第六章 全校武術トーナメント開始。 3
「三勝〇敗……」
雄一が呆然と呟いた。
「可笑しいですね……」
瑠衣が隣でそれに頷く。
三勝〇敗。結果だけ聞くと雄一の居る陣営の圧勝だった。その証拠に雄一達は既に六ポイントを得ている。
しかし、ここで問題が発生した。
「まさか、全て一ポイントだとは」
瑠衣が言った通り、今まで三年A組は一ポイントしか自らに加算していなかった。これはつまり後の二人で七十キロを背負っているという事だ。
「勝負を捨ててたのかな?」
雄一がそう結論づけて瑠衣に尋ねる。すると瑠衣は首を横に振った。
「私の次の相手……恐らく一番強いです」
「え?」
雄一は先ほど自分が一番弱そうだと思った相手が一番強いと言われ、信じられない様にフードの人物を見る。
「そうなの? 小さくて全然強そうじゃないけど?」
「体型に騙されてはいけません。私の相手だけが力の底が見えない。つまり私相手に実力を隠し通すだけの技量は有るという事です」
瑠衣の真剣な表情に雄一は息を呑んだ。これほどまでに瑠衣が緊張しているを見るのは彼女が父親である跋彩と対峙している時だけだったからだ。
「勝てるの? 松尾さん」
「勝ちます。私は早坂君を守るという使命がありますから。負ける事は許されない」
瑠衣は一歩前に出た。するとそれに応じる様にフードの人物も一歩前に出る。
「副将戦、松尾二ポイント、亀田六ポイント!」
『おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
会場から驚嘆の声が漏れる。
「嘘だろ? 六ポイントって六十キロの錘を背負って戦うって事かよ!」
雄一が叫んだ。だがそれ以上に驚いた様に瑠衣の顔が硬直していた。
「か、亀田……」
「ふぉ、ふぉ、ふぉ……」
瑠衣の言葉に応じる様にフードの人物から静かな笑い声が響いた。それと同時にバサッとフードを脱ぎ捨てる。
「あ、貴方は――」
「ふぉ、ふぉ、ふぉ、ひ、久しぶりじゃの~か、瑠衣ちゃん。わ、わし、わし、わしじゃよ」
現れたのは腰が折れた老人だった。その姿に会場中が目を奪われる。
「おい! お爺ちゃんじゃねえか! どうなってんだこれ!」
雄一は審判に向って叫んだ。すると審判は首を横に振る。
「この学校には年齢制限は無い。亀田殿はれっきとした三年A組の生徒だ」
「せ、生徒って……何だそりゃ」
どう見たって生徒とは言い難い亀田とそれを押し通す審判に雄一は絶句した――。




