第四章 二人の同棲生活 2
「おお! 雄一殿! 制服姿がとても凛々しい! お似合いですな!」
無駄な凄みを撒き散らしながら満面の笑みを浮かべて跋彩が雄一を抱き締める。その力強さに雄一の背骨がミシミシと悲鳴を上げた。
「あ、あの……お父様。どうしてここに?」
そんな中瑠衣が当然の疑問を口にする。すると跋彩は何を聞いているのだ? という不思議そうな顔を浮かべた。
「ふふふ、雄一殿が我が家の一員となって下さるのだ。逸る気持ちを抑えきれなくな。こうして迎えに来てしまった」
『? ? ?』
跋彩の言葉が理解出来ず雄一と瑠衣が顔を見合わせた。何処かちぐはぐな空気の中、スッと見守が瑠衣に近づく。
「旦那様はお二人が結婚する予定で同棲されるので、学校が終わる時間に迎えに来たのです」
「は、はぁ? な、何ですか同棲とは……」
瑠衣が本気で理解出来ないと言った顔で見守を見る。しかし、見守に変化は無い。
「いや、さぞお疲れでしょう。ささ、乗ってください」
「え、ええ……」
雄一は押し切られる様に強引に車に乗せられた。跋彩は素早くその隣に腰掛ける。
「こら、早く乗らんか瑠衣。雄一殿はお疲れなのだ」
「は、はい……」
瑠衣も跋彩に逆らう事が出来ずに車に乗る。するとドアが優しく閉められ。いつの間に運転席に座ったのか見守が車を発進させた。
「あ、あの……同棲って一体……」
雄一は満面の笑みを浮かべる跋彩に恐る恐るそう切り出した。確かに昨日の一件で雄一は跋彩が瑠衣と雄一を結びつけようとしているのは分かっていた。しかし、同棲となると全くの寝耳に水な状態だった。
「はっはっ! 雄一殿は御冗談が上手い。結婚されるのだから同棲するのは当たり前では無いですか。瑠衣が雄一殿と寝食を共にする。それ以上の護衛が有るでしょうか? いや有りません!」
色々とぶっ飛んでいる跋彩の言葉に雄一は引き攣った笑みを浮かべた。しかし、このままではいけないと何とか口を開く。
「そ、そうだ。か、家具とか服とか、色々無いと言うか……そういきなり同棲は困るんです!」
雄一の言葉を受けて跋彩の嬉しそうな顔がビタっと固まった。
『………………………………』
唐突に車内に重い空気が流れる。雄一と瑠衣がつつぅ……冷たい汗を流した時だった。
「そうでした……いや! 全くその通りだ! はははは!」
急に笑い出した跋彩に雄一はビクゥ! っと体を跳ね上げた。そんな雄一の様子に気付かないのか跋彩が続ける。
「そうでしたな。夫婦二人の家具はやはり二人で選びたい物。私も歳を取ったせいかそういう配慮が足りませんでした。おい見守」
「は」
「ショッピングモールに向え」
「は」
跋彩の指示通りに見守が車の進路を変える。
「ははは! では存分に買い物をお楽しみください」
「ははは……ははは……はい」
雄一は諦めた様に頷いた――。




