愁里と愛
秋花が帰ったあと、教室は重い空気になった。
『光森さんとお幸せに!!!』
という秋花の一言で周りは僕と愛を交互に見る。
「ねぇ、愁里くん、さっきの秋花の言葉って……」
「いや、それはね」
なんて言えばいいんだろう。
何を言っても言い訳にしかならない。
「光森さんもさ黙ってないでなんかないの?」
「……あたしは関係ない。あたしは愁里と友達なだけ。佐々木さんが勝手に解釈してるだけ。」
「……なにそれ、秋花が全部悪いっていいたいの?」
「男女で一緒にいたらいけないことなの?
それなら佐々木さんと愁里だって一緒に居たらいけないことじゃない。」
「は?だって秋花と愁里くんは双子なんだし当たり前でしょ。」
「佐々木さんと愁里はね……………」
「やめて。もういい加減にして。やめてよ。」
「愁里、ここはうるさいし図書室行こう」
「今は一人にして……………」
まさかこんな事になるなんて。
秋花も早退しちゃったし。僕のせいだ。
****
お昼休み、秋花と一番仲がいい女の子が来た。
確か名前は、篠崎明音。
「ねぇ、愁里くん今いいかな」
「ん?なに?」
「あのさ……」
「愁里、こっち来て 」
篠崎さんが話そうとした途端、愛が腕を引っ張った。
「ちょっと今話してたんだけど」
「あの子よりあたしの方が先!」
「なにそれ、てかどこいくの! 」
「図書室に決まってるでしょ」
だけど、図書室に行くと鍵がかかっていた。
「う、そ……」
「今日午後から出張って言ってたからね。仕方ないよ」
そう言って教室に戻ろうとした
「ねぇ愁里。愁里はキスされても何も感じないの?」
「……………愛のことは大事だよ。でも、1人の信頼を崩すのと、多くの信頼を崩すの、どっちが辛い?」
「それは……」
「僕は秋花のおかげであのクラスのみんなと仲良くなれた。信頼を得られた。それを崩すと言うことは秋花から貰ったものを無駄にするってこと。それは嫌なんだ。」
「秋花秋花って……あたしの気持ち知ってるくせに!!!」
愛は僕に抱きついてきた。そして泣いた。
「愁里好き……そばに居て……あたしには愁里だけなの……」
顔を近づけてきたから僕は離れた。
「愛、僕らまだ小学生だよ。そんな事言わないの」
僕は教室に戻って行った。
篠崎さんは教室から居なくなっていた。