瞳
0-4話目
あの子が登場致します。
黄色い瞳に囚われる花梨。
一方、朝霧の元へ行った花梨。スーツ姿の朝霧に少し見とれていたが、意を決して話しかけに行く。
「朝霧くん」
「あぁ、花梨。やっぱり来てたんだね」
「うん」
「俺も、父さんに付き合わされてさ。疲れちゃった」
「ねー。私も疲れちゃった」
「そうだ、ちょっと中庭に行こう」
「お庭?」
「ほら、行こう」と、朝霧が花梨の手を引く。花梨は頬を赤らめながら、朝霧の後について行く。
朝霧は花梨より二つ上だが、とても大人っぽい雰囲気を醸し出していた。それに花梨はとても惹かれていた。
パーティ会場は、今夜の主役の屋敷。その中庭はとても綺麗に整えられていた。真ん中には大きな噴水。芝生で整備された広大な土地の周りには外から見られないように木々が植えられていた。
とても洒落た灯りもポツリ、ポツリと備え付けられ、夜も深くなっていたが、中庭は明るかった。
「今日は、犬たちは放されてないんだね」
「客に噛み付いてりしたら、大変だからな」
「ゴールデンちゃんに会いたかった」
「そっか、ここの人と知り合いか」
「うん」
手の握られていない方の手には、会場から持ち出したグラスが握られている。花梨の持つグラスの中身はオレンジジュース。朝霧のは白ブドウのジュース。
「そうだ。陸哉と陸斗は?」
「たぶん、どっかにいると思う……。前は屋根とかに乗ってたから、もしかしたら今日も屋根かも」
「身体能力が凄いな」と、一口ほどジュースを飲む。氷が溶け、白ブドウが少し薄まっていたため、朝霧は少し顔を歪めた。
「会場戻るの面倒くさいな」
「ん?」
「飲み物。新しいの欲しいけど、戻ったらまた父さんに捕まるからさ」
「そうだね」
風が刺すように吹いてきた。雲行きは怪しくなってきて、雨が降りそうな匂いまでしてきた。
「風、強くなって来たね」
「そうだな……。雨降ってきたら、嫌だから会場戻るか」
「そうだね」
「あぁー、戻りたくない」
二人は仲良く手を繋ぎながら、歩き出す。瞬間、二人を引き裂くように、何かが間をすり抜けていった。強い力のせいで、二人は別々の方へ飛ばされてしまい、「キャッ!」と叫び、尻餅をついてしまった。
突き飛ばされた瞬間、目を閉じていたが、ゆっくり目を開ける。目の前には陸哉と陸斗が立っていた。
「陸哉、陸斗……」
二人は警戒心を剥き出しに、目の前にいる人間を睨んでいた。
その人間の手には、長い刀が握られているのが分かった。二人に突き飛ばされたのか、地面に倒れていた。ゆっくりと立ち上がると、二人を睨んでいた。
「花梨!」
「朝霧くん」
「大丈夫か?」
「うん……」
朝霧は花梨を守るように、抱きしめてやる。
双子の間から見える者は、女だというのが分かった。端正な顔立ち、長い髪、そして刺すように光る黄色い瞳。
花梨はその瞳を見たことがあった。しかし、その瞳は双子でも花梨でもなく、朝霧に狙い定めていた。