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読者とは何者か(1)

今回は注釈短めです。

 さて、書き手である皆さんは「自らの小説について、読者目線で考えることが重要である」という意味合いの言葉を、一度は見聞きしたことがあると思います。筆者(*1)もこれまでに幾度となく、そういった考えに触れてきました。


 ところが、多くの方の話を分析してみると、どうやら「読者目線」という言葉の認識、理解には、程度の差があるようです。その差を敢えて二つに大別すると、次のようになると思われます。



1.誰が読んでも、問題なく理解できる日本語で書かれていること。

 すなわち、誤字、脱字、言葉の誤用等がないか。正しい文法、文章作法で書かれているか。複数の意味で解釈可能な曖昧な文章になっていないか。文脈に矛盾が生じていないか、など。



2.流行や売れ筋、時代や社会状況などを反映し、読者が求め、共感できるような物語であること。

 すなわち、作者の独り善がりな文章、話の展開になっていないかどうか、など。



 確かにどちらも「小説」を書くうえで、基本にして大切なことです。筆者もこれらの考え方を否定するつもりはありません。

 しかし、果たしてこれらに「読者目線」という言葉をあてることが妥当かどうかということについては、一考の余地があると思います。


 まず、1と2の考え方を混同している、或いは切り分けができていても同じ「読者目線」という言葉を使用している場合に考えなければならないのは、両者では「読者」の次元が異なるということです。


 具体的に言うと、1では標準的な日本語を習得している人であれば老若男女問わず、加えて日常的に小説を読む読まないということさえ不問にして、文字通り「誰でも」を想定しています。


 一方、2は小説の消費者としての読者――つまり日常的に小説を読み、流行を生み出すグループに属する人たちを念頭においています。しかも、そこからさらにジャンル別、年齢別、男女別などの小単位に分類し、より効率的かつ限定的な「読者層」を想定することになります。


 以上のように、1と2では想定する「読者」が全く異なります。1については「読者」であることさえ問わないのです。にもかかわらず、一緒くたに「読者目線」という言葉でまとめて理解してしまっていては、小説を書き進めるうえで、いつか大きな弊害(*2)をもたらすことになるでしょう。


 筆者としては、1の考え方に基づくのは「読者目線」というよりも「客観的な目線(視点)」という言葉をあてるのが妥当だと考えます。ときどき「読者目線」と「客観的な目線」をイコールで考えている方を見かけますが、これまでの説明から別物だということは、もう(*3)お分かりでしょう。


 それでは、2の考え方に「読者目線」という言葉をあてるのは妥当かどうか――については次回検討してみたいと思います。

(*1)或いは書き手である知人との会話の中で、或いは「小説の書き方講座」の中で。毎度のことだが、プロアマ問わず。


(*2)従って両者を混同して書いている、もしくはその差異についての説明がない「小説の書き方講座」は害悪である。


(*3)一応、補足的に説明しておくと「読者目線」は「客観的な目線」に比べて視野が狭いということである。

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