第四章 二人の同棲生活 5
「おい! 親父! 聞いてんのか! 何か松尾さんとこに監禁されてるんだけど!」
まるで高級ホテルのスイートルームの様な豪華な部屋で、雄一は携帯を片手に怒鳴りつける。
『む……松尾……松尾とは誰だ?』
電話口から聞こえてくる疲れた声の持ち主は、雄一の父鉄心だった。
「はあ? とぼけんなよ! 親父に恩が有るとか言って俺に絡んできてるんだよ! 凄い威圧感ある人だよ!」
雄一が必死に説明すると鉄心はしばらくう~んと電話口で唸っていたがやがて納得した様に手を叩いた。
『あ、ああ……思い出した。跋彩さんか。うんうん。懐かしいな』
「懐かしいな……じゃねえっての! 助けに来いよ! 親父!」
『あ……うん。跋彩さんな……あの人グイグイ来るよな。私も苦手だった……というか現在進行形で苦手だ。ふむ。そうか、雄一、お前は今跋彩さんの所に居るのか』
うんうんと跋彩は電話越しに頷く。長年の付き合いになる雄一はその口調に何か嫌な物を感じた。
『うん。では母さんには武林高校の寮に泊まり、そこで勉学に励んでいると伝えておこう』
「おいおい! ちょっと待てよ! なんで母さんに黙っておくよ的なスタンスを親父が取ってるんだ?」
『すまん雄一。跋彩さんは昔から空気が全く読めない人でな。母さんに接触した場合秘密が漏れる可能性が大だ。これは悲しいが必要な犠牲なのだ!』
「ぎ、犠牲って言ったな! てめえ! 本音が出てるじゃねえか!」
『すまん! 雄一! それではな! お前なら必ず生き残れると信じているぞ!』
ブツリと電話は切れた。雄一はわなわなと携帯を持って震える。
「ふざっけんなよ! 糞親父! 今度会ったら絶対に母さんにちくってやる……」
怒りに震えながら雄一は用意されていた布団にダイブする。すると雄一の家の物とは違いふかふかな感触がした。
「はぁ……マジで俺どうなるんだろう……」
雄一は全く先の読めない自分の将来から目を逸らす様に目を閉じた――。




