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常在戦場! 武林高校  作者: 徳田武威
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プロローグ その時、武術会が動いた……

溜まってます。どんだけ書いてきたんだろうか。私のストック力は53万です。

「何かさあ。武道の流派多すぎねえ?」

髭を自分の腰の長さまで伸ばした老人がそう言った。

すると向かいの席に座る坊主頭の老人がゆるゆると手を挙げる。

「じ、実は、わ、わしもそうおもっとた」

すると、堰をきったように様々な所から手が挙がる。

「わても」

「俺も」

「わいも」

「わたすも」

「ミハエル氏は私もだとおっしゃっています」

次々と連なる同意の声。

すると最初に意見を出した髭の老人が

「じゃよね~いや、皆言わないからわしだけかとおもっとたんじゃけど、やっぱり多いよね~」

賛同を得られた事に満足そうにうんうんと頷く。

「確かに近年インターネットの発達で、武道もグローバル化してきましたからね。マイナーだった武術にもスポットが当たるようになりましたし」

集団の中では比較的若い、スーツを着た男が同意の意見を述べる。

「じゃから~」

すると髭の老人が皺のよった顔に悪戯をする前の様な笑みを浮かべた。

「ここらでいっちょ武術を統一しない?」

その言葉にその場にいた者達がざわめきはじめる。

「統一って昔の柔術みたいなことか? 柔道に統一みたいな」

「多分そうじゃねえ? ていうか俺空手の流派が多すぎると思うんだけど」

「いや、ちょっと待てよ。俺空手なんだけど、他の流派と仲違いしてんだけど」

「だからそういうのを統一しようって事だろ?」

ざわざわざわと収拾がつかない状態になっていく。

その時、パン! と空気を裂くような音が響いた。髭の老人が、両手を合わせた音だ。

「まあまあ少し落ちつけや、これじゃあ話し合いにならん」

その一言でその場に再び静寂が訪れる。

「では長老……統一とはどういった事ですか? 同じ名を冠する武術を統一するという事でよろしいのですか?」

さっきのスーツ姿の男が代表して伺う、しかし、長老は笑って手を横に振った。

「違う違う。統一じゃよ。文字通り、全ての武術を一つにするのじゃ」

場の空気が一瞬呆けたように弛緩する。

「えっと~それは打撃系も組み技系も一緒くたにするってことですか?」

おそるおそる、短髪で、ピチピチのTシャツにジーパンをはいた若者が尋ねる。

「うん、そう」

軽い調子で答える長老。しかし、その一言は場の静寂を一気に消し飛ばした。

「ば、馬鹿な長老! それは柔道も空手もレスリングも、全部一緒くたにするって事ですか? そんなの滅茶苦茶だ!」

「そうだ俺達空手屋、柔道みたいなスポーツと一緒にして貰ったら困りやすぜ」

「何だと! てめえ、空手なんて組まれたら何も出来ねえ、そんなのもう総合格闘技で分かりきってる事だろうが!」

 隣合って座っていた男達が睨み合う。その殺気はヤクザでさえ逃げてしまいそうな迫力だった。

「まあまあ、皆の衆、色々遺恨が有るのは分かるが、ちょっと落ち着こうや」

 長老が子供の喧嘩を宥める様に口を挟んだ。その声は決して大きくは無かったが、場を収めるだけの力があった。

「しかし、決めると言っても長老。どうやってお決めになるのですか?」

 静になった空間の中、集団の中では冷静さを保っていたスーツ姿の男が代表して質問する。この男、やさな外見だったが、良く見るとまるでスーパーマンの様にスーツから筋肉が隆起していた。

 スーツの男の質問に、長老はにやっと笑い人差し指を立てる。

「そりゃ簡単じゃろ。わしら武術家、何かを決める時はいつだって戦って決めるんじゃよ」

『! ! ! ! !』

 全員の顔に緊張感が走った。そして全員の体から黒い、殺気の様な物が立ち込める。

「そりゃ良いや。俺も今のぬるま湯の様な武術会には飽き飽きしてたんだ。さっさとやろうぜ、今ここで」

 するとその時、一人の男が席から立ち上がった。丁度長老の正面の席に座っていた男だった。

 男はトレナーにバンダナを巻いたレゲエファッションの中年だった。その眼光は鋭く、格闘家と言うよりは喧嘩屋と言った方がしっくりくる様相だった。

「ほ。ほ。ほ。血気盛んじゃのうさすが総合格闘技を世界に広めた。前田君は違うわい。じゃがの~その決め方は詰まらんわい」

「ああん? どういう意味だよ長老?」

 レゲエファッションの男、前田が不愉快そうにそう尋ねる。すると長老はふぉっふぉっふぉと髭をおさえながら笑った。

「そりゃ普通に戦ったらわしの圧勝じゃからに決まっているからじゃろう。言わせんな恥ずかしい」

 長老の一言に会場にピリッとした空気が走った。

「ほ。ほ。ほ。皆、さすが一流の武人じゃな。闘争心は衰えておらん。じゃがな、わしらが戦ったって昔の戦いの焼き回しじゃ。そんなの飽きたわわい。どうせならもっとスリリングな方法で決めようや」

「して……長老。その方法とは」

 スーツの男が眼鏡を光らせてそう尋ねる。会場に居る全員が長老の言葉を待った。

「自分の信頼する者に自分の武術を託すっていうのはどうよ?」

 長老の言葉に会場がざわざわとざわめいた。

「それは弟子の育成能力を比べるという事ですか?」

「ふふふ、佐伯君は相変わらず察しが良いの。じゃがの、察しが良すぎていかん。別にこれはそんなに小難しい話じゃないんじゃ。ただ単に、自分のどうしようも無い所で流派の存亡が決まるなんてかなりスリリングじゃろ?」

 長老がニコリと少年の様な笑みを浮かべた。しかし、その顔に会場に居た全員の背筋が凍る。

((相変わらずイカレてる))

 全員が息を呑んだ時、前田が目の前の机をドン! と強く叩いた。

「くだらねえ……まどろっこしいんだよ。ジジイ。俺は俺の最強を示せればそれで良いんだよ。弟子の育成にも興味はねえ!」

「ほ。ほ。ほ。青い、青いの~前田君。じゃがの、もし不満が有るならの」

 長老は挑発する様に前田に向って顎をしゃくった。

「四の五の言わずにかかって来いや」

「上等だ! ジジイ!」

 前田が机に乗りながら長老に向って走る。

「ほ、ほ~。わし、わしじゃよ。わし」

 その時だった。前田の目の前に唐突に腰の曲がった老人が現れた。それは最初に長老の意見に同意の手を挙げた老人だった。

「亀田のジジイ! 邪魔するならてめえから潰す!」

 前田は目の前に現れたヨボヨボの老人を怒鳴りつけると容赦の無い右ストレートを放つ。

「ほ。わ、わし今日の朝飯食べたっけ?」

 だがそれを亀田は余所見をしながらかわした。

「食べたよ。三杯しっかりと」

 それに長老が答える。

「そうか……」

 亀田は頷くと延びきった前田の手を取り軽く捻った。

「ぐぁあ!」

 すると前田は小さく悲鳴をあげる。そして自分でも制御出来ないかの様に机に頭から飛び込んだ。

『バカン!』

 大きな音と共に前田の頭が机に突き刺さった。それっきり前田は動かなくなる。

「さすが……伝説の忍、月隠流の亀田殿。技に一切の曇り無し」

 会議室が亀田の技にうっとりする様に溜息を吐いた。

「久我ちゃん。わ、わし……賛成。酸性。アルカリ性」

「ほっ! さすが亀ちゃん。分かっておるわい」

 それを聞いた長老、久我拾名くがじゅうめいが楽しそうに拍手した。

 するとそれに続くように会議室が拍手の渦に包まれる。全員の意見が一致した瞬間だった。

「して、長老。その決戦の場は?」

 スーツの男、佐伯が眼鏡を外して尋ねる。すると久我が深い笑みを浮かべた。

「決戦の場はわしが作る。決戦の期間もその時、自ずと分かるじゃろう。では皆の者。詳細はおって連絡する。これにて第百回武術双銘会は終了じゃ。解散!」

 こうして武術の統一という途方の無い計画が唐突に動き出したのだった……


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