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殆どの人は、嘘をつくのが下手である(4)

※前回からの続きです

 それでは「小説の嘘っぽさ」に繋がる文法的不備について、例文を交えながら、代表的なものを幾つか説明していこうと思う。なお、学校文法の基礎的な知識(単語、文節、文節の働き、文節と文節の関係、品詞分類など)については説明を省略する。あしからず。



(A)三日前に公園で拾った子犬の飼い主が見つかった。


 さて、まずは上記例文(A)について検討したい。書き手の皆さんには、この例文を読んだ瞬間に違和感を覚えてもらいたいところだが、どうだろうか?

 何となくでも「気持ち悪いな」とか「内容が頭に入ってこない」と感じ取ってもらえたなら話が早い。整理分析のため、手始めにこの例文を文節分けしてみよう。


(A)三日前に\公園で\拾った\子犬の\飼い主が\見つかった。


 いわゆる「学校文法」に従えば、例文(A)は六文節に分けることができる。あえて強調するが、たったの六文節である。にもかかわらず、この文は内容がすんなりと頭に入ってこない。

 既にお気づきの方もいると思うが、この文を「違和感なく読める」という方は、以下のようなことを考えてほしい。


・三日前に子犬を拾ったのか。それとも、三日前に飼い主が見つかったのか。


・公園で子犬を拾ったのか。それとも、公園で飼い主が見つかったのか。


 お分かりいただけるだろうか。上記二点の疑問について組み合わせを考えると、例文(A)は最大で四通りの解釈が成り立ってしまう。正に悪文と言えるだろう。


 このように、作者の意図と読者の解釈とが異なってしまう危険性を孕んだ文は、小説作品において割とよく見られる。しかし、前回取り上げた誤字・脱字などと同様に、決してあってはならないミスだ。

 特に「小説で一番大事なのはストーリーだ」とか「自分の強みは魅力的なキャラクターづくりだ」などと考えている書き手においては、その自らの主張を証明するためにも「正確な文章を書く」という意識を強く持たなければならないだろう。


 話を例文(A)に戻し、予防・解決策について少し触れておこう。


 まず、この問題に対する一般的な解答としては、「複数の文に分ける」「表現(読点を含む)を変える・加える・削る」「文節を入れ替える」などといったことを一つひとつ試したり、あるいはそれらを組み合わせたりするなどして、最適な文章表現を模索することだ。

 中でも「文節を入れ替える」ということについて、より文法的な解説を加えるならば、修飾語は被修飾語の直前に置くのが基本である。例えば(A)の文で試してみると、


(A´)拾った子犬の飼い主が、三日前に公園で見つかった。


 という具合に、「三日前に」「公園で」という各修飾語を「見つかった」という被修飾語の直前に置くことで解釈が絞られる。修飾語・被修飾語の位置関係については、他に詳しく解説しているウェブページ等があるので、そちらも参考にしていただきたい。


 それでは、ここで本エッセイだけの応用問題を一つ。


 例文(A)について、なるべく少ない手順を用い、「三日前に公園で拾った子犬」の「飼い主が見つかった」という解釈のみが成り立つように改めよ。

 上記の解釈が成り立つのであれば、他にどのような設定(時間、場所、行為等)を加えてもよい。ただし、いま問題文で使用した「 」等の記号は使わないこと。


 即答できれば文句なし。是非、御自身の小説のストーリーや設定等を考えるときのような自由な発想で挑戦してみてください。一応、ヒン(※1)トをあとがきに示しておきます。解答、解説は次回の冒頭で。


 例によって、今回はここで一旦切ります。

(*1)なるべく少ない手順でとあるが、ぶっちゃけ一手で解決できる。解答そのものは一つではなく、様々な表現方法があると思われるが、考え方は一つである。

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