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オレは異世界に転生して必死でのし上がる  作者: 国後要
冒険再開からバルティスタ共和国脱走まで
49/62

冒険再開

今回は3000文字と少しで短めです。

時間が無かったのと、キリが良かったのでこんな文字数に。

 翌朝、オレ達は旅支度を整えていた。

 オレとリズは鎧を身に着け、武器もその手に握る。

 リンや玉藻は鎧を身に着けていないが、武器の類はしっかりと携帯している。

 

 リンが鎧を着ない理由は、動きにくいからという中々トンでもない理由だが、玉藻の方はちゃんと理由がある。

 

 鎧を着ていると魔法の動作要素を満たす邪魔になるから、というのがあるらしい。

 実際鎧は関節の可動域を狭めるし、指の動きも鈍らせる。

 ガントレットなんかつけてたら動作要素の殆どを満たせないだろう。

 

 そういうわけで、玉藻は肩出し和服のままだ。……せめて厚手のローブくらい着ればいいのに。

 

「準備は整ったな」

 

「ん、だいじょうぶ」

 

「わしも問題ない」

 

「私もだ」

 

 フランの返事は無い。なぜならフランは同行しないからだ。

 元々フランは巡礼の旅をしているのだ。

 シェンガにはフランが回るための教会……神社がまだ残っている。

 

 オレ達の旅に目的は無いが、巡礼の旅のような、多少は安全が保障された旅ではダメなのだ。

 

 オレは強い敵と戦い、自分を強くするため。リンも同じように武者修行の旅だ。

 リズと玉藻はオレについてくるとのことだから、自然と旅路は別れてしまう。

 

 少しばかり寂しいとは思うが、フランの目的を邪魔するような事は出来ないし、オレ達の目的を曲げる事も出来ない。

 

 だからここでお別れ。そういう事になる。

 だからと言って、二度と会えないと言うわけでもない。

 次会う時まで別れる。ただそれだけのことだ。

 

「よしっ、じゃあ、出発だ」

 

 わざわざ見送りに来てくれたコノハさんと、フランに向き直る。

 

「今まで色々とお世話になりました」

 

「なに、気にするな。オレも中々に楽しかったぞ。機会があればまた来い」

 

「はい、機会があれば。また来ます」

 

「よし」

 

 そういってコノハさんがぐりぐりとオレの頭を乱暴に撫でた。

 そしてリンとリズにも、玉藻にやろうとしたら振り払われたので拳骨をお見舞いしていた。

 

「フラン、次に会う時を楽しみにしてる」


「はいっ。次に会う時は見違えてると思いますよっ! びっくりさせてあげますっ!」


「そりゃこっちのセリフだ」

 

 そういって握手をした。

 再開を約束する握手。その握手はほんの数秒で終わったが、約束は永遠に残る。

 次に会う時まで、この約束は永遠に続くのだ。

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

「いってくる。コノハに、フランも、げんきでね」


「次に帰る時は、更に強くなっております。母上を驚かせて見せるので、楽しみにしていてください」

 

「達者でな。次に会う時まで精々くたばるでないぞ」

 

 それぞれがそれぞれの別れの挨拶を口にして、旅立つ。

 まだ朝日は昇ったばかりだ。

 何処に行くかも決まっていない、当所ない旅だろうが、何処にだって行けそうな気にだってなってくる。

 

 オレの冒険はまた始まった。

 

 

 

 

 

 旅立ってから、二週間。

 

 オレは目が覚めると同時に、光量を絞っていた焚火の火を強くする。

 そして全身を点検する。

 

「はぁ……」

 

 火のついている枝を手に取り、肩口に食いついていた蛭に近づけるとそれが離れる。

 同時にオレから吸っていたのだろう血がぶちまけられる。

 

「洒落にならん……ヘヴィだぜ……」

 

 オレの呟きは密林のざわめきに紛れ、自身の耳にも届くことは無かった。

 

 

 旅立ったオレ達はシェンガとバルティスタ共和国の間にかかっている巨大な橋を渡った後、北へと向かった。

 バルティスタ共和国の北部は殆どが未開拓地域だ。

 シェンガと度々交戦していた為に城塞化した都市は所々にあるが、戦略的な価値が存在しない橋から北側は全く手が付けられていない。

 

 現在に至ってもそれは続いており、主に開拓はルシウス王国と面している南部が盛んだと言う。

 そのため、北部はとてつもない未開の地であり、強大な生物、未知の遺跡などが存在していることが予測される。

 

 そんな風に本から情報を得ていた為に北側に向かったのだが、正直な話、想像以上だった。

 未開の地だからと言って、生態系から何から全てが激変してるなんておかしいだろうに。

 体長四メートルの虎とか、オレを軽々と丸呑みに出来そうな蛇とか……。

 

 まぁ、全部始末して美味しくいただいたけど……ただの野生動物なら負ける気はしないし……。

 

 更に今は冬のはずなのに、気温は軽く三十度はあるだろう。異常な程に蒸し暑い。

 しかも一番ふざけてるのは虫だ。なんで蚊が二十センチ近くあるんだよ。近づいてんのがバレバレだよ。

 

 しかも寝れば蛭が大量に身体に吸い付いてくるし……。

 最初の日は、目が覚めたら数十匹以上の蛭に吸い付かれてて、危うくこの世からオサラバするところだった。

 

 まさか、大型動物よりも蛭の方が恐ろしいとは思いもしなかった。

 あと、ゴキブリ。手の平くらいのゴキブリが大群で押し寄せて来た事もあった。

 あの時は血の気が引いたよ……玉藻が【ファイアボール/火球】で焼き払ってくれなかったら、どんな目にあっていたやら……。

 

 正直な話、こんなところさっさと引き返したいのだが……。

 困った事に方角が分からない。方位磁石は当然持ってるんだが、何かしらの力で方位の把握を阻害されているらしく、方角が分からないのだ。

 来た道を戻って見ると言う行為も更に迷うだけで殆ど意味が無く。

 

 まぁ、ありていに言って遭難していると言うわけだ。

 幸い、水は幾らでも得られるし、食糧も向こうからやってきてくれるので何とかなっているが。

 

 だが、このままではどうなる事やら。

 武器もいつまでも持つわけではないし、しっかりとした休息が得られない状況では少しずつ体力が落ちて行っているのが分かる。

 

「このままじゃ全員お陀仏だろうな……」

 

 キャンプ地にした場所の足元には白骨死体が幾つも転がっている。

 オレ達と同じくここに迷い込み、ここでキャンプを張って何らかの理由で死んだのだろう。

 

 ちなみに、アダマンティンのナイフや【バーン・エッジ/燃える刃】の魔法がかかったショートソードなど、色々と魔法の武器が転がっていたのでありがたくいただいておいた。

 

 町に持って帰れたら一攫千金だな。これだけでも来た価値があるかもしれない。

 帰れたらの話だけどな!

 

「はぁ……」

 

 ため息を一つ。

 命あっての物種なのだから、もうちょっと無難なところに進んでおけばよかったかもしれない。

 まぁ、蛭にさえ気を付ければここで死ぬことはないだろうから、無難と言えば無難なのかもしれないが。

 

「はぁ……」


 またため息を一つ。

 そして、起き出してきた面々の顔を見て、一言。

 

「おはよう、おまえら。今日もクソッタレな行軍の始まりだ」

 

 

 

 

 歩き通し。ずっと歩き続ける。

 道中は全員が無言だ。会話の種は尽きたし、なにがしかの音を聞き逃すのが嫌なのだろう。

 体力的にはまだまだ余裕があるしな。

 

 しかし、変わり映えのしない森を歩いていると言うのは精神の負担が大きい。

 何処まで歩けばいいのか、という先の見えない行動は言いようのない徒労感を感じさせるからだ。

 実際、今すぐにでも座り込んで不貞寝してしまいたい。

 まぁ、そんなことをしたら、そのまま永眠だろうけど。

 

 

 そうして歩き続けて、どれだけの時間が経っただろうか。

 藪を通り抜け、木々を追い越したところで、唐突に開けた場所に出た。

 

 そこには石造建築が立ち並ぶ遺跡があった。

 相当に古い。少なくとも人が住んでいる気配はしない。しかし、なにがしかの生物の気配はする。

 どうやらだが、少しは変化が訪れてくれたらしい。

 

「さて……何の遺跡だかね……?」

 

 そう呟いて、オレはわらわらとあちこちから湧いて出て来たゴブリンの軍勢にため息をついた。

 

 ゴブリンたちは各々が手に武器を持ち嬌声を上げている。

 会話に用いている言語は英語っぽい。

 だが、乏しいオレの英語力では内容は理解出来ないし、そもそも英語なのかも分からないので、何を話してるかなんて全く分からない。

 

 しかし、予想する事は出来る。

 

 大方、美味そうな餌がやって来た、とでも言っているのだろう。

 でなけりゃ、涎を垂らしたりなんかするまい。

 

 オレは再びため息をつくと、背負っていた大斧を手に構えるのだった。

 

 

 

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