第六章 全校武術トーナメント開始。8
「まさかの大番狂わせでしたね」
太平が感情の乏しい表情で隣に座る久我に声をかける。
「ほっほっ亀田ちゃんも空気を読んだじゃろ。本気を出したら発剄なんて使わん。いきなり首の骨を折るじゃろう。しかし、それを差し引いても松尾瑠衣のレベルは一時的にそこら辺の達人クラスには達しておったわ」
久我は満足そうに頷く。
「さて他の試合は? どうかの?」
「はい。相手の手の内が分からない様に場所を変え、ほぼ同時刻に開始しました。そして全ての組が既に試合を終えています」
「ほっほ、それで? 見所のある試合は有ったかの?」
「はい。報告によれば一つの組だけ開始三分で決着がついた様です」
「ほっほ、それは多分龍拳君じゃろ?」
「はい。バトルロワイヤル方式で試合は行われましたが一人で五人を相手にしそれに勝利しました」
モニターが龍拳の居る会場を映した。そこには倒れてピクリとも動かない五人とその中央で平然と自らの顔についた血を拭う龍拳が居た。
「ほっほ。相手は平均値で言えばかなり上位の武人が集まっていたはずじゃが。勝負にならなかったか」
「ええ、龍拳の力。下手をすると我等教職員にも並ぶほどかと」
「ほっほ、早熟じゃのぉ~あの歳で達人かい。まあわしもあの頃には道場を片っ端からぶっ潰して回ってがのぉ。ほっほ、まあ良い。ならば太平ちゃん。今後の対戦表も作っておいておくれ。出来るだけ観客が退屈せんような奴をの」
「お任せください」
太平が目で頷くと満足そうに久我は椅子から立ち上がる。そしてそのままモニタールームから退出した――。




