第三章 戦う理由 3
「はぁ……何とか一日が終わった……」
雄一は机の上にベタと張り付き、死んだ様な表情を浮かべる。
「全部の授業が武術ってイカレてんだろ」
雄一は今日一日の授業を思い出す。ネルの武術の座学に始まり、筋トレ、型など、武術漬けの一日だった。
「はぁ~とにかく帰って親父に文句でも言うか」
雄一はそう言って緩慢な動きで顔を上げた。
「うお!」
すると顔の真ん前に女性の顔があり、雄一は盛大に仰け反る。
「な、何かな松尾さん」
目の前で雄一の顔を覗き込んでいたのは瑠衣だった。雄一は少し苦手意識の付いた同級生にぎこちなく問いかける。
「早坂君。放課後。付き合ってください」
言葉だけ取るとデートの誘いの様に聞こえるが、余りに淡々とした口調にそういう艶っぽい様子は無かった。
「え、何で?」
「私の家に行きます」
「断言された!」
断る事を全く視野に入れていない瑠衣に雄一は驚いた様に目を見開く。
「今の貴方は弱すぎます。幾ら私が最善を尽くしても突発的な事故で敗北する事があるかも知れない。だからこれから私の家に来て修行して貰います」
「えええええええええええええええええええええええええ!」
「拒否は認めません。ほら、早く行きますよ。時間が勿体無い」
そう言って髪を靡かせながら瑠衣は歩き出す。それは雄一が付いて来る事を信じて疑わない様子だった。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
雄一は無駄かも知れないと思いながら瑠衣を止める為に後を追った――。