素敵な歌声です
「……ある国から探し物を探しに兵士たちが来た。
彼らを束ねていたのが兵士長のクリンパス。
彼らは、350日海の中に落とした空の欠片を探していた。
しかし、あるとき気がついた。
本当は、海のかけらを空に落としていたことに……。
クリンパスは、勇んで空へ潜った。
鏡のような空へ海を探しに。
そこにたどり着けたのは、もっとも深く潜れるクリンパスだけだった。
空の中には、水の洞窟があった。
その洞窟のさらに奥……。
そこにあったのは、探し物。
ずっと前から探している海の欠片。
しかし、そこには番人がいた。
全身が硬く覆われている甲冑の戦士が……。
クリンパスの刀も槍も何も通さない無敵の鎧。
繋ぎ目さえも通らない。
クリンパスは一旦引いて考えた。
どうすれば、戦士を敗れるか。
クリンパスは、はるか西にあるサンダラの花のエキスを霧状にして戦士に降りかけた。
途端に、戦士は苦しみだし息絶えた。
クリンパスは、見事に番人を倒し探し物を見つけだしたのだ。」
ふぅ~っと息を吐き出し演奏を終わらせるチャネル。
そんな様子を見て、ファントムは拍手をしてその歌声を称えた。
「やっぱり、上手ですよ。最高!」
「やぁ、お世辞は良いわよ。そんなことより、少しは役に立ったかしら?」
照れて、顔を真っ赤にしているチャネル。
その仕草は、歳相応の女性の可愛らしいものだった。
ファントムは、そんな様子にくすりと笑って答えた。
「ええ、少しなんてものじゃないくらいですよ。大変、役に立ちました」
ファントムは、鞄の中からここら一帯の地図を取り出すと、チャネルに見せた。
「いいですか、チャネル。今、僕たちはここにいます」
すっとファントムが指差した場所は、町から少し離れた海の上だった。
「そして、さっきの物語の通りなら、ここに空があるはずです」
つうっと指を横にスライドさせていくファントム。
その指は、ある一点でぴたりと止まった。
「えっと……マリンビジョン?」
そう、ファントムが指差した地図の場所には、【マリンビジョン】と書かれていた。