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歩きながら、小林さんは私に話しかける。
まりちゃん。これから行くとこはなぁ。うちの部屋やから、さっきみたいにきらんきらんちゃうでぇ。もしうちの部屋の予想とちゃうかったらざんねぇん!意外やろ?意外じゃないかな?んー、んでぇ、落ち着く感じ!うちはめっちゃ気に入ってんねん!まりちゃんも気に入ってくれるとええなぁ。なんつって!あはは!
うん、小林さんのセンスいいから今から楽しみだよ。
なぁ、その小林さんやめん?前みたいにりんちゃんゆうてぇな。なんか距離感じてさみしいわぁ、うち。な?ゆぅてん?り、ん。ほぃっ!
う。んん。り、りん、ちゃん。
そうそう!次からそれな!よろしゅう!
んでぇ、後でちゃんと説明するけども取り敢えず今簡単に教えるとやなぁ。今まりちゃんを運んどるその嫌味ぃーな感じの男はぁ、シメオンって言う名前でなぁ。シメオン。シメオン。なんか、よぉシオメンって間違えてまうねんよな。シオメン。塩メン。塩麺。なんかラーメン屋のメニューにありそうやと思わん?
しまった、それた!まぁ、ラーメンはおいといて。そいつの役職はやなぁ。神官の中の。あ、神官ってわかる?神様のあれな。あれあれ。で、その神様のアレの神官の、えー、んー、あー、そう!いっちゃん偉い人やねん!やからそんなに偉そうなんよ!しゃぁないといやぁ、しゃぁないんやけどなぁ。怖かったよなぁ。ちゃんとゆぅといたからな!
小林さん改めりんちゃんに名前を呼ばれたのがわかったのだろう、私を前を向きながら静かに運んでいた男が私をちらりと見る。
青というか紫というか、冷たい色の目。
髪は服の色と同じ白、いや、違う。銀だ。
廊下の大きな、ステンドグラスみたいな窓から入る光を浴びて。きら、きら。
なぜだかわからないけれど心臓がぎゅっとなる。
あ、そこの部屋は客室その三!これまためっちゃ広ぉい!けど、きらんきらんじゃなくて、なんというか、こう、重い感じの部屋やねん!ソファがすんごい部屋!庶民には座れないソファ!汚して弁償とか言われたらやばい!
りんちゃんの声でふわり。
りんちゃんの関西弁は頭にしみる。
嫌な意味ではなくて、良い意味で。
沁みる。心に。