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俺は次の日学校に行った。暗黙のルールがあるかのように、淡々と日常のページを繰る生活が始まった。
原乃街が居ないからだ。
クラスのメンバーは頑張って原乃街が居るかのように見える落ち着きを醸成し始めた。俺は奴らの空元気ごっこに巻き込まれるかと思うとウンザリした。こういう時こそみんなで頑張ろうなどと空元気で笑い合ってみせ、その裏では憎悪をあらわにしている気がした。俺達私達に無断で死にやがって。笑顔ごっこがどれだけ疲れると思っていやがる。そういう憎しみだ。余程の親友でなかったら、気疲れや苛立ちが悲しみの先に立つだろう。
俺だって疲れていないわけではない。欺瞞的なクラスの雰囲気の中に身を置くのは滅入ることだった。
しかし、アイに言われたことを確かめなければならなかった。
――葬式に来ていなかったクラスメイトを思い出せるかい? 学校に来ているかどうか確かめてきてくれ。
それをやってどうなるんだと俺が訊いたところ、
「仮説があるんだ」とアイは切り返した。「だけど、確証はない。仮説をできるだけ補強したい。明日、君に学校に行ってもらいたい」
アイはそれきり口をつぐんだ。原乃街のことも、神とか悪魔のことも、仮説とやらが確かめられてからだ。そう言っているようだった。
原乃街が死んでから葬式終了まで、五日間とも来ていない生徒は三人居た。そのうち、原乃街が死ぬ前から欠席している生徒が一人居た。三人のうち、今日も学校に来ていない生徒は三人。全員だ。三人とも男子生徒だった。
携帯に電話があった。
「どうだい、判明したかい?」
アイからだ。家からかけているらしい。なぜ俺の番号を知っているのだろう。
「調べられる限りの情報は、事前に集めておくものだ」
ということだった。俺は、学校で分かったことを伝えた。
「そうかい。仮説は正しいかもしれない」
「何なんだ、仮説というのは」
「その三人は恐らく消滅している。『魅了する神』の原乃街君に夢中になったあまり、取り込まれてしまったと思われる」
「ちょっと待て。消滅とか急にサクッと言われても分からない。どういうことなんだ」
アイは黙り込んだ。考えているようだった。焦らされる俺は動悸がしてきた。
「太一君。学校が終わったら、まっすぐ帰って来たまえ」
「え?」
「気をつけながらも、急いで帰るんだよ」
「おい、なにを慌てているんだ」
「慌ててはいない」
しかし、アイは明らかに早口だった。
「話は後だ。とにかく早く。無事に帰ってくれ。頼んだよ」
電話が切れた。アイはいつもよりも言っていることが整然としていなかった。そして、そのことに自分で気付いていない様子だった。俺は不穏な空気を感じた。
何だっていうんだ、一体。




