最終章 戦う心 3
『ガラガラガラガラ…………』
医務室の扉が開かれる。
雄一はその椅子の上で一度静かに目を閉じた。そして何かを決めたかの様に目を開くと入口の方を見た。
「お待たせ……お兄さん」
顔に血を付けた龍拳が扉に寄りかかりながら手を上げた。それを見て雄一は立ち上がる。
「じゃあ行ってくるよ。瑠衣」
瑠衣の額に付いていた髪の毛を一つ払い雄一は無造作に入口まで歩いた。
「瑠衣が寝てるんだ。別の場所でもいいかな?」
「う~ん。別に良いけど。手間が増えるよね。だって僕が倒したあとにお兄さんをもう一回ここに運ぶのはさ」
「はぁ……どうしてこんな事になったのかな。俺は普通に学園生活を送りたいだけなのに、君みたいに強い子と戦う事になって、しかもどう考えても戦い辛いでしょ、その容姿は」
「あはっ! 僕が子供だから気にしてるの? そっか~困ったな。僕も本気のお兄さんと戦ってみたいのに…………あ、そうだ良い事を考えたよ! 聞きたい?」
「うん。取り敢えず聞いてみるよ」
「あはっ! あのね。僕が勝ったらそこで寝てるお姉さんをぐちゃぐちゃに壊しちゃうっていうのはどうかな? そうすれば、お兄さんもやる気が出るんじゃない?」
「あああ、もう良いよ。十分にやる気出たから。じゃあ行こう。体育館で良いかな? 一番広いし」
「うん。そうしよっ!」
龍拳はニコニコと微笑むと雄一の腕に抱きついた。それだけみると仲の良い兄弟が買い物にでも出かけているだけの様に見えなくも無い。
「なあ、どうして君はそんなに戦うのが好きなんだ?」
「う~ん。だって楽しいでしょ? 人の肉を打つ感触は気持ち良いし。骨の折れる音を聞くとスカッとするよね?」
「いや、悪いけど全然共感出来ないよ。俺は人の骨を折った事も無いし」
げんなりした表情を浮かべながら雄一は歩く。やがて体育館に近づいて行くと、遠くから地鳴りと歓声が雄一の体を叩いた。
「ふふ、僕は本当にお兄さんに期待しているんだ。お兄さんならきっと僕の全力を受け止めてくれるよね!」
体育館のライトをバックにした龍拳の姿は神々しい天使の様に雄一には映った。
「はぁ……正直しんどい」
雄一は重い足取りで体育館の扉をくぐった――。




