潜水です
「あの~……チャネルさん?」
「何?ファントム?」
「え~っと、もしかしてついて来る気ですか?」
「はぁ?当然でしょう!最後まで、しっかり手伝うわよ」
なに聞いてんの?みたいな感じで答えるチャネル。
その姿を見て、ファントムはまた頭を抱えて悩み始めた。
「あの……一時間で戻れなかったら本当に死ぬのですよ?それでも行きますか?」
ちょっとした脅しのようなもの……ではなかった。
ここら一帯は、さきほども言ったとおり【特A級危険地帯】なのだ。
ほんの一時間限りの絶景は、それを過ぎたら地獄へと変わる。
ボートの上ならば、少しは安全だろうが海の中だったら……命の保証はないだろう。
そんなファントムの言葉を真正面から受け止めて、チャネルは力強くで頷いた。
「 そ れ で も 、行くわ」
ファントムは、はぁ~っとため息を吐き出すと『仕方ない』とチャネルの分の支度も始めた。
「え~っと……私は、チャネルが潜る準備をしますので、チャネルは自分で持っていくものを用意してください」
「う~んと……冒険って初めてなんだけど、どんなものを持っていけばいいの?」
「魔法具やその他はこちらで用意しますので、チャネルは自分愛用の武器を持ってください」
テキパキと海に潜るための準備をするファントム。
チャネルもそれにならい、自分の支度を始めた。
ファントムは、先ほどの格好で口に魔法具(こちらの世界で言う『酸素ボンベ』みたいなもの)を装着していた。
チャネルは、背中にポシェット、両太ももに黒い棒を付けていた。
「それでは、準備は良いですか?」
「うん、完璧よ!」
ファントムの言葉に、気合十分で答えるチャネル。
そんなチャネルに、ファントムは黒色の耳栓と腕時計を手渡した。
「これは?」
「耳栓は、口に咥えている魔法具とペアになっているものです。これを付けていれば、装着しているもの同士なら水中でも会話ができます」
ファントムは、自分の持っている魔法具をチャネルに見せる。
そこには、No.1と書かれていた。
チャネルも、自分の魔法具を見るとNo.2と書かれていた。
「なるほど……。で、この時計は?」
見たところ、変哲のないただの時計である。
「ああ、それは防水魔法を施してある時計です。ここがまた荒れる時間の十分前にアラームをセットしておきました」
「ふむり」
「いいですか、チャネル。その時計が鳴ったら何があっても、すぐにボートに戻ること!それだけは、約束してください」
チャネルにきっちりと注意をすると、ファントムは海に飛び込んだ。
「……分かったわ」
続いて、チャネルも海に飛び込む。
そして、水面から顔を出して、チャネルは最後の確認をした。
「ただし、戻るときは二人一緒よ」
「もちろんです」
にこりと笑い、二人は【マリンビジョン】の空の中へ潜っていった。