鈴木くん達は振り返る。
済みません、最近遅れ気味で、でも!でも!見捨てないで!
龍平の言葉を聞いて、虎鉄は溜息を吐いた。
「それが分かれば、今此処に居ないよ」
「なぁ、そんな事よりあの笑い声怖くね」
「茶化すな、それに分かっていてもどの道俺たちはあの店に入っても入らなくても此処には居ただろ、俺………自首しなきゃいけなかったし」
虎鉄のふざけた態度を注意し、牢獄に入り改めて自分のした事を実感する鈴木、その姿を見て慰めようにも慰められずどうしているか迷っている龍平、この牢獄に連れてこられてからずっと聞こえている笑い声に段々異常に気にしだした様子の朱羽とこの状況なのに以前として団結が出来ない四人。
「まぁ、まず俺たちが此処に来た原因を覚えている奴は誰も居ないのか? 俺は酒をたらふく飲んでから記憶があやふやで頼りにならない」
「なぁ、そんな事よりおっさん何で笑ってんだろ?」
「んー、僕は玄のビールをウォッカとすり替えて遊んでた事ぐらいしか覚えてないけど?」
「あれ! やっぱお前の仕業か! 急に酔いが酷くなったと思ったら!」
「いやいや、幾ら酔ってるからってビールとウォッカの違いも気づけない玄が悪いよ、これは」
鈴木達は気が付けば何時もの話の内容を直ぐに脱線させ、元の話が思い出せなくなる四人組に戻っていた。
そんな感じにダラダラと要らぬ事を喋っていると突然ギーという軋んだ音が響き、闇に支配された独房に一筋の光が射した。
「あのー、門の前であった四人ですよね、すいませんウチの部下の手違いでこんな目に合わせてしまって」
鈴木達は数時間ぶりの光に目を細めながら彼の方をみる。
彼は後ろにあるランプの光を逆光にし神々しく、その姿はまさに闇に手を差し伸べてくれる救世主の様であった。
「「「「………」」」」
「あのー、大丈夫ですか?」
四人がこちらを見つめるだけで言葉を発さない状況に戸惑いつつ門の前であった彼はそう言った。
「取り敢えず自己紹介をしておきます。 私の名前はハルダード・ジェネラル三世、今後ともよろしくお願いします」
((((ジェ、ジェネラル…))))
その名前のインパクトに四人は再び息を呑んだ。
だが四人はその風貌と気品をみて、「将軍の名に恥じぬ男」という印象を受けた。
「え、えーと、俺ーい、いえ、私の名前は斎藤 朱羽と言います」
「俺の名前は東ヶ崎 龍平、よろしく、家は剣道の道場をしていてご先祖が使用していた防具などが家に飾ってある少し奇妙な家に住んでいる」
「僕の名前は孤杉 虎鉄、自称日本の守護神! 又の名を関東の白い悪魔、二つ名を人間の敵って言うんだ、よろしく」
「えーと、俺の名前は鈴木 玄武、好きな食べ物はハンバーグ、ミートボールそしてウィンナー、嫌いな食べ物は肉団子そしてフランクフルト、よろしく」
四人は自己紹介を終え、朱羽は一人だけ真面目にやって馬鹿みたいじゃないか、と思いもう一度自己紹介をする。
「俺の名前は斎藤 朱羽、好きなアニメの類は「女の子がいっぱい出てくるので」え、いや違!「わないです!」ったく、まぁ違わないけど…嫌いな類は「男が登場した時です!」おい! 虎鉄に玄! お前らいい加減にしろよ!」
朱羽が自己紹介をしようとしても虎鉄と鈴木が口を挟み、内容が一変する。
「え、えーと、そちらの黒髪の方が玄武さん、ハンバーグなどが好きなんですね! そちらの青い髪の方が龍平さん、珍しい家に住んでいると。 そちらの黄色い髪の方が虎鉄さん、日本の守護神と。 そちらの赤髪の方が朱羽さん、まぁ人の趣味についてあれこれ言及はしませんが犯罪はしない様に…以上でよろしいですか?」
「いや、全然よろしくないです! 違いますから、俺そういう危ない趣味じゃありませんから!」
ハルダードの朱羽に対する認識は、虎鉄達が引っ掻き回したせいでまだ自分の家の外の世界も知らない少女達を性的な眼差しで見つめる変態という名の社会不適合者になってしまった。
「では、そろそろ貴方達も気になっていると思いますが、この世界の事についてお話をする為に上へ参ります」
「待ってください! 誤解です、俺は別に!」
「そうですよ! ハルダードさんは誤解をしています!」
「朱羽は小さい子だけではなく、生後6ヶ月からおおよそ80歳までは行けるオールラウンダーなんですから!」
「………衛兵、朱羽さん達の枷を………外してあげろ…」
ハルダードが悩みつつそう言うと、衛兵四人が鈴木達の枷を外した。
朱羽が何かを叫んだが、その声は枷を外すカチャカチャという音が周りに反響して届かなかった。
「もう、いい加減に諦めろ朱羽………」
龍平が朱羽にそう言うと静かに溜息を吐き、四人は立ち上がった。
「では、上に着替えが用意されているので」
ハルダードがそう言うと四人は牢獄から階段上がり絨毯のある部屋に着いた。
「では、こちらが着替えになります」
ハルダードがそう言い、衛兵たちが持ってきた物は白いTシャツと黒いズボンだった。
鈴木達はそれを見て、バーのおじさんが話していた勇者の知識が如何にこの国に反映しているのかを改めて思い知らされた。
「あのー、俺たちはこれから何処に連れて行かれるんでしょうか?」
鈴木がハルダードにそう聞くと彼はこう答えた。
「詳しい内容は私の口からは説明できませんが、この国の事、貴方達のが何故呼ばれたのか、貴方達は何をする為に呼ばれたのかを王自らお伝えなさるようです」
その言葉を聞き、鈴木達は先程の牢獄での朱羽の妄言はあながち間違っていないという事に気付き、ネット環境が壊滅的な龍平以外の三人は何となくこれから起こりうる事を何となくだが予想した。
「では、お着替えを済ませて下さい」
ハルダードがそう言うと衛兵たち何人かが、鈴木達の周りを囲んで円を作られ、鈴木は思った。
(せめて、もうちょっとマシな感じで隠して欲しかったんだけどなぁー、てか何か小学校の時に俺も、友達が着替え遅れた時こうやって隠してやったっけ)
鈴木はそんな事を思いつつも、着替え終わった。
四人はお互いの格好を見つめ、高校時代を思い出した。
あの頃は、良かったとは誰一人思わず、あの頃は辛かったと四人は思った。
毎日の様に学校へ行き、方や女子達に絡まれ方や絡んでも絡めずにいた日々、四人はこう思う。
(何故こうなった)と。
最近思うんですよ、コーヒー牛乳とバニラアイス混ぜるとおいしいって