合格点か…。」


「へっ!?」


フィリアの可愛い声に似合わない物言いに、カインは驚きました。

フィリアが右手を差し出します。

反射的にカインが、その手を握りました。

瞬間、カインの目の前が真っ白になります。


気が付くと2人は、洞窟の外にいました。

目の前にウィンフィとチョップが居ます。

ウィンフィは、浮遊魔法のフェザップを使い、毒ヘビを遠くへ移動させているところでした。

どうやら無事のようです。


「ウィンフィ、チョップ…。

ただいま…。」


宝を持ち帰れなかった負い目もあり、カインは小声で言いました。

気付いたウィンフィとチョップがカインを見ます。

2人は、洞窟が消えてなくなっている事に気付きました。

カインの背中から美少女が顔を出します。


「おおっ! フィリアではないか!!

久しぶりじゃのう。

覚えておるか…。

見た目は少し変わったが、ウィザリンじゃ。

今は、諸事情によりウィンフィと名乗っておる。

ビザィオに会いに来たのじゃが…。

奴は、まだ生きておるのか?」


フィリアは、ウィンフィをジッと見つめると…。


「その物言い…、確かにウィザリンだ…。

久しぶりだな。

私は、諸事情によりフィリアの中にいる。」


と、可愛い声に似合わない物言いに、ウィンフィとチョップは驚きました。


一行は、山を下ります。

道すがら自己紹介をしました。

カインが、ガリバーの孫。

オウムの中から小人。

ビザィオは、驚くことばかりです。

ウィンフィが、会いにきた訳を話すとビザィオは大きく頷き、その問題は解決したと眠っていた理由を話し始めます。


ウィンフィが居なくなって直ぐ、村に疫病が蔓延しました。

フィリアも感染して、フィリアと村人の治療で、魔法の研究どころではなくなります。

時間に追われた結果、ビザィオは最後の手段を試みました。


まず、フィリアの意識を眠らせます。

次に他者の力を借りる魔法…、“カリック”を使いフィリアの脳の力を借りました。

そうする事で、フィリア自身で魔法をかけたのです。

ビザィオの思惑通り、フィリアは数ヶ月の若返りと引き換えに年を取らない呪いにかかりました。

無事、時間稼ぎが出来ましたが、“カリック”を使っている間、使用者はその機能を失う…。

ビザィオは、脳死状態になってしまったのです。


この事をビザィオは予想していました。

だから最初に解決すべきは、脳死状態の身体へ戻る魔法の開発。

早急に解決しないとビザィオの身体が、どんどん衰弱して行くのです。

“カリック”を使う事も考えましたが、フィリアの脳の力も一緒に移動してしまう可能性がありました。

ビザィオは、ウィザリンに協力を要請する手紙を書きます。

“カリック”は、ウィザリンが開発した魔法…、誰よりも使い方を知っているのです。

しかし、その頃ウィザリンは独房島へ送られていて、連絡を取ることが出来ませんでした。


ウィザリンの協力が得られないと知ったビザィオは、残る2つの問題解決に精力を注ぎます。

14歳になると死ぬ魔法の解呪。

年を取らない魔法の解呪。

ビザィオは、この年を取らない魔法に目をつけました。

共通する効果を持つ魔法…、眠り続け、年を取らない魔法…。

“スリーミン”を自身にかけることで、呪いが上書きされることが判明したのです。

が、ここで父親としての想いが爆発します。

呪いを解くには、キスが必要…。

大切な娘のファーストキスを奪う男…。

考えただけで、鳥肌ものです。

他に手は無いか、必死に研究を続けますが、ここに至るまでに5年が経過していました。

村人達がビザィオの不在、フィリアが全く成長しない事を不信に思い始めたのです。


これ以上、時間をかけるわけにはいかないと、ビザィオは洞窟を作ります。

試練を乗り越える力を持った男であればキスを許そうと思ったのです。

そして今日、カインが試練を乗り越え、2つの魔法は解呪されました。


「ほう…。

では、カインが呪いを解いたと言う訳か…。

ふ~ん…。

あれほど嫌がっていたキスをフィリアにはした訳だ……。」


黙って話を聞いていたウィンフィが、地の底に響くような声で言いました。

カインは、死んだと思いました。

ウィンフィは、ビザィオに問います。


「なぜ、フィリアの意識を眠らせたんじゃ?」


ビザィオは、可愛い顔に苦悩の表情を浮かべます。


「もし、13歳のウィザリンが父親と一心同体になったら、それは喜ぶべき事かい?」


ウィンフィは首を横に振ります。


「なるほど…、思春期の娘には耐えられんかもな…。

それはそうと、わしの事は、ウィンフィと呼んでくれ。」


ビザィオは、頷きます。


「では、私の事もフィリアと呼ぶようにしてくれ。」


3人は、頷きました。


一行が、村に到着しました。

するとそこに村人達が集まっていました。


「あんたが、ガリバーの孫のカインか!?」


「ねえねえ! ビザィオの宝みせてよ!!」


「洞窟は、無くなっちまったのか!?」


村人達は、カインを質問攻めにします。

困惑するカインの耳元にフィリアが口を寄せます。


「魔法で、入口の看板を書き換えた。

お前が洞窟を攻略した事は、既に知れている。」


カインは頷くと、村人達に洞窟を攻略して宝を手に入れた。

洞窟は消えて無くなった。

宝は、ここに居るビザィオの娘、フィリアだった事を話しました。

村人達は、宝が娘だった事にガッカリ、カイン達のもとから去って行きました。

ウィンフィがフィリアに問います。


「そう言えば、洞窟の中にあった宝石は、どうなったんじゃ。」


「あれは、娘が結婚する時に渡そうと思っている…。

あっ!? しまった!!

当座の生活費に多少持ってくれば良かった。

うーん…。

ウィンフィ、カインは金銭的に余裕あるのか?」


ウィンフィは、生活に困ってはいないが、裕福では無いと答えました。

フィリアは首を傾げると、ウィンフィを見つめます。


「ウィンフィは、カリックでカインの中から洞窟の中を見てたんだろ?

私が知っているウィザリンだったら、カインを何度も洞窟に入らせて、宝を根こそぎ持って行くと思うんだが…。

若返って性格が変わったのか?」


ウィンフィは、えらい言われようじゃなと思いつつ、言っている意味が良く分からなかったので、途中でカリックを解除したと正直に言いました。

フィリアは、ホッと胸を撫で下ろし、洞窟の秘密を話します。


「なるほど…、宝を持ち帰る事は出来たんじゃな…。」


ウィンフィが、地の底に響くような声で言いました。

カインは、死んだと思いました。

カインは話を変えます。


「それでフィリアは、これからどうするんだい?」


「もちろん、君の家にお世話になるのだが…。

何か問題でも?」


「何でだよ!?」


「カイン!

君は行く当ての無い幼い娘を放っておいて平気な人間なのか?」


カインは思い出します。


(以前、ウィンフィに同じような事を言われたなぁ…。)


カインは、同居人2人の同意が無ければ、一緒に住む事は出来ないと言いました。

ウィンフィが断ってくれることを期待したのです。


「いいよー! 一緒に住もうーー!!」


予想通り、チョップは同居を即決しました。

ウィンフィは迷っています。

そんなウィンフィに、フィリアが何やら耳打ちしました。

ウィンフィは笑顔で答えます。


「もちろん、一緒に住む事に問題は無いぞ。」


「はぁぁーー…。」


カインは、大きな溜め息をつくと、ガックリうなだれました。


4人は馬車に乗り村を離れます。

入口に差しかかった時、看板が見えました。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

洞窟の謎は、解き明かされた!

謎を解いた勇者の名は、カイン!!

ガリバーの孫、カイン!!

カインは、世界一の宝を手に入れ、私の望みを叶えてくれた。

カインに最大限の感謝を…。


魔道士ビザィオ

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


カインは、

看板を書き換えて欲しい。

最大限の感謝は金銭で欲しい。

と、訴えました。


フィリアは、

看板は3ヶ月で消える。

幼い娘に金銭を要求するのか!

と、聞く耳を持ちませんでした。


「はぁぁーー…。」


カインは、大きな溜め息をつくと、ガックリうなだれました。


旅の道すがら、今後の事を話し合いました。

特にフィリアの意識を戻す事について…。

目覚めてもショックが少なくてすむよう、綿密な打ち合わせが行われました。

そして、ビザィオの意識をどうするのか…?

ビザィオは、決して表には出ない。

フィリアには気付かれないようにする。

だからこのまま内緒にして欲しい。

と、言いましたが、


「じゃあ、フィリアに危険が迫ったらどうする?」


との問いに黙り込んでしまいます。

カインとウィンフィも、常にビザィオに監視されていると思うと、気の休まるものではありません。

話し合いの結果、ビザィオの意識を眠らせる事に…。

そしてフィリアが願った時だけ、フィリアとビザィオの意識を入れ替えることになりました。


ちなみにビザィオの身体は、今も生きているそうです。

洞窟の奥の隠し部屋に寝かされていて、使い魔に世話をさせているとの事でした。

ウィンフィが、『元の身体に戻そうか?』と言ったのですが、ビザィオは、年老いて、衰弱して、痩せ細った身体に戻っても先が無いと断ります。


「元の身体に戻って直ぐ、若返りの魔法を使えば良いんじゃないのか?」


と、カインが提案すると…。

大量の魔力を必要とする魔法なので、弱った身体で使える保障が無いと、悲しそうに言いました……。


5日後、一行はカインの家へ帰り着きました。

カインはフィリアの為に部屋を用意します。


「冒険の仲間が増えたのに、俺の仕事は減らない…。

いや、むしろ増えた…。

フィリアの為の部屋なのに、何でフィリアは手伝ってくれないんだ…?」


カインは、ブツブツと文句を言います。

その時、ウィンフィの部屋からフィリアの叫び声が…。


「いやーーっ!

ウィンフィ!! ウィンフィ!!

誰か! 誰か助けてーー!!」


カインは急いでウィンフィの部屋に飛び込みます。

妙な違和感を感じつつ…。


「どうしたんだ!?」


部屋の中には、ウィンフィとフィリアの2人。

フィリアは、入口の横に立っていました。

ウィンフィは、ベッドに横たわっています。

カインが、ベッドに近付くと…。


バタン!


ドアが閉まったと思った瞬間、部屋からドアと窓が消えて無くなりました。


「フィリア! 一体、何のつもりだ!?」


と、違和感の正体に気が付きました。

フィリアが女言葉を使っていたのです。

まだ、中身はビザィオの筈なのに…。


部屋の外からフィリアが話しかけてきました。


「すまないカイン。

一緒に住む条件として、呪いの解呪に協力すると約束してね。

この部屋を封印した。

封印解除の方法は、ウィンフィが知っている。

で、ウィンフィは、“スリーミン”を自身にかけている。

部屋から出るには、ウィンフィを目覚めさせれば良い。

では、健闘を祈る。」


フィリアが、立ち去る気配がしました。


「ちょっと待ってくれ!

何で部屋を封印する必要があるんだ!?」


カインの問いにフィリアは立ち止まります。


「君は、嫌な事をチョップにやらせるそうだね。

起こす人がチョップだったらどうしよう?

と、ウィンフィは悩んでいたよ。

私は、そんな男には見えないと言ったんだが、ウィンフィの不安が拭えなくてね。

じゃあ、2人きりにしよう、と言う話になった訳だ。」


「もう一つ!

女言葉で、悲鳴を上げた理由は!?」


「…。

ウィンフィの指示だ。

女の悲鳴でカインは飛んでくる筈だと…。

私は嫌だったんだが、全面的に協力するとの約束があったからね。」


フィリアは立ち去りました。


「はぁぁーー…。」


カインは、大きな溜め息をつくと、ガックリうなだれました。

ウィンフィの性格を知るカインは思います。


(「起こす人がチョップだったらどうしよう?」

そんな女の子っぽい事を本心で言う筈が無い!

俺に対する嫌がらせだ!!)


ウィンフィは、いつもの黒いゴシック・ロリータファッションで、両手を胸に合わせて眠っていました。

カインは覚悟を決めます。


チュ!


軽くキス…、ウィンフィは目覚めません…。

カインは首を傾げます。


「ウィンフィ!」


声をかけ、身体を揺すっても起きた様子がありません。


(真面目にキスしないと駄目なのか?

フィリアの時は、どうだった…?)


悩んだ結果、少し長めのキスをします。


チュー!


と、ウィンフィが目を開きました。

カインはホッと胸を撫で下ろします。

ウィンフィは、ニッコリ笑いました。


「よし! リハーサルは終りじゃ。

その調子で頼むぞ。

では、本番スタートじゃ!

スリーミン!!」


ウィンフィは、魔法を唱えると眠ってしまいました。

タヌキ寝入りしていたのです。

カインは呆気に取られます。

そして、苦々しい顔を見せた後、再びウィンフィにキスしたのでした…。


目覚めたウィンフィが、封印を解除して部屋から出て行きます。

その背中に疲れた様子のカインが質問しました。


「何で、リハーサルする必要があったんだ…?」


ウィンフィは、悪びれた様子も無く笑顔で答えます。


「わしは、お前の策略で、過去に2回チョップとキスしとる。

なら、3回キスして詫びるのが当然じゃろう。」


カインは、苦笑を浮かべるのでした。


部屋が用意でき、フィリアを目覚めさせる事になりました。

フィリアがベッドに横になります。


「では、ウィンフィよろしく頼む。」


ウィンフィは頷きました。

そして魔法を唱えます。


「スxxカzイムリ…。」


同じタイミングで、ビザィオの意識を眠らせ、フィリアの意識を戻す…。

カインは、同時詠唱の高速魔法を聞き取れませんでした。


しばらくして、フィリアが目を覚ましました。

キョロキョロと辺りを見回すと、怯えた表情でカイン達を見つめます。

ウィンフィが、優しい言葉で話しかけます。


「フィリア…、大丈夫か?

わしは、ウィザリンじゃ。

見た目は少し変わってしもうたが、中身はウィザリン…。

覚えておるか…。」


フィリアが頷きます。


「よし、では事情を話そう。」


そう言って、ウィンフィは話し始めました。

作り話を…。


フィリアが病気に感染して、今の医学では治せない事が判明。

ビザィオは、病気の進行を止める為、フィリアの時を止めた。

その後、必死に治療法を探したが見つからない。

数十年の歳月が過ぎ、やっと治療法が判明したが、ビザィオが病に倒れてしまう。

話を聞きつけたウィザリンが、ビザィオのもとを訪れた時、ビザィオは亡くなる間際だった。

ビザィオは、ウィザリンにフィリアの事を頼むと亡くなった。

ウィザリンは、フィリアを治療する為、このカインの家へ連れて来て、治療を施し、フィリアの時を戻した…。


黙って話を聞いていた、フィリアの目から涙が溢れます。


「お父様は、どこに埋葬されたのでしょうか…?」


「ビザィオの遺言で、ランブト山にある洞窟に埋葬した。

だが、洞窟は魔法で隠されとる。

行っても見る事は、出来ないじゃろう。」


フィリアは、今すぐランブト山へ行きたい、お父様に会いたいと泣いて訴えます。

ウィンフィは、金色に輝く腕輪をフィリアに手渡しました。


「これはビザィオが作った腕輪じゃ。

ビザィオは、腕輪に魔力を込めた。

辛い事、困った事があれば、助けてくれる筈じゃ。

使い方は、腕輪をはめ、見つめて願い事を言う。

そして目を閉じる…。

やってみなさい。」


フィリアは腕輪をつけると、半信半疑でウィンフィの指示通りやってみます。


「お父様、会いたい!」


フィリアが目を閉じます…。

瞬間、フィリアの表情が変わった気がしました。

フィリアは眠り、ビザィオが目覚めます。


「どうやら魔法は成功したようだな。」


「ゆっくりしている暇は無い!

ビザィオ!

フィリアへ手紙を書け、ランブト山へ行くのを止めるんじゃ。

カイン! 紙とペンを早く!!」


ウィンフィの指示で、ビザィオは手紙を書きました。

書き終わるとベッドに戻ります。

と、フィリアの表情が変わった気がしました。


フィリアが目を開きます。

フィリアは驚きました。

手に手紙を握っていたのです。


――――――――――――――――――――

愛する娘、フィリアへ…。

私の魂は、この腕輪の中にある。

だから、ランブト山へ行かなくても大丈夫。

いつも一緒だよ。

困った事があれば、いつでも呼んでくれ。

――――――――――――――――――――


フィリアは、ワーンワーンと泣きました。

カインは小声でウィンフィに尋ねます。


「あの腕輪は、どういった物なんだ?」


ウィンフィは微笑むと、小声で答えます。


「フィリアが助けを求めると、フィリアの意識が眠り、ビザィオが目覚める腕輪じゃ。

2分間だけな…。」


ウィンフィは、フィリアの肩に手を置きます。


「フィリア…、一つ言っておく事がある。

腕輪に込められた魔力は無限ではない。

だから本当に助けが必要な時だけ、使うのじゃぞ…。」


フィリアは泣きながら頷きます。

ウィンフィは、ホッとしました。

頻繁に腕輪の力を使われると、たまったものでは無いと考えていたのです。

ウィンフィは話を続けます。


「ビザィオからの伝言じゃ。

お前が結婚する時、洞窟へ来て欲しいと言っておった。

お祝いの品が用意してあるそうじゃ。

だからランブト山へ行くのは、結婚が決まった時じゃな。」


ウィンフィは笑顔を見せます。

つられてフィリアも笑顔を見せるのでした…。


しばらくして、全員が居間に集まりました。

お茶を飲みながら自己紹介が始まります。

カインが、ガリバーの孫。

オウムの中から小人。

ウィザリンが、若返ってウィンフィと名乗っている。

フィリアは驚くことばかりです。

3人は、2回目だな~っと思っていました。


そしてフィリアの今後について話し合いました。

冒険に連れて行くかどうか…。

冒険へ行っている間、ジャックに預かって貰うと言う案に、フィリアが反発したのです。

同じ年頃のウィンフィが行くなら、私もついて行くと駄々をこねたのです。


カインは船での役割を話しました。

チョップは、マストの上に登って見張りを担当。

ウィンフィは、魔法を使った船医。

フィリアを船に乗せても役目がないと伝えたのです。


フィリアは、じっと考え込んでいます。

しばらくして立ち上がると、部屋を出て行きました。

フィリアに聞こえないよう、ひそひそ話が始まります。


「ビザィオの腕輪があるから、足手まといには、ならないと思うんだけど…。

いざと言う時の保険としては、ありじゃないのか?」


カインがウィンフィに問いかけます。

連れて行くのに反対していたのは、ウィンフィ。

カインの船は小型の外洋船…、個室は2つしかありません。

ウィンフィは、フィリアと同室になるのが嫌だったのです。


「だからじゃ!

いつビザィオが出てくるのか分からん恐怖を味わいたいと思うか?

まあ、わしとカインが同室だったら連れて行っても…。」


「絶対、駄目!

そんなことしたらフィリアが不信に思うだろ!!」


「何じゃ!

もしかしてフィリアと同室ならとか考えておるのか?」


「そんなこと考える訳ないだろ!」


2人の言い争いをチョップはニコニコ顔で聞いています。

と、美味しそうな香りが…。

3人は顔を見合わせると台所へ向います。


台所では、フィリアが料理を作っていました。


「皆さん!

もう直ぐ食事の用意が出来ます。

座って待っていて下さい。」


チョップはテーブルの上へ、カインとウィンフィは食卓に着きます。

少しして、テーブルに美味しそうな料理が並べられました。

ちょうど晩御飯の時間です。


「美味しい! 美味しい! 美味しい!」


「凄く美味しいよ!

こんなに美味い料理は、食べた事がないな!!」


「そう言えば、父親に美味しい物を食べさせたいと、必死に料理の勉強をしとったな。」


チョップ、カイン、ウィンフィの箸が止まりません。

そんな様子をニコニコ顔で見ていたフィリアが言いました。


「私の船での役目は、コックで良いですか?」


と、可愛く首を傾げます。


3人の箸が止まりました。

3人は、顔を寄せ合い小声で話し始めます。

カインは、仕事が減るので賛成。

チョップは、美味しいものが食べられるので大賛成。

ウィンフィは、今だ決めかねています。

そんな様子を見ていたフィリアが、腕輪を見つめ悲しそうに言いました。


「私、みんなと一緒に冒険に行きたいの…。

お父様…、力を貸して…。」


フィリアが目を閉じます。

瞬間、フィリアの表情が変わりました。


「誰だー! 反対している奴はー!!」


ビザィオが目覚め、ウィンフィは賛成しました…。


2分後…。

フィリアが目を開くと、カインとウィンフィが床に倒れていました。


「どうしたんですか!?」


フィリアが、慌てふためきます。

ウィンフィは、ビザィオの魔力が発動して、もの凄い力で身体が床に押し付けられた。

フィリアを連れて行くと言った瞬間、力が消えたと言いました。

フィリアは泣いて謝りました。


「フィリア、冒険へ連れて行くには条件がある。

今みたいに、何気なく魔法を発動させてしまう事が、あってはならないと思うんだ。」


カインの言葉にフィリアは頷きます。


「だから普段の生活では、腕輪を外しておいてくれないか?」


フィリアは、しばらく悩んでいましたが、分かりましたと納得してくれました。

カインとウィンフィは、顔を見合わせ、ホッと安堵の表情を浮かべます。

2分の間にカインとウィンフィは、話し合っていたのです。

ウィンフィは、フィリアが腕輪を外してくれれば、同室でも良いと言いました。

その為に考えた作戦…。

2人は、床に倒れ芝居をする事にしたのです。


カインは、自身の首から銀のネックレスを抜き取ります。


「フィリア、腕輪を貸してくれないか?」


フィリアはカインに腕輪を渡しました。

カインは、ネックレスに腕輪を付けます。

そして、フィリアの首にかけました。


「これで、いつもお父さんと一緒だよ。」


フィリアは涙を浮かべます。

実は、腕輪をネックレスにすることも作戦の内でした。

こうすることで、フィリアが腕輪を使うタイミングが把握できるのです。

ネックレスを外した時、ビザィオが出てくると…。

カインは笑顔を見せると、テーブルの上に倒れているチョップに、小声で話しかけます。


「もう良いよ。」


チョップに下手な芝居をされると台無しと思った2人は、声をかけるまで死んだふりをしてくれと指示していたのでした。

これで、問題は何も無くなったとカインは安堵します。

すると、ウィンフィが背中越しに話しかけてきました。

地の底に響くような声で…。


「フィリアに銀のネックレスをプレゼント…。

そう言えば、お前に出会ってから随分経つが、プレゼントを貰った記憶がないのう…。」


カインは、死んだと思いました。


数日、経ちました。

船も戻ってきて、カインは毎日、改装工事をしています。

オウム姿のチョップが、マストの上で安全に見張りが出来るよう、鳥かご風の見張り台を作り。

ウィンフィとフィリア、2人の部屋に2段ベッドを作り。

調理場をフィリアが使いやすいよう作り変え…。


「冒険の仲間が増えたのに、俺の仕事は減らない…。

いや、増える一方だーーっ!!」


と、時おり叫び声が聞こえてきましたが、何だか楽しそうです…。


さらに数日…。

準備が整い、いよいよ出航です。


「カイン! 何処へ行くつもりじゃ!!」


ウィンフィが、問いかけます。

行き先を知っているのは、カインだけ。

カインは、ニヤリと笑います。


「冒険初心者が多いから、危険の無い島を選んだ。

俺と爺さんが、一番最初に行った島だ。

どんな島かは、行ってからのお楽しみだ!」


バサッ!


帆が開き、船が沖へ出ます。

オウム姿のチョップが、見張り台へ飛んで行きます。

フィリアは調理場へ、昼御飯の準備を始めます。

船医のウィンフィは、舵を握るカインの横に座り、水平線を眺めています。

久しぶりの冒険、カインの顔は、喜びに満ち溢れていました。


4人を乗せた船は、帆に一杯の風を受け、グングンとスピードを上げるのでした……。

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