許婚と死
0-6話目
ラストです。
ここから、「月明かりの下で」に繋がる予定です。
花梨の心はどこか変な感じになってる気がします。
今回の話は、流血、死の表現があります。
それとキスシーンもありますので、苦手な方はお気をつけください。
彼女の瞳は真っ直ぐと朝霧を見ていた。冷たくなんの感情も持たない瞳。
一歩が早かった。双子の間を縫うように朝霧に近づいてきた。双子は彼女と同じくらいの反応を見せる。
彼女の刀が朝霧の顔の横を掠めた。けれど、陸哉が護身用のナイフを取り出し、女の刀に応戦する。
「何者だ……」
「答える義務はない」
「離れろ」
陸哉と陸斗の間に挟まれるように立つ女。それでも、彼女は朝霧だけを見ていた。
女の後ろにいる陸斗は、銃を取り出し頭に向けている。
「何が目的だ」
「……」
女は何も言わずに、素早く陸哉に斬りかかると、ナイフを飛ばし陸哉の腕を斬る。しかし、陸哉の蹴りに反応し、足に力を入れると、思い切り後方へ飛んだ。
「陸哉!」
朝霧の叫び声が響く中、陸斗が女に銃口を向け、そして引き金を引く。弾丸をも交わしさらに距離を取る。
銃声の音を聞きつけたガードマン達が、こちらに走ってきた。
女は、真っ直ぐに朝霧を見ている。そして、思い切り勢いを付けると、庭の周りに植えてある木々の方へと、飛んでいく。
「行った……」
「陸哉!!」
陸斗の声に花梨も朝霧と共に陸哉の所へ。
陸哉の右腕に傷から血が流れていた。しかしそれ以外の傷はない。
「陸哉、大丈夫?」
「はい、大したことありません」
「ありがとう」と、朝霧が陸哉の肩を叩く。
会場からは花梨の父、朝霧の両親が走ってくるのが見えた。
あれから、数日。花梨はなるべく外出は控えるように言われてから、学校に行くこと以外の時間は家に引きこもっていた。
そしてあの黄色い瞳を思い出していた。陸哉と陸斗がいた施設で見かけた、あの黄色い瞳の少女にそっくりだったから。
「冷たい、目だった……」
ベッドの上で、寝転がりながら両膝を抱え込む。
殺されると思った。けれど、あの目は朝霧くんを狙ってた。ーーそうあの少女は、朝霧を狙っていたのだ。花梨にも双子にも一切興味を示さずに。
部屋の扉がノックされた。「どうぞ」と声を掛けると、陸斗が顔を覗かせる。
「花梨様、朝霧様が来ましたよ」
「朝霧くん?!」
「今、玄関で待ってますよ。少し外を散歩しようと言ってます」
「分かった、すぐに行くね」
「はい」
花梨は部屋着だったため、クローゼットから服を選び始め、着替えを済ませる。
玄関へ向かうと、朝霧が陸哉と話しをしているのが見えた。
「朝霧くん」
「やぁ、花梨」
「どうしたの?」
「花梨の顔が見たくて。散歩でもしよう」
陸哉はいつの間にか、二人から離れていた。しかし、二人を見守れるような距離で、陸斗と共に見ていた。
花梨様朝霧は茎谷家の屋敷内の、庭を散歩し始めた。公園のようになっており、池などがあった。
「朝霧くん、家から出て平気?」
「ん? あぁ、まあ……。あれ以来、母さんがうるさいのは確かだな」
「ボディーガードさんとはいないの?」
「いるよ。今は車の中で待機してるけど。ここなら、平気だから」
「そうだね」
二人はそれから他愛もない話しを続けた。けれど、陽が落ちてきたため、帰るようにとボディーガードに促されてしまったため、朝霧は帰ることに。
「朝霧くん……。気をつけてね」
「うん。花梨も」
そう言うと、朝霧は花梨の唇に口づけをした。
「許婚だから、問題ないよな」
「……毎回言ってるよ、それ」
「そうか? 」
「うん」
「なら、俺は花梨が好きだよ」
「私も、朝霧くんのこと好き」
二人は沈み始めた太陽を背に、もう一度口づけを交わした。
顔を真っ赤にさせながら、朝霧を乗せた車を見送る。しかし、これでもう会えないとは思いもしなかった。
家への帰り道。朝霧は指で唇をなぞるように、触れる。
ガタッと車が大きく揺れた。屋根に何かが落ちてきたらしい。瞬間、屋根から刀身が突き刺さってきた。
「な、なんだ……」
「朝霧様、逃げてください!!」
ボディーガードの声に我を取り戻し、車から出ていく。走り始めると後ろから足音が近づいてきた。振り返ると、パーティ会場に現れた女だった。
「あの時の……」
一発、銃声の音が響き女の体が跳ねた。しかし速さを緩めることなく、朝霧に襲いかかった。
長い刀身が朝霧の体を貫いた。すぐに刀身を抜くと、首から腹にかけ思い切り斬り捨てる。
「か、りん……」
その後、すぐに花梨は朝霧の元に駆けつけたが、もう息は絶えていた。
「また、黄色い瞳の……」
「花梨様」
「二人とも」
「はい」
「……あの子を探して」
「……黄色い瞳、ですか?」
「うん、そう。あの子……。あの子が」
花梨の目には、復讐心などはなかった。ただ会いたかっただけ。ただ話してみたかっただけ。その気持ちが、今目の前で死んでいる朝霧を見て、何故か溢れてきた。
「いつか、絶対に」
この数年後。花梨は少女に出会う。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
何が言いたかったかというと、強化人間出てくるお話っていいよね。ってことです。
感情が無かったのに、主人に出会ってから徐々に感情取り戻したり、子どもの頃に仲良かった友達が突然いなくなったと思ったら、感情無くして強化人間になったとか。
最高な気がする。
それだけです笑
ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします^^