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私の通っている高校は、自宅から自転車で四十分ほどかかる。電車に乗れば、かかる時間は短縮できる。
がしかし、高校自体が駅から離れているため、自宅から最寄りの駅まで自転車、電車、学校の最寄の駅、バス、と乗り継ぐことは、お金もかかり、また、自転車のみで通うよりも労力を要するのだ。
この行き帰りも含め、毎日毎日同じことを繰り返していた私に、“いつもと同じでないこと”が降りかかったのが、私の十七歳の誕生日の前日、九月のまだまだ暑い日だった。
この日は土曜日で。
どうして帰宅部の私が、土曜日なんて休日に、学校なんてところに行こうとしていたかというと。
数学の週末課題を机の中に入れたままにしていたのだ。さあやるぞ、と鞄をあさったが見つからず。
そういえば、そもそも昨日、鞄の中に入れていないことに気づいたのだ。
今までも、そして今も、勉強は苦痛ではない、むしろ割と好きに分類されるんじゃないかと思う、真面目な私には。
提出しない、という選択肢や、月曜日に誰か仲の良い子に見せてもらい写す、という選択肢は存在しないのだ。
そして、誰かに見せてもらう、の、“誰か”もまた、存在しない。
というわけで、四十分もかかる学校への道を、汗をたれながし、制服に染み込ませながら、今日の予定をたてなおしていた。
“車”は、心が乱れている時に運転してはいけない。
“車”。
日本の道路交通法では、これは、自動車だけでなく、荷車や鉄道車両やら、そしてもちろん、自転車も含んでいる。
そうそう起こるものではないはずなのだけれど。
まだまだ暑いこんな日に、予定外の外出の原因となった、課題を机の中に入れっぱなしにしていた、昨日の私を恨み。太陽を恨み。蝉の声をうるさがり。喉も渇き始め。帰宅してからのことを考えていた私は。
細い道から、勢いを落とさぬまま、こちらへとやってくるトラックに気づくのに遅れた。
気づけば、トラックは目の前で。
慌ててむこうもこちらも、急ブレーキをかけ、ハンドルをきったものの。
あぁ。当たるな。
覚悟をして。
ギュッと。
目を。
つむって。
かたく。
くる。