宝石の間です
更新が遅くなって、申し訳ございませんでした。
洞窟の最深部に着いたファントムは、原色の青【スカイマリンブルー】を目の前にしていた。
「……時間が無いというのに。これは、どうしたものでしょう?」
石で出来た祭壇の上に【スカイマリンブルー】はあった。
これを入手すれば、魔物を倒すための材料の一つになる。
しかし、その宝石は厚い水の壁に覆われていた。
祭壇の下からものすごい威力で噴出し続ける水の壁に阻まれ、とても手が出せない状態なのだ。
「【サンフレアレッド】の時は、溶岩が噴出していましたが、ここもですか……。あの時は、ダグアじーさんに氷の付加魔法を掛けてもらったナイフを連続で何十本も打ち込みましたっけ」
前回の時を思い出し、ナイフを連続で宝石に向かって打ち込む。
しかし、ナイフは水の壁に弾かれ、床に落ちてしまった。
「……ものすごい水圧ですね。手で触れようものなら、水圧で切断されてしまうほどの強力なものでしょう。……でも、時間が無いんです。すみませんが、さっさと入手させていただきますよ」
ファントムは、筆を取り出すと、持っていたナイフに業火を描きこんだ。
もちろん、魔法の赤い絵の具でである。
そして、無言でそれを宝石に投げつける。
魔法の絵の具は、描いた者の気持ちや腕によって威力を変える。
ファントムの画家としての腕前は、宮廷お抱えの画家でさえ一目置くほどのものだ。
しかも、今はチャネルの命を失うかもしれない一刻を争う事態である。
チャネルの命を救いたい強い気持ちと、ファントムの画家としての腕前と集中力、それらが合わさって、ナイフに描かれた業火の絵は、ファントムが描ける最高傑作となっていた。
ファントムの手より投げられたナイフは、全てを燃やし尽くすような恐ろしい豪炎を纏いながら、宝石に向かっていく。
そして、水の壁を、石の祭壇を、全てを蒸発させながら、宝石を水の壁の外にはじき出したのだった。
ナイフは、己の使命を全うした瞬間に、ドロドロに融けてこの世から姿を消した。
「これで、準備は完了しました。待っていてくださいね、チャネル」
ファントムは、宝石を拾うとすぐさまチャネルの元に向けて駆け出した。
宝石は、先ほどのナイフの攻撃を受けたにもかかわらず、どこにも傷や融けた形跡が無かった。
超高温や超低温の温度変化などものともせず、どんな衝撃にも傷一つつかない。
完璧な色を保持し続け、いつまでも同じ色で輝き続ける伝説の宝石【オールカラーズ】。
彼の手の中で光り輝く、その美しく青い姿は、まさしく【オールカラーズ】の青、【スカイマリンブルー】だった。