最終章 戦う心 4
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
まるで戦場の雄叫びの様な大歓声の波が雄一の体を揺さぶる。一歩入った体育館の中はこの戦いのクライマックスを見ようとする者達で埋め尽くされていた。
『両者前へ!』
そしてそんな歓声をかき消すような馬鹿でかい声が体育館中に響き渡る。それはまるで獅子の咆哮。自らとの圧倒的な戦力差に観衆は黙らざるを得なかった。
「ほっほっ。よく来たのぉ、二人共、まずは決勝進出おめでとう、っと言ったところかの?」
髭をいじりながら久我は悪戯っぽく片目を瞑る。
「おめでとうと言われても、俺はまだ一回も戦ってないんですけど……」
「ほっほっ。早坂君にはこれからの戦いに期待しておる」
がっしりと雄一の肩を掴んだその巨大な手は大きさ以上の強大さを感じさせた。
「ふむ、せっかくじゃから二人が勝った時に何を望むのか聞いておこうかの。何か懸かっている方が双方燃えるじゃろう?」
「俺は…この学校から武術を無くしたい」
雄一は平然とそう言った。それに久我は楽しそうに頷く。
「勝てば叶うぞ早坂君。では次に……佐伯君。君は何を望む?」
「うん? 僕?」
龍拳は久我の問いに腕を組んで宙を見る。それはクリスマスプレゼントを考える子供の様。
「えいっ!」
そんな最中龍拳は可愛らしい声を出すと、唐突に久我に手刀を放った。
完全な不意討ち。会場の誰も龍拳の凶行を予想してはいなかっただろう、龍拳の手刀は寸分違わず久我の右目に迫る――。
「ほっほっ」
『ドスッ!』
鈍い音が鳴る――だが龍拳の指は久我の目を貫いてい無かった。
「あはっ! 流石だね!」
龍拳が楽しそうに笑う。龍拳の手刀、それは久我の人差し指と中指で挟んで止められていた。
「楽しいなぁ~お爺さんは。僕の願いはね。混沌。もっともっと壊したいんだ。だからね。僕が優勝したら世界中の格闘家をこの学校に集めてくれる? 僕が全部壊してあげるから。あはっ!」
「ふむ……よかろう。ではこれは力を封じる者と、力を開放する者との戦いというわけじゃな。結構、結構。存分に戦うが良い」
久我は龍拳の指を離した。そして天に向かって手を上げる。
『早坂雄一対佐伯龍拳――始めぇええええええええええええい!』
大歓声と共に戦いの火蓋が切って落とされた――。




