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常在戦場! 武林高校  作者: 徳田武威
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第五章 代表者 5

 ――第二武道場

雄一が第一武道場で後藤と戦っていた同時刻。ここ、第二武道場でも似たような授業が行われていた。

 しかし、授業内容は似ていたが起こっていた出来事は全く異質な事だった。

「佐伯! もう一度言ってみろ!」

 筋肉の鎧という表現がピッタリくるほど肥大化した筋肉を纏った巨人が目の前に居る自分よりも遥かに小さい少年を怒鳴りつける。

「ふふ、だからさぁ。僕一人で十分だからお兄さん達は出場を辞退してくれないかな? 邪魔なんだよね~僕が他の人達と戦う機会が減っちゃうからね。ふふふ」

 すると怒鳴られた少年。佐伯龍拳は不敵に笑う。そこには緊張感の欠片も無い。

「お情けで五人目に入った餓鬼が。幾ら何でも我慢の限界が過ぎたぞ」

「ふふふ、お情け。お兄さんにはお情けに見えたのかい? いや~お兄さんには全く期待して無かったけど、まさかそれほどなんてね。まさか、まさか自分と相手の力の差が分からないほど弱かったなんてちょっと予想外だよ。ふふふ」

 龍拳が挑発する様に笑うと 男は顔を真っ赤にして拳を握り締めた。

「ふふ、角田かくた先生。もし僕が代表の四人を倒したら僕だけが武術大会に出場って事でいいのかな?」

 龍拳はパイプ椅子に腰掛けて座るジャージ姿の若い男に問いかけた。すると角田と呼ばれた男は鋭い視線を龍拳に向ける。

「好きにすれば良い。強さこそ武林高校の真理。主義主張は力で通せ」

「ふふ、分かり易くて良かった」

 龍拳はリラックスした様子で正面に向き直った。そこには四人の代表者達が並んでいる。巨体の男を除いても、一人として弱そうな人間は居ない。

「さ、じゃあ早速、戦おうか?」

「佐伯、お前一人で俺達四人を相手にする気か!」

 巨躯の男が叫ぶ。それに龍拳はコクンと簡単に頷く。

「あれ? 四人じゃ足りなかったかな? クラス全員の方が良かったかな? ふふふ」

「舐めるな! 貴様」

 巨大な山が動く様に、殺気と共に男が龍拳に迫る。その勢いのまま男は大きな拳を龍拳に振り下ろした。

『バキン!』

 そんな凄まじい破裂音が道場に響いた。男の拳は完全に龍拳の顔面を捉えていた。

「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 しかし、悲鳴を上げたのは殴られた龍拳では無く。男の方だった。拳を押さえ男は地面に倒れ込む。

「ふふふ、柔な拳だなぁ~まるで赤ちゃんみたいだ。ひょっとしてお兄さんの攻撃かい? 僕が赤ちゃんを苛めている様な気にさせて良心を痛ませると考えたのかな?」

 殴られた龍拳は平然とその場に立っていた。その姿はまさに異常、見ていた者達には何が起こったのか理解出来なかった。

「お兄さんは単純に頑丈さが足りないね。頑丈さ、それは武術を極める上で一番大切な要素だよ? 鉄と木がぶつかれば、木の方が折れるに決まっている。こんな風にね」

 龍拳は蹴りを男の顔面に放った。するとパキリという音をたて、顔面から血を噴出した男はそのまま動かなくなる。

「ふふふ、ふふふ」

 そのまま龍拳は他の三人に襲い掛かった。目の前の光景に目を奪われていた男達は完全に反応が遅れた。

「ふふふ」

 龍拳の手刀が瞬く間に三人の喉下に突き刺さる。三人はそのまま白目を剥いて失神した。

「ふふふ、ふふふふふふ」

 勝負は着いた。しかし龍拳は止まらない。失神した四人に対し、更に攻撃を加えていく。それはまるで踊る様に代わる代わる順番に。

「ふふふふふ、あはははははははははは!」

 遊園地で遊ぶ純真な子供の様な表情だった。だがそれが龍拳の狂気をより一層際立たせていた。

「ふふふ。飽きちゃったなぁ~この玩具」

 龍拳はそう言うと倒れている男の顔面を踏み砕こうと足を上げた。

「そこまでだ」

 するとその肩をがしっと掴まれる。龍拳はそれに満面の笑みで振り返った。

「あれ? どうしたの? 先生」

「そこまでだ佐伯。勝負は着いた」

「ふふ、でもさ、さっき先生も言ってたでしょ? 強さこそが真理って、だから僕がどれだけ自分の玩具を壊そうと、それは勝者である僕の権利さ!」

 龍拳は角田の制止も聞かず続行しようとした。

「確かにそうだな」

 そう言うと角田は龍拳の肩を掴んだまま強引に背負い投げをして龍拳を投げ飛ばした。龍拳は空中で態勢を立て直すと猫の様なしなやかさで音も無く着地する。

「どういうつもり? 先生」

「俺は武人だ。矛を止める者。暴力を諫める者だ。目の前で俺の許容範囲を超える暴力が行われていたのでな。力づくで止めさせて貰った」

「ふふふ、そっか~ふふ、面白いね。でもね……」

 龍拳はそう言うと弾丸の様に角田に接近した。

「先生に僕が止められるのかなぁ?」

 その小さな体を補って余りある跳躍から空中で回し蹴りを放つ。角田はそれを辛うじて腕でガードする。

「ぐっ……」

 角田から苦悶の声が漏れる。その腕にはまるで鉄骨で殴られたかの様な衝撃が走っていた。

「ふふふ、さすが先生。一撃ではさすがに倒せないね。それじゃあこれはどうかな?」

 地面に降り立った龍拳は即座に次の攻撃に移る。

「佐伯流手技、蛇穿じゃかつ

 まるで骨が無いかの様にうねうねと龍拳の腕が動き、手刀が獰猛な蛇の様に角田に襲い掛かった。

「ガハァ!」

 それはあらゆる角度から角田の体の穿つ。先端に刃物が着いた鞭の様な攻撃だった。

「はぁ……はぁ……佐伯」

 ダメージから呼吸がおかしくなった角田が龍拳を睨みつける。その眼光にはダメージからの精神の衰えは無い。

「ふふふ、さぁ先生これからどうする――」

 龍拳が余裕の表情でそう言った時だった。龍拳の顔が一瞬強張る。

「佐伯――いいんだな?」

 片膝を着きながら角田はそう尋ねた。ボロボロのはずの体。しかし、その姿に確かに一瞬龍拳は気圧された。

「ふふふ、上げたね? リミッターを」

「ああ、そうだ」

 龍拳の言葉に角田は頷いた。そして静かに告げる。

「お前を殺す覚悟が出来た。ここから先はお互いただでは済まないぞ」

 ぞっとする様な表情だった。殺すという言葉を日常的に使用する者は多い、しかし角田の表情からは本当に殺意を持つ者の寒気の様な物が有った。

「ふふふ、先生~さすがだね」

 龍拳は身を少し屈めた。それは今に襲い掛かろうとする獣の様、今までの遊び半分では無い様子が見て取れた。

 一瞬でお互いの命が遣り取りされるそんな凝縮した時間が二人の間に流れた――。

「ふふふ、や~めた」

 龍拳は不意に構えを解いた。それは白刃の前に身を晒す様な危険な行為だったがまるで気負いが無い。

「先生と殺るのも楽しそうだけど、先生が居ないと何かと不便だろうしね。また今度殺りましょう」

「――――そうか」

 角田も構えを解く。周囲で見ていたクラスメイト達も異次元の戦いの空気から解放されようやく一息ついた。

「では、佐伯龍拳。我がAクラスからはお前が一人で参加する。出る限りは必ず優勝しろ」

「ふふふ、僕は負けた事無いから結果的にそうなるんじゃないかな?」

 無邪気な子鬼はこうして一人代表の座を手に入れた


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