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社会見学な夜会の始まりです。

 紺青色のマーメイドドレスを身に纏い、王城で開かれる夜会が始まった。


 ルカの綺麗な容姿は目を引いてしまう。

 それは何処にいても共通なようで、夜会が開かれるホールへ入ると、すぐに財政に大きく関わっているデイビッド侯爵が声を掛けてきた。


「やあやあ、ルカ君。本日は実に麗しい花を連れているんだね」

「これは、デイビッド侯爵様。はい、私の愛しい人です」


 腰を抱き寄せられ、頬が桃色に染まるのが分かった。しかし、ここは夜会。しかも、私はジャーマニーの婚約者だった者である。

 当然のことながら、デイビッド侯爵は卑下の瞳で満ちていた。


「アリシア、自己紹介を」


 もう無知な私ではない。隣にはルカだって居てくれている。

 私はピンと背筋を伸ばしてドレスの裾を掴むと浅くお辞儀をした。


「はい。デイビッド侯爵様、ご機嫌麗しゅうございます。この度ルカの妻となりました。アリシア・カーレンでございます。デイビッド侯爵様の嫡男であられるギール様のお噂は予々耳に入ってきます。デイビッド侯爵様の執務に敏腕な才を受け継いでいるそうで、とても素晴らしい方だと」


 デイビッド侯爵様は一瞬目を丸くして、気を許したのか瞳が若干柔らかくなったように感じた。


「アリシア殿は物静かで財政に興味などない御令嬢だと思っていたが」

「…デイビッド侯爵様。アリシアは裁縫よりも商才があり、私よりも財政に興味がありますよ」


 どういう意味だルカ。女性らしくないとでも言いたげなルカをジト目で睨みつけると、デイビッド侯爵様は愉快そうに笑った。


「成る程、アリシア殿は活き活きとした瞳をするようになったのだね。後で息子のギールを連れて来よう。アリシア殿と話が合うはずだ」

「折角ですがデイビッド侯爵様…」


 断りを入れようとしたルカの言葉を遮って、私は身を乗り出し了承した。



「アリシア?」


 綺麗な顔がにっこりと微笑んで、私を睨みつけてくるルカに圧倒こそされるが、私はルカの隣に立派に立てれるように第一王子の側近をしているギール様と話がしたいのだ。


「こんな機会滅多にないもの、ルカは私が無知なままでも良いって言うの?」

「私は君が隣に居てくれればそれで満足なんだけどなぁ」

「そんなの私が許せないわ!」


 押し問答の末、私が勝利した。


「アリシアは強情なんだから、良いかい?絶対に話をするだけだからね、バルコニーや庭園に行こうと言われても断るんだよ」

「言われなくてもわかってるわよ!」


 信用が足りないのか、頭を撫でられて名残惜しそうに別のところへ行ってしまったルカ。どうやら私に会わせたくない人と会うらしいのだ。



「仲睦まじいことですね」


 一連の流れを見られていたのか、短い銀髪にグレーのタキシード姿でデイビッド侯爵様の隣に佇むギール様がいた。

 ルカと同じくらいの長身でストイックさがあり、私はすぐに身なりを整える。


「失礼いたしました…。アリシア・カーレンでございます」

「ギール・デイビッドです。アリシア殿は父君から話を伺ったが、財政に興味がおありなようで」

「はい、ギール様は政治にも関与しており考え方が他の皆様とは違うそうですね。財政を黒字にまでして、整備の行き届いていない箇所へと割り振る様は到底真似できるものではございません。」


「…私は以前アリシア殿を夜会で拝見したが、どうやらこっちが素らしいな。アリシア殿こそ良く考えている。失礼だがジャーマニー侯の商才は貴女のものかな、ルカ殿との結婚おめでとう」


 ギール様は良く見ているのだと驚いた。

 商才と褒められる程ではないが、あの頃静かに頑張っていたことを見てもらえて嬉しい。


「ありがとう、ございます」


 微笑みながら長身のギール様を見上げると、不自然にそっぽを向かれた。

 何かマナーに反していただろうか、少しの不安が頭をよぎるが特に目立つ間違いはしていないと思う。


 思うのだが…冷静に考えたせいか周りをよく見ることが出来た。


 今、目の前で話しているのはこの若さで第一王子の側近になっている長身でストイックなオーラが滲み出たギール・デイビッド様だ。御令嬢様方の綺麗な瞳がギランギラン睨んでいる。

 慌てて一歩距離を置くと、一歩詰められた。



「どうして離れる?」


 チラリと見る横顔に並行してチラリと御令嬢を見やると、臨戦態勢のようだ。


「い、いえ。深い意味はないのですが…」


 変なことを口走っても御令嬢に抹殺、かと言って離れるともっと距離を詰められる。

 どうすれば良いのか、このようなシチュエーションのマナーは習ったことがない。寧ろ、正解はあるのか。


「なら離れる意味もないだろう」


 空気を読んでくれ頼むから!!

 そんな思いを胸に秘めた瞬間、真っ白な髪を靡かせて腰に長剣を刺した男性が、ギール様の肩を叩いた。


「やめてやれ、怯えているだろ?」


 辺りは真っ黄色な歓声に溢れ、途端にギール様は身なりを整えて低頭する姿に、私は唖然とした。


 この白い人は誰なのか。

 あと、背後のルカが少し怖い。




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