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オレは異世界に転生して必死でのし上がる  作者: 国後要
アシュリーナ皇国を基点にした冒険から
58/62

幽霊なんて怖くない。だって斬れるからな

 目が覚めるとオレは起き上がり、思いっ切り背伸びをする。

 寝ている間に凝り固まった体がほぐれ、関節がパキパキ言う。

 

「ふわぁ……ああ、くあ……ふぅ」

 

 そして脱力し、ベッドに倒れ込む。よく寝たが、もうちょい寝たい。あと五分だけ寝ようかな……。

 

「うぅー……」

 

 ごろりと寝返りを打って、ベッドから落ちる。

 当然、床に叩き付けられる。あんま痛くないな。

 

「あ~……」

 

 まぁ、目は覚めたから、起きるか。

 そう思って立ち上がると、ベッドの上に数枚の硬貨が散らばっている事に気付く。

 

「そういえば、胸ポケットに入れっぱなしだったな」

 

 ベッドの上に散らばっていた硬貨は鎧の内側に仕舞ったカナマンチウム貨幣だ。

 この場合、鎧の内側というのは鎧の下に着ていた服のポケットだ。本当ならギャンベゾンって言うクロースアーマーを着るんだが、モンスター相手じゃ意味が無いので着てない。

 でだが、どうやらカナマンチウム貨幣をポケットに入れたまま寝たのでベッドの上に散らばってしまったらしい。

 

「危ない危ない」

 

 シーツを引っぺがして他に落ちていないかを確認しつつ硬貨を拾い上げ、ちゃんとポケットにしまう。

 そういえば、ポケットに入れたままだったから換金も鑑定もしてねえや。探索に出る前に換金しに行くか。

 

「さて、と……」

 

 着ていた服は普段着なので、着替える必要はない。寝間着なんて持ち歩いて無駄な荷物を増やす必要はないし。

 なので、その格好のまま部屋の外に出る。

 場所は宿屋の二階で、どうやら他の客の殆どはまだ起きていないらしい。

 一応音を立てないように歩いて、宿屋から外に出る。

 

「いい天気だな……」

 

 まだ薄暗いが、空の様子は見える。雲の殆どない快晴だ。

 これなら探索中に雪に降られる心配はなさそうだ。

 まぁ、アシュリーナ皇国は降雪量が少ないので、この晴れは普通なのかもな。

 

「さみぃ。冷えるな」

 

 とは言え、気温は低く、肌寒い。

 見てみれば、すぐ近くの水瓶に氷が張っている。道理で冷えるわけだ。さっさと部屋に戻ろう。

 そういうわけで部屋へと戻るとストレッチをする。

 全身の筋肉をしっかりとほぐし、腱をほぐし、どんな動きをしても怪我をしないようにだ。

 地味だが、重要な事だ。……たぶん。

 

「よっと……リン、背中押してくんねえか」


「ん? うむ、こうか?」


「もっと強くだ」


 既に起きていたリンに柔軟体操を手伝って貰いつつ、柔軟を続ける。

 

「よっ……ほっ、と」

 

 オレの体の柔らかさはだいぶ凄い事になって来ている。

 指を手の甲側に倒せば手の甲にべったりとつき、体を球体のように丸める事すら出来るようになった。

 加えて身長は更に伸びて、たぶんだけど百四十センチを超えていると思う。

 ほんと、色々と異常だよな、この世界。

 

「よしっ、と」

 

 さておき、しっかりと柔軟を終えた頃には体は程よく温まる。柔軟も時間をかければ中々温まるものだ。

 その柔軟を終えて、鎧を着こむ。

 鎧を着こむのには結構時間がかかる。まぁ、十分ほどで終わるから早いと言えば早いんだが。

 そして、それが終わってようやく活動出来る状態になる、というわけだ。

 

「で、リズと玉藻はまだ寝てるのか」


「ああ、相変わらず二人とも寝汚い」


 でまぁ、それが終わってもリズと玉藻は目覚めていない。

 なので起こそうと玉藻に一歩近づくと、すぐさま起き上がる。

 

「む、朝か。おはよう」


「ああ、おはよう」

 

「では、ちと散歩でもしてくる」

 

 この通り、自分では起きないのに起こそうとするとその前に目覚めるのだ。

 野生の勘か何かだろうか。まぁ、起こす手間が省けるから楽と言えば楽ではあるが。

 で、リズだ。

 

「リズ、朝だぞ。起きろ」


 返事は無い。

 

「起きないといたずらするぞー?」


 言いつつ、窓を開ける。

 

「ほーら、ぽーん」

 

 そして、リズをベッドから抱き上げて窓の外に放り投げた。

 すぐに下の方からカエルを踏み潰したような悲鳴が聞こえて来て、リズが窓から入ってくる。

 

「ひどい。顔が潰れたかとおもった」


「大丈夫だ、潰れちゃいねえ」

 

 少しデコが赤くなってるくらいだ。その程度で顔が潰れたりはしない。まぁ、普通なら潰れるが。

 

「とにかく、さっさと準備しな。今日も探索に行くんだからよ」


「ん……わかった」

 

 ようやく着替え始めたリズを尻目に、昨日町の書店で買った地図を見る。

 余り正確なものではないが、それでも地形や建造物などの所在は分かる。金貨二十枚もしたが、中々いい買い物だった。

 

「さて、昨日は運よく遺跡で宝を手に入れられたわけだが、今日はどうする?」

 

 昨日の遺跡をもう一度探索したって仕方ない。である以上、別の場所を探索するしかない。

 だからと言って、適当に探索したってしょうがない。だから最低でも方角は決めたい。

 

「こちらの湖のある地帯はどうだ。水場がある以上、何らかの生物が居るだろう」


「駄目だ。この湖のある地帯は平坦で草原ですらないと書いてある。わざわざここを水飲み場にする動物は居ないだろう。いたとしても渡りをする動物くらいだ。この時期に渡りをする動物は居ない」

 

「ふむ、確かに周囲に草原も何もなければ動物は寄り付かないか……であれば、この湖自体に何か生物が棲んでいる可能性は無いか?」

 

「どうやって水中の相手と戦うんだ」


「息を止めて……とか?」


「窒息しちまうよ。こっちの森林地帯はどうだ? どうやら地下水が豊富そうだ。ここなら何か生きている奴は居るだろう」


「森の密集度合いが問題だな」


「確かにな。長柄の武器を使う関係上、それは重要だ」

 

 ふむ、考え始めると色々と面倒臭いな……そう思って後頭部をガリガリと掻きながら考える。

 

「考えても埒が明きゃしねえ。とりあえず行動してみるってのはどうだ」


「ううむ……それもいいかもしれんが……」

 

 あてずっぽうな動き方ではあるが、動く方向のめどがつかないならそれも間違いではないだろう。

 何処に行くにしろ、未知数な危険は付き纏うんだ。だったらうじうじ考えるよりは行動した方がいい。

 

「動く方向、決めた?」


 準備を終えたのか、リズが話しかけて来た。鎧も身に着けており、既に動ける体勢のようだ。

 

「ああ、勘に任せようとしてたところだ。大丈夫だ、オレの勘は当たるぜ。絶対に宝にぶち当たる」


「ほんと?」


「マジだ。宝にぶち当たるまで行動し続けるからな」

 

 下手な鉄砲数打ちゃ当たると同じ理屈だな。成功するまで続ければいい。

 まぁ、成功する前に死んじまう可能性もあるが……その時は運が無かっただけだ。

 ……オレが運が無かったって言うと洒落にならない気がする。

 

「それってつまり、力技?」


「おい、力技を馬鹿にすんなよ。力と技が組み合わさってんだぞ。つまりは柔剛一体ってことだ。最強だぞ」

 

 かなり無茶苦茶なことを言ってる気もするが、まぁ気にしない。

 いずれにしろ行動しなくてはならないのだから。

 

「なぁ、リン。そうだろ?」


「あ、ああ、そうかもしれんな。思うのだが、屁理屈を言わせればニーナは世界一かもしれん」

 

「屁理屈だろうが何だろうが、押し通しちまえばこっちの勝ちなんだよ」

 

 言いつつ地図を懐に仕舞いこむと、ちょうどよく玉藻が戻ってくる。

 

「戻ったぞ。準備は整ったか?」


「ああ、整った。今から出るぞ」

 

「んむ、では行くか」

 

 そういうわけで出発となるのだが、その前に寄るべき場所がある。

 昨日武器を売り飛ばした武器屋だ。オレの斧の手入れを頼んだので、それを受け取らなくてはならない。

 この時間にやってるかは不安だったが、武器屋の前に辿りつくと既に店は開いていた。どうやら大丈夫なようだ。

 

「よう、オッサン。オレの武器の手入れは終わってるか?」

 

 ずかずかと店に入り込み、ナイフを磨いていた五十路くらいのまさに職人、って風体のオッサンに声をかける。

 

「お前か。終わってるぜ。急ぎだって言うから夜明け前には仕上げてやった。ちょっと待ってな」

 

 簡潔にそれだけ言うとオッサンは店の奥に引っ込み、数分程してから戻ってくる。

 手には布に包まれた斧。オレの斧だろう。

 

「ほらよ。大事に使いやがれ。だいぶ刃が痛んでやがったぞ」


「悪かったね。ゴブリンを数えるのが億劫なくらい刻んだもんだからよ」


 投げつけられた斧をキャッチし、布を解くと綺麗に磨かれ、切れ味を取り戻した斧が顔を出す。

 これなら大丈夫そうだな。特に何か変わってるってこともなさそうだ。

 

「ゴブリンをねえ。そいつぁ豪儀な話だ。で、ガキ、ちょっといいか?」


「よくねえ。あばよ。金ここに置いとくぞ」

 

 そういって斧を背負い、金貨を数枚机の上に放り投げてさっさと店から出る。

 

「オイオイ! そこは話を聞くだけならとか言って聞いてくれる場面だろうがよ! 情けってモンがねえのか! 情けってモンが!」


 しかし、店から出る前に斧を掴まれた。ちっ、このオッサン力強えな。無理に剥がしたら殺しちまいそうだ。

 

「家出してるところだ。晩飯までには帰ってくるってよ」


「カアーッ! こまっしゃくれたガキだな! いいから聞け! いいか! 俺の仕事は鍛冶師で研ぎ師だ! だが二つとも元になるモンがなきゃァ出来ねえ! そういうわけだから、おめえにソイツの入手を頼みてえ! 頼まれてくれるな!」


「つまり、仕事の依頼がしてえ、ってことか?」


「そうだ! わかったか!」


 だったら最初からそう言やいいんだよ。

 

「で、入手して欲しいモンってのは?」


「おう、研ぎ粉とタイタン銀だ!」


「タイタン銀? なんだそりゃ」


「知らねえか。そいつを武器にちょいとコーティングしてやると、酸を浴びてもちょっとやそっとじゃ溶けなくなるんだ! 銀よりも鈍い色でな! だが偉く硬ぇ! だからタイタン銀だ!」

 

 とすると、耐食性が高くて銀白色の金属か。クロム、ニッケル、チタンくらいしか思いつかねえな。

 

「で、鉱山で掘って来いって? バカ言え、自分で買いつけろ」

 

「それが出来たら苦労しねえ! 今はこのあたりの鉱山は閉山しちまってんだ! だから頼んでんだろうが!」

 

「一々声がデケェ」


「鉱山にメタルイーターが大量に湧いちまったんだ! あいつらは炭鉱夫も喰っちまうくらいに悪食で、その殻は偉く硬え! だからお前にそいつらをぶっ倒して、その殻を回収してきて欲しいってわけよ! 奴らの殻は喰った金属で出来るからよ! 殻が手に入ればタイタン銀も手に入るって寸法よ!」

 

 聞いちゃいねえや。

 

「報酬は金貨三百枚と、俺が懇請篭めて鍛えた剣を一本だ! どうだ!」

 

 剣を一本。それは内容次第では魅力的な報酬だな。

 

「で、その剣ってのはどれだ?」


「おう、ここにあるもんならどれ持ってってもいいぜ!」


 そう言われて見渡すと、鉄製の武具類の他に、白い金属で出来た剣や水晶のように透き通った剣など、様々な武器がある。

 

「ちなみに、この白い奴は幾らだ?」


「ホワイトスチールのマシェットか! いいもんに目ぇつけたな! コイツはよ、普通なら剣で斬れねえような敵も斬っちまう事が出来る! 剣士なら一本は持っておくべきだぜ!」


「普通なら斬れねえような敵ってぇと、ゴーストとかか」


「おうよ! ホワイトスチールはそんな奴らも斬れちまうんだ! コイツにするか?」


「で、幾らなんだ?」


「金貨で三千四百ってとこか!」


 高いな。悪くない話だ。単純に考えて金貨三千七百枚の報酬ってことになる。

 探索に行くよりも、この仕事を請けた方がいいかもしれねえな。


「ただし、最低でもコイツ一杯に詰め込んで来なくちゃあ話にならねえ! その時にあの剣をやる!」

 

 心が揺れ動いていると、オッサンが背負い袋を差し出してくる。たくさんのものが入る便利な背負い袋だ。

 これ一杯にとは結構きついな。

 

「ふむ……お前らはどうだ? 受けていいと思うか?」


「ん、私は別にそれでいいと思う」


「そうだな。元からロクな予定も無かったのだし、構わんのではないか?」


「わしはどうでもいい」

 

「……だ、そうだ。受けるよ」

 

 半分以上投げやりな同意が得られたので、オッサンの手から背負い袋を受け取る。

 

「で、炭鉱の場所は何処だ?」


 懐から地図を取り出して広げながら言う


「この辺りだ。途中まで行けば道が出来てるから分かるだろうよ」


「ふむ」


 オッサンの指差した辺りを確認し、指先を軽く斬って血で目印をつける。インク持ってればよかったんだが、持ってねえからな。

 

「あと、鉱山は閉山されてるが入る事自体は出来るからよ。ただ、採掘しちまったら捕まるから気ぃつけな!」


「分かった。んじゃま、行ってくらぁ」

 

 ゲームで言えば、クエストを受諾したって所か? なんてことを考えつつ、オレ達は武器屋を出る。

 そして必要な分の保存食を買い込む。さほど遠い場所でもないので二日分で十分だ。

 それが終わった後は、馬に乗って目的地へ。この馬は購入したものだ。少々高い買い物だったが、それだけの価値はあるはずだ。

 目指すは鉱山。楽に終われば、いいんだがな。

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