act1 霧原新 01
筆者の初投稿作品です!
まだ良くわかっていないところもありますので、温かい目で見てやってください!
コメントして下さると嬉しいです!
◆
ある日、とあるカミサマは退屈していました。カミサマは悪戯好きだったので、その退屈が耐えられませんでした。
_ああ、この退屈はいつまで続くのだろうか。
カミサマはなんとかしてこの退屈を潰そうと、ありとあらゆる手立てを考えました。
そのとき、カミサマは閃きました。
_そうだ!ニンゲンにこの世界を変えさせてやろう!
カミサマは、とある一人の......
(民族伝記 第一章より)
◆
「俺は...なぜこの世界に嫌われてるんだろうな」
思わず出てきた独り言。少年_霧原新は、ビルの屋上で考えた。
「答えなんて、出るわけないよな...」
今までは遠かったフェンスの向こう側も、今ではすぐ目の前に。
(もう、この世界を終わりにするんだ...)
それは、確固たる意思。フェンスに手をかける。あともう少し..
そのときだった
「ねーねー!そこで何やってるの~?」
(人!?まずい...叱られる...)
不意にかけられた声に、新は周囲を見渡す。
しかし、
(...気のせい...だったのか?)
あたりには人どころか、ゴミ1つ落ちていない。
「そうだよな...こんなとこに人なんて来るわけ...」
「何やってるのさ~!上だよ上!上を見てごらん!」
相変わらず聞こえる声に、新は恐る恐る上を見上げた
「やっほう!やっと見つけてくれた!で、何やってるの~?」
「......はぁ!!?」
久しぶりに出た大声。
そこには、さかさまに天に立っているかのようにしている、一人の男がいた。
◆
「...いいかげんに、ボクの質問に答えてくれる~?キミはいったい何してたのさ~?」
夏と言えども夜には冷たい屋上の床に耐えかねたのか、しばらくの沈黙を破って、男は尋ねた。
(てめぇこそ誰だてめぇこそ何してる邪魔だ消えろ)
うっかりすると思わず出てきそうになる言葉を飲み込んで、新は答える。
「...見たらわかるだろ...自殺だよ。生憎、未遂で終わっちまうだろうがな」
「自殺かい!それは危なかった!いや~、思いとどまってくれて良かったよ~」
(お前が邪魔だったからだよ!!)
心の中で罵る。
「で、お前はいったい何もんだ?」
新は、天に立つ、という常人には不可能なことをしていた男に尋ねる。
「ボクかい?確かに気になっちゃうよね~!!やっぱり、なんだかんだ言って...」
「早く教えろ」
うだうだと話し出す男に新は睨みつける。
「ハイハイ分かった分かった、それじゃちゃちゃっと説明するね~!」
そう言うと、男は立ち上がる。
「ボクはね...聞いて驚かないでよ...なんと!なんとなんと!!神さまなんです!!」
数十秒の沈黙。
「あれ?おかしいな?もっと反応があると思ったんだけど...ねぇねぇ、驚かないの?あ、もしかして聞き間違い?あー、よくあるんだよね~。最近ボクも...」
「まぁ、そんな事だろうとは思ってたよ。」
神さまと言った男に、新はさも当たり前のように答えた。
「あんな風に現れるなんて、まず人間じゃないね」
「むー、やたらと理解が早い~面白くな~い」
不満げに答える神。
「でもまあ、それだけ理解力があるなら、今から頼むことも理解してもらえるかな~」
そう言うとおもむろに向き直る神。
「な、なんだよ...俺に何の用なんだ?」
「それを言う前に、ちょっとキミに聞きたいことがあるの~」
「...なんだ?」
「キミはなんで自殺しようとしたの~?」
「...五年前に両親が蒸発、幸い親友の家に引き取って貰ったが、その親友も先月いなくなった。その親にも、俺は疫病神だと追い払われた。バイトで金を貯めてアパートを借りたが、もうこの世界には疲れたんだ」
「それで、キミはこの世界からいなくなろうとしたの?」
「ああ、俺なんていなくてもこの世界は回る」
「キミがいなくなったら、キミはどうなるの?」
「さぁな。俺は宗教なんて信じてねぇからな。どうなろうと知ったこっちゃない」
「死後の世界があるとしたら、キミはどんな暮らしをする?」
「...そうだな、少なくとも、今よりマシな生活がしたい」
「よし!キミならオッケーだ!それじゃあ、キミに頼むことにするよ~!」
そう言うと神は、まるでショーをする手品師のように手を広げた。
「なんだ?俺に頼みとは」
「キミにね、この世界をやり直してもらいたいの!」
「はぁ?世界をやり直す。だと?アホらしい、どういう事だよ」
予想もしていなかった頼み事の内容に、怪訝そうに答える新。
「言葉の如く、だよ~。文字通り、キミにもう一度違う世界を過ごしてもらいたいの!」
「...違う世界か...そんなこと出来るのか?」
「もちろん!あんまりボクを舐めないでよね~、ある程度なら、世界をキミの望むようにも変えれるよ~!」
そこまで言うと、神さまは楽しそうに新に尋ねた。
「という訳で!キミはどんな世界で、どんな暮らしを望むの~?」
「はぁ!?ちょっと待てよ!俺は強制的にやり直さなきゃいけねえのか!?」
急な話の展開に待ったをかける新。
「うん!そうだよ~!キミにはぜひともやり直してもらいたいの!
」
「待てよ!あくまで頼み事だから、断ることもできるんだよな?」
新の質問に、神さまはキョトンとした表情を見せる。
「そりゃあ、断ることもできるけど...キミ断るの?」
「ん、まぁ、それは...」
言葉に詰まる新に、畳み掛ける神さま。
「ボクは別に断ってもいいけど、そうしてキミはどうするのさ?また自殺するのかい?それだったら世界をやり直す方がよっぽど良いと思うよ~?」
「ん...まぁ、そうだな...」
半ば押され気味の新の回答に満足した神さまは、嬉しそうに質問する。
「それじゃもっかい聞くね~!キミはどんな世界で暮らしたい?」
「どんな世界...か...」
考え込む新。
(冷静に考えると、世界やり直すなんて、そんなの無理だよな...でもまあ、ここまで言われると信用出来るかな...)
「...それじゃ、せめて親友が生存してる世界がいい」
「オッケーオッケー!親友だね!あっ、そうだ...」
そこまで言うと、神さまは真剣な口調で言い始めた。
「先に言っておくけど、ぜーんぶキミの思い通りって世界は作れないよ?」
新の表情をのぞき込む神さま。
「ああ、それでも構わないさ。第一...」
(もともと俺は死ぬ予定だったんだからな...)
新が大して否定的な感情を持ってないことを確認した神さまは、
「よし!それじゃ契約成立だね!早速キミの望む世界に行こうか!」
と、トントン拍子で進めようとする。
「おいおい待てよ...まだ大して説明受けてねぇぞ、ちったあ落ち着いて...」
「あっそうだ!キミの名前なんて言うの?」
(落ち着いて人の話を聞け!!)
新は、多少自分勝手な神さまに心の中で反発した。
「...ハァ...俺は霧原新だ。」
「むー!なに~そのため息~?まぁいいや!新クンだね!よろしく~。ボクのことは神さまって呼んでもらえばいいよ~。それじゃ早速...」
「だから!!説明しろって!俺はどうしたらいいんだよ!!」
またもや進めようとする神さまに、新は思わず怒鳴りつける。
「あれっ?説明してなかった?うーん...それじゃやり方説明するね~!」
(最初からそうしろよ...)
呆れる新。神さまはそんな新の感情など気にせず、説明を始める。
「まず、世界の設定だけど、これはさっき新クンから聞いたからオッケー!次に、世界に行く方法だけど、とっても簡単!ただこのビルから飛び降りるだけ!」
「...おい待てよ、飛び降りるって、それ以外に方法はねぇのか?」
ありえない方法に、疑念を持つ新。
「うん!無いんだ~!非効率的だよね~」
嘘である。
「とりあえず、新クンは飛び降りるだけ!あとはボクが連れてくからさ!」
「わかったよ...それじゃ、世界に行くとするか...」
(第一、これ以上コイツと話してたらイライラしてくる...)
そう言うと、新は立ち上がり、フェンスに手を掛け上り始める。
「さっきも思ったんだけど~、新クンって運動神経いい方なの?」
「うるさい、黙って連れてけ」
「ハイハイ、まったく~少しぐらい会話を楽しんだっていいじゃん。ねぇ、新クンってさ~、案外モテ...」
「黙れ」
口うるさい神さまに怒鳴りつける。
フェンスの向こう側はすぐ目の前に。ただ、少年の意思は変わっていた。
(新しい世界か...どんなんだろうな...)
新は、ビルのフェンスの上から下を見る。
(少なくとも、今よりマシな世界ならいいが...)
少年は、ビルから飛び降りた。
(いまさらだが、騙してんじゃないだろうな...)
短いようで長い下降時間の中、新は思考を巡らせる。
(まぁいい、どうせ死ぬつもりだったんだからな)
新は、明るい街灯をさえぎるように、世界にお別れを言うように..
目を閉じた。
◆
ある夜、とある街で、UFO騒ぎが起こった。
目撃者曰く、UFOは、ビルのあたりから現れ、地面に落ちて来ると思ったら、強い光と共に消えていた、とのことだ。
本当にUFOだったのか、というような討論も起きて、街は一昼夜大騒ぎだった。
ただ、そんなUFO騒ぎが大き過ぎたのか、一人の少年が行方不明になったことに気づく者はいなかった。
◆
カミサマは、暇つぶしをしてくれる一人のニンゲンに出会うことが出来ました。そのニンゲンも、カミサマの頼みごとを快く受けました。
_よし、これでしばらくは退屈しなくてすむ!
カミサマはとても喜びました。
一人のニンゲンは、そんなカミサマの思いを知る由もありませんでしたが、ニンゲン自身も、カミサマの頼みごとがとても嬉しかったのです。
カミサマと一人のニンゲン。お互いにとって、その頼みごとは得しかありませんでした。
こうして、カミサマと一人のニンゲンは、世界をやり直しはじめました。
(民族伝記 第一章)