最終章 戦う心 10
(僕は……一人だ……)
佐伯家は代々武術によって家柄を守って来た。その基本にして絶対の理念は強者である事。
ただ純粋に強さのみを追い求めていた為、当主は代々強さによって決められて来た。そこに分家も直系も無い。
だが佐伯家の当主は常に直系の者がなって来た。それはひとえに直系の者達が生まれついて体格に恵まれ、独特の修練によってその力を百パーセント発揮していた為だった。直系の者とはつまり生まれついてのエリートだった。
そんな中、分家に生まれたのが佐伯花梨という少女だった。成長した花梨はとても美しく穏やか性格の子供だった。佐伯家の女性は格闘技に携わる事は無い。それ故に花梨は穏やかな日常を過ごしていた。
しかし、そんなある日花梨は佐伯家の集まりで当主と会う。そこで佐伯家の当主は少女の非凡な才に気がついた。
それ以降花梨の生活は変わった。佐伯家直系が受ける訓練をその幼い体に刻み込まれた。女性で子供の身でありながら花梨はその全てを吸収していき。やがて佐伯家の中でもトップクラスの実力を持つ様になった。
神童花梨。幼くして免許皆伝を得た彼女は龍拳の名を授かった。ここに佐伯家史上最強の格闘家が誕生し、佐伯家はより繁栄するかと思われた……しかし――。
佐伯家の修行は花梨の心を壊してしまった。才を伸ばす事のみに集中し人格を省みる事をしなかったせいで、花梨改め龍拳は人を壊す事でしか自分の感情を表現する事が出来なくなっていた。そしてその感情表現を受け止められる物はそう多くは無く。龍拳は佐伯流の門下生を百人再起不能にした。
(どうして僕と話してくれないの……)
龍拳は壊れていく者達を見て、そして悟った。
(ああ、そうか……僕は皆とは違う人間なのか……)
龍拳は悟った。己が常人では無い事を。自分が戦いの為に生み出された鬼なのだと。
(まあ……いいか……)
龍拳はただそう思った――。




