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微かな誤解と暴走義妹  作者: 冷涼富貴
第一部 義妹と幼なじみと
3/114

態度は、豹変

「……あ、あの……真一さん」


 香織が、帰宅した後の自宅リビングにて、おそるおそる話しかけてきた。


「……? どうしたんだ?」


「真一さんの高校のこと、聞きたくて……よければ、少し詳しく教えていただけませんか」


「いいけど……真一さん、って」


 なぜ突然名前呼び。なんとなく他人行儀な感じがして、いまいちしっくりこない。


「あっ、あっ、『真一さん』って呼ばれるの、イヤ、でしたか……?」


「イヤ、ってわけじゃないけど。家族なんだから、『兄さん』とかでいいよ。今まで通りに」


「あ、そ、そうですよね。父さん母さんには秘密にしないとならないですもんね……」


「……ん? よくわからないけど、なぜ秘密にする必要があるんだ?」


「えっ、えっ、だって……わたしたち、兄妹ですよ?」


「わけがわからん……まあいいや。俺の高校に、進学するつもりかな?」


「はい。……兄さんと一緒にいたいですし」


「お、おう……」


 今までの一年は何だったんだろうな、香織のこの態度の変わりよう。……いや、きっかけが欲しかったんだよな、香織も。きっと。


「……わかった。じゃあ、俺の部屋に来い。いろいろ資料もあるし」


「えっ……そんな。いきなり……でも、兄さんならわたし……」


 微妙に話がかみ合ってない気もするけど、気のせいだな。うん、気のせいだ。

 もちろん、高校の説明だけだぞ、部屋の中でしたのは。……なぜだか香織は赤面しながらうわの空だったけど。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「妹ちゃんと話せるようになったんだ。よかったね!」


「ああ。美久のおかげもあるよ。ありがとな」


 日が変わった朝。俺は、いつも通り一緒に登校する美久に、昨日の顛末を説明した。


「ん? あたし、なんかしたっけ?」


「きっかけ、って言葉を教えてくれたからな。うまくいったのはそのおかげだ。感謝する」


「何言ってるの、あたしと真一の仲じゃない! でも、本当によかった。妹ちゃんを見たことは数えるほどしかないけど、かわいい子だよね」


「ああ。少しずつ、慣れてくるといいんだけど。敬語はやめてほしいんだがな」


「ふふっ、まだ緊張してるんじゃない。……真一、手を出しちゃだめよ」


「出さねえよ! おまえは俺を何だと思ってんだ」


「……まあ、真一がそんなに手が早いわけ、ないか」


「……?」


 ため息の出ない通学路は久しぶりなんだが、俺の代わりに美久がため息をついたようである。



「よっ、バイオレンスコンビは今日も仲良く登校か」


 美久と一緒に正門をくぐると、クラスメイトにそのような声をかけられた。


「……ねえ、そのバイオレンスコンビって、いい加減にやめてくんないかな?」


「だな。美久はともかく、俺も一緒くたにされるのはマジ勘弁だ」


「……真一。骨、折られたい?」


「やっぱ美久がバイオレンス筆頭じゃねえかよ!」


 こいつと一緒に暴れていた頃のイメージが、まわりにも残っているようだ。黒歴史だな、これも。

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