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小説っぽい表現について考える(1)

 プロアマ問わず――というのが、半ば本エッセイの決まり文句のようになっていますが、今回は比較的アマチュア小説に多いと思われる傾向について取り上げたいと思います。

 まずは、こちらの表をご覧ください。


挿絵(By みてみん)


 こちらは、青空文庫で公開されている著作権切れの小説(*1)作品の電子データをもとに、パソコンソフトの検索機能を利用して、作中で使用されている文章表現を調査し、まとめたものです。作品の選定については、誰もが知っているだろう有名作家の有名作品で、文字数がそこそこありそうなものをという観点から適当に行いました。


 表の内容についての解説は、敢えて後回しにしますが、皆さんはこれを御覧になって何か思うところがございますか? 

 筆者としては、少なからず、この結果を意外と思われる方がいらっしゃるのではないかと期待しています。


 さて、筆者がこの表を作成した意図についてですが、その説明をするのにまず問題となるのが、表の左側に挙げた5つの文章表現(唇の端を歪める、ため息をつく、眉間にしわを寄せる、目を見開く、瞳を輝かせる)でしょう。筆者はこれらを「小説っぽい」表現と呼んでいます。


 これらの表現は、いずれも日本語の表現として何ら問題ありません。また、特に難解な表現というわけでもなく、義務教育レベルの国語力があれば、意味も全て理解できるものと思われます。


 加えて、これら5つの表現には「奇妙な」共通点があります。その共通点とは、アマチュア小説によく見られる表現だということです。今回は、著作権その他のトラブルを避けるため、比較対象として表には挙げてはいませんが、試しに「なろう」で公開されている小説作品の幾つかを、同様の手法で調査したところ、これら5つの表現が複数(*2)回使用されていることが認められました。


 ここで表の方に戻りますが、数字を見てわかるとおり、誰もが知っている有名作家の作品には、これらの表現はほとんど使用されていません。もちろん、たったこれだけの調査でプロとアマの違いだと結論付けることは出来ないでしょう。筆者の言っていることは、現時点では、ただの仮説に過ぎません。ある(*3)いは、それはプロアマではなく、時代の違いだと仮説立てることだって可能です。


 ただ一つだけ言えることがあるとすれば、これらの表現を使わなくても、優れた小説作品を書くことは可能だということです。もちろん、使ってはいけないということもないのですが、筆者(*4)自身はあまり積極的に使おうという気になりません。


 次回は、その理由について考えていきたいと思います。

(*1)

『風の又三郎』(宮沢賢治)、『坊っちゃん』(夏目漱石)、『人間失格』(太宰治)、『舞姫』(森鴎外)、順不同


(*2)

2、3回どころではない。場合によっては二桁に達することもある。


(*3)

ただし、あくまでも筆者の読書経験に照らして言えば、現代でも、プロの作品でこれらの表現を見かけることは少ない。もっともプロもピンキリではあるが……


(*4)

並べるのも恥ずかしいので表には記載しなかったが、拙作『深淵カルナバル』のデータを記すと、文字数約80,000字、上から0、4、1、1、0となる。

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