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明月  作者: 山芋娘
3/6

双子

0-2話目です。

花梨と双子の出会い。

感情がない双子が登場します

 

  生まれた時から施設と呼ばれる所に子供達がいた。白衣を着た大人達が毎日、毎日、子供達を使い実験していた。

  生まれたばかりの赤子、捨てられた幼児、そして人工的に作られた子供。

  それらは感情も何もかも抑えつけられた状況の中で、様々なことを教えられてきた。様々な薬や訓練により、頭脳も肉体も限界まで鍛え上げられていた。

  そして毎日のように子供たちを選び、買っていく大人達。

「耳の良いのがほしい」

  ある日の夜、施設に現れた男、茎谷が研究員にそう言った。

「では、この部屋にいる子供がいいでしょう」

「……あの奥にいるのは、双子?」

「えぇ。一人だけを作ろうとしたら、副産物で生まれましてね。ですが、条件の耳の良さ、それと肉体的にもとても素晴らしい水準をしております」

  二人は部屋の中で、何やら複雑な暗号式を解いていた。見た目は男の子、花梨とさほど年は離れていないように見えるが、頭脳は全く違うようだった。

「名前は?」

「ここでは番号で呼んでいます。608と610です」

「何故、一つの飛んでいるんだ?」

「本当はもう一人居たんですが、体が実験に耐えられなくなったので、破棄しました」

「惨いことをするな」

「なんと言われようと、構いません」

「……私も同じくようなものか。あの二人を貰おう。言い値でいい」

「ありがとうございます」と、男が双子の値段を提示してきた。茎谷はそれにサインをする。

「調整などしますので、少々お時間貰ってもよろしいですか?」

「分かった、明日の朝に迎えを寄越す。それでもいいか?」

「はい、大丈夫です。では明日よろしくお願いします」

  その日、608と610は茎谷に買われた。



  翌日の昼。

  運転手に迎えられていた双子は、茎谷家の屋敷に到着した。何の感情もないのか、大きな屋敷を前にしても、驚くような素振りすら見せない。

  屋敷に着いて、茎谷が双子を迎えた。

「二人には娘を守ってもらう」と、言うが双子は何も反応しない。

「娘はもしかしたら、君たちのとの距離を取るかもしれない。その時は、娘の声を聞いて守ってほしい」

  茎谷は双子を連れ、花梨の部屋へと向かう。

  花梨の部屋に茎谷が現れた。すでに花梨は起きて、家庭教師に勉強を教えてもらっていた。

「失礼、花梨と話がしたい。少し外してくれるか?」

「かしこまりました」と、一度頭を下げると、部屋から出ていく家庭教師。

  入れ替わるように、茎谷と二人の男の子が入ってくる。

「どうしたんですか? お父様」

「昨夜のことは覚えているか?」

「……はい」

「この二人が、これからお前を守る」

  茎谷が後ろにいる双子を紹介する。双子は数度、瞬きはするが、それ以外の表情は動かない。薄い水色の瞳にも光が入っていないように思えた。

「守る……。別に大丈夫だと思いますけど……」

「この前のような事が起こるのは、流石にもう避けたいからね」

「お迎えさえ来てくれれば……」

「私の心臓が持たない」

「……分かりました」

「彼らには、花梨の言う事を聞くように言ってあるから、何かあったら言いなさい」

「……はい」

  茎谷は仕事があるらしく、部屋から出ていく。けれど、双子は花梨の部屋から出ていこうとしない。

「……名前は?」

「名前?」

「……番号ならあります。僕は610」

「僕は608」

  初めて口を開いたから、声が発せられる。しっかりと受け答えをしてくれた事に、花梨は驚いたが、それ以上に名前の無いことにも驚いた。

「……名前、無いんだ」

「608、610と呟くだけでも、あなたの声はもう覚えたので、どこにいても駆けつけます」

「そう、ありがとう……。名前、付けてあげる。だから、もう番号は忘れて」

「あなたが言うなら」

  608は表情一つ変えずに答える。その答えに、少し寂しげな表情を見せる花梨。二人のことをよく見ると、そっくりだが、違う所もある。

「……花梨。私の名前」

「花梨、様」

「そう、よろしくね」

「はい」

  花梨と双子の出会い。これから、双子は花梨が死ぬまで守り続ける。

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