第四章 二人の同棲生活
「まずいですね……」
学校の授業が終わり放課後、生徒がまばらになった教室で瑠衣は深刻そうな表情でそう呟いた。
「ふぇ……何が?」
授業で疲れ過ぎて半ば眠っていた雄一が涎を拭きながらそう尋ねる。
「あ、貴方という人は……緊張感が無い」
「あ、はい。すみません」
「佐伯の事です。奴は……危険過ぎる」
瑠衣に言われ雄一は今朝の少年の事を思い出す。だが雄一にとってはただの無邪気な少年にしか思えなかった。
「あれから少し佐伯龍拳について調べて見ました。そこから分かった事が有ります。それは佐伯龍拳が佐伯家本家からも危険視されているという事です」
「危険視?」
「ええ、奴はその凶暴さから佐伯流にとっても封印されていた存在の様です。しかし、今回武林高校が出来た事によってその戒めが解かれた。佐伯流も形振り構ってはいられなくなったという事です」
「ふ~ん。あんな子供が……ねえ」
今まで普通の学園生活を送ってきた雄一にとって、佐伯の境遇は全く想像のつく物では無かった。
「あれではライオンが学校を闊歩している様な物です。何か対策を練らなければ」
「そ、そんなに異常事態なの?」
瑠衣の例えは物騒過ぎて雄一は額から汗を流したそんな時だった。
『瑠衣お嬢様』
『! ! !』
唐突に二人の隣から響いた声に瑠衣と雄一の肩がビクッと撥ねる。
「あ、あんたは……」
雄一が引き攣ったままの表情で声のした方を見る。するとそこには松尾邸で出会った仮面の男、見守が居た。
「な、何です……」
瑠衣も若干戸惑った様にそう尋ねる。すると見守は仮面と同様感情を窺わせない声音で答える。
「は……旦那様から瑠衣お嬢様と早坂様を呼んでくるようにと」
「お、お父様がここまで来ているのですか?」
瑠衣が明らかに狼狽した表情を浮かべる。対して見守は淡々とそれに頷いた。
「はい。お待ちです」
「そ、そうですか……は、早坂君。行きましょう」
「え! 俺も行くの!」
「あ、当たり前でしょう! お父様は私と早坂君を呼ぶようにと言っているのですよ!」
二人が小競り合いをしている間も見守は二人をじ~と見守っていた。
「と、とにかく! 行きますよ! 反論は許しません!」
「え、一応、俺を守る為にいるんだよね……松尾さんは」
結局瑠衣に押し切られる形で雄一は瑠衣に引きずられる様に教室を後にした――。




