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色んな先輩  作者: oga
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せっかち×マイペース

 ここはダイナ島。

様々なフィールドが存在し、様々なモンスターが生息する。

その島の沿岸にある都市。

ここに、モンスターを狩るために必要な技術を教える学校がある。

通称アカデミーと呼ばれ、この学校では、あらゆる武器を生徒に教えるが、この時期、卒業生らが新たに狩りに加わることとなる。

今回は、そんな初々しい生徒諸君と先輩にフォーカスを当てていく。







 俺はブレッド。

年は18になる。

得意武器はナイフで、地上初のソロのナイフ使いになるのが夢だ。


「マジで、頼むぜっ」


 今日は、先輩とここで落ち合う約束になっている。

学校の決まりで、卒業しても最初の1年は先輩について回らなきゃいけない。

一歩学校から出たら、文字通り弱肉強食の世界だ。

ぱっと見、弱そうなモンスターでも、やっかいな奴は多い。

新人はそういうのの見分けがつかないから、ばっちり教えてもらわなきゃならねーって訳だ。

先輩狩人は学校がランダムに指定してくるから、いい先輩に当たるかは運だ。


「って、もう時間、過ぎてんじゃねーか」


 腕時計を見やる。

集合時間を2分、オーバーしちまってる。

集合場所、間違えたか?

でも、確かにこのダイナドンの止まり木の下、っつってた。

ちなみに、ダイナドンってのはでかい鳥で、マイダイナドンでこの広い島を移動する。


「……」


 いつまでたっても、来ない。

もう、30分は過ぎちまってる。

これ以上遅れるようなら、一旦学校に連絡してみないとダメかもだ。

しょっぱなから、幸先わりーな。

あと5分だけ、待ってみるか。

そう思った矢先、向こうから、のっそのっそと誰かが近づいて来た。


「ごめーん」


 やや小太りの男。

何の悪びれた様子も見せず現れたコイツが、まさか俺の……


「俺はライス。 お前の先輩だ」


 マジかよっ!

俺は、声を出さずに、そう叫んだ。

外れも外れ、大外れじゃねーか!

せっかく溜めたダイヤで10連ガチャを回して、全部「Dランク」のキャラをつかまされた気分だ。

どう考えても、こいつは雑魚だ。


「ブレッドは飯食ったか?」


「……食いましたよ。 とっくに」


「マジかー。 じゃあ、ちょっと飯食ってくるから、待っといてくれ」


 は?

え、今から飯行くのかよ!?

ライスさんは、そのまま来た道を引き返し、飯屋へと向かった。








 帰って来たのは、1時間後。

あり得ない。

今日限りだ。

学校の規定で、先輩と馬が合わなかった場合、変更の申請をすることができる。

この人にゃ悪いが、そうさせてもらう。

俺は、ダイナドンの足首に捕まりながら、そんな思惑を巡らせていた。


 降り立ったのは、荒野。

ここで、コドモドラゴンを狩る予定だが、既に時刻は1時。

陽が落ちる前に帰ることを考えると、あまり時間がない。


 ラッキーなことに、向こうからコドモドラゴンが一匹、現れた。

二足歩行のドラゴンみたいな奴だが、全長は2メートル未満で、比較的小型だ。


「先輩、俺が足を斬りつけて動きを止めるんで、その刀でとどめ、頼みます」


 俺は、コドモドラゴンに突撃した。


「せっかちなやつだなー」


 俺はナイフを構え、素早い動きで相手の側面に移動、足を止めないようにして、太ももらへんを斬りつける。


「ギャアアアアッ」


 甲高い悲鳴を上げ、尻尾を振り回してくる。


「っぐ!」


 ムチみたくしなった尻尾が、俺の腕をかすめる。

頭をガードしているものの、直撃すればただでは済まない。


「せんぱ…… って、何しとんじゃーっ!」


 俺は、思わず叫んだ。

ライスの野郎、道端に生えてる草に心を奪われている。


「これ、ヨモギだー。 帰って食堂のおばちゃんにもってってあげようかな」


 こいつ、俺が作った隙を、無駄にしやがった。

俺は、ふざけんじゃねえっ、とナイフをその場に投げ捨てた。


「先輩、俺、帰ります。 やってらんねっすわ」


 マジで、やってらんね。

完全に頭に血が上って、目の前のコドモドラゴンなんて、どうでも良くなった。

口に指を当てて、笛を吹こうとした時だった。

俺の頭部を狙って、尻尾が振り払われた。

周りが、スローになる。

やべっ。

下手したら、これで死ぬかも知れない。


(やっちまった)


 まさか、初日でやらかすとは……

ついて、ね……

その時だった。

一閃。

コドモドラゴンの尻尾が体から切り離され、刀を抜いた先輩が目の前にいる。

更に、次の瞬間には相手の体から血が噴き出した。

あまりの早業に、いつ斬りつけたのかすら分からない。


「油断したらアカンよー」


 間抜けなしゃべりとは裏腹に、尋常じゃない剣技。

俺は、可笑しくなった。


「ははっ、マジっすか!? 先輩、ハンパないっすね!」


 俺は、考えを改めた。

しばらく、この先輩についてくことになりそうだ。





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