表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

甘々すぎて溶けちゃいます。

 ドレスは屋敷に送り届けてくれるらしく、ルカと沢山の物を見て回った。

 香水や化粧品、可愛い小物やぬいぐるみまで、男性の方は普通飽きると思っていたけれどルカの方が楽しそうに私を案内してくれる。


「ほらアリシア、こんな物まであるよ」


 ドラゴンの被り物を付けて見せるあたり、やっぱり変な人だけど、通りがかる女性はみんなルカに惚けた瞳を向けていてドラゴンの隙間から覗く綺麗な顔立ちに、私も見惚れた。


「色違いもあるよアリシア!」


 本当に黙っていたら絵画から抜け出たみたいに綺麗な人なのに、無邪気な子どもみたいに手を招くから一緒にドラゴンの被り物を付けてみる。無論、購入だけは何とか阻止した。

 他にもルカは、私が手を取る物を全て買おうとする。ほとんど断ったが、寝室での枕やシーツを決めるのは少し恥ずかしかった。


 あっという間に夕方になると、歩いていたこともあり小腹がすくものである。


「甘いものは好き?」

「はい!」


 夕日に馴染む黒髪がサラサラと風に乗って、ルカは私の手を引いて可愛いらしいカフェへと案内してくれた。

 カフェは赤煉瓦(レンガ)で出来ていて、トーストの香ばしい香りと甘い香りが仄かに鼻腔を擽る。

 窓際の席に腰を落ち着かせて、メニューを開くとどれも美味しそうだ。


「悩みます……」

「何で悩んでるんだい?」

「ベリータルトと、ショートケーキです」

「ならショートケーキは私が頼むよ」


 ふんわりと黄色の瞳が垂れて、早々に注文を済まされた。

 出てきたベリータルトとショートケーキに美味しそうだよ、と言うルカに無理させてないかな?と心配になってしまうが杞憂だったようだ。


「ほら」


 フォークに刺さった生クリームとイチゴ付きのスポンジが口の中で溶けて、嬉しそうなルカの笑顔に照れくさくなる。


「ベリータルトも欲しいな」


 食べさせあいっこをして、夫婦というのはこんなにも甘い関係なのかと思い、いやルカが特別なのだろうと思った。

 ルカは躊躇なく私の口に入れたフォークで美味しそうにショートケーキを食べていて、ドキドキしている私が負けたみたいな気持ちになり、思い切ってルカが口に入れたフォークでベリータルトを食べる。

 最初こそ味が分からなかったけれど、段々落ち着いてきて、サクサクした食感に甘く酸味があるベリータルトは私をすぐに虜にしてくれた。


「たくさん食べていいんだよ?」


 太らせる気満々のルカに、自分を鬼にして二個目は断り帰ることになった。


 もう手を繋ぐことに違和感がない。

 むしろ安心感の方が勝っているくらいで、凄い人だなあ……と感じてしまう。


 屋敷に着くと、もう既に荷物は届けられていて使用人がテキパキと設置してくれていた。

 先程タルトを食べたので、まだお腹は空いていない。ルカも一緒のようで、遊び場のような部屋に案内された。

 そこはビリヤード台や、ダーツ、トランプもあって、ビリヤードやダーツはしたことがなかった。


「トランプをしようか」


 単純なババ抜きで一人掛けのソファにお互い座り、テーブルを挟んでのゲームを始める。




「ほらほら、どれを取るの?」


 かれこれ三回目なのだが、私は二回とも負けている。今も口角を上げてニヤニヤしているルカは五枚中一枚が誘い出すように飛び出ていた。


「これだ!」


 二回ともその誘いに乗り失敗した。もう騙されるか!という意気込みで他のカードを取ると、どうしてジョーカーなのか。


「焦ったときって、飛び出てるカードを避けようとして一つ飛ばした聞き手側のカードを取ってしまうらしいよ」


 クスクスと笑うルカに、私はカードをシャッフルしてムッとする。


「意地悪だわ、勝たせてくれてもいいじゃない」


 言葉も砕けてきて、ルカは楽しそうにジョーカーではないカードを選ぶ。


「勝負は全力でしなくてはね」

「それはそうだけど…」


 かと言って一回も勝てないのは悔しい。結局三回目も負けてしまうし、食事は出来たしで、ルカには勝ち逃げされてしまった。


「次は私が勝つわ!」

「それは楽しみだね」


 余裕顔のルカを横目で見ながら、昼食同様に美味しい夕食はすぐに空になって、使用人の一人にお風呂へと連れられる。



「アリシア様はスベスベの肌ですわねっ」


 いくら断っても今日だけですわっ。と言って柑橘系の香りの石鹸で隅々…本当に隅々洗われてしまい、逆上せていないのに顔は真っ赤になった。

 同じ香りのオイルもあるのか!と感心しながら、さっぱりしたところで現状を把握する。


「では、行ってらっしゃいませっ」

「待って待って置いていかないで!お願いリナちゃん!」


 何とも仲良くなる切っ掛けというものは突然で、栗色のショートボブがぴょこんぴょこんしている可愛いリナちゃんは、Vサインで私を寝室へと送り出す。


 旦那様とはいえ男性の部屋に、まさか寝室へ入るなんて初めてなのだ。

 心拍数がヒートショックしそうなのだ。


 黒い扉を前にして、意を決して手を伸ばす。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ