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L I M I T  作者: 植井 途央
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第007話 飛ばされた異セカイ



「っうわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



航は、叫んでいた。

「あああああぁぁぁ……っうあ!?」

そして、叫びが止まらない内に、気付いた。


(俺…生きているのか!?)

不思議な感覚だった。落ちたと判っていても体に痛みが全くない。

次第に手の感覚がはっきりしてきて、身体を動かせることにも気付いた。

(やっぱり…生きてるんだ…)

そう思った時には、自然に目が開いていた。

ぼやけた視界が晴れた

瞬間―――

信じられない光景が、航の目の前に飛び込んできた。

(えっ……!?)


(何だ、これ!?)


航の目の前には、見知らぬ服を着て、剣のような形をしたペンダントを首から提げている人たちの集団が出来ていた。


(ええっと今日は…あれ7月9日だ、文化祭の日じゃない…じゃあ、この人達は…誰なんだ?某宗教団体か?)

そう思っている内に、群集の中から声が上がり始めた。

そして、その言葉は、航には理解出来なかった。

思いっきり自分の頬をつねってみる―――――勿論、強烈な痛みが走った。

試しに頭をグーでぶっ叩いてみる―――――こちらも、並ならぬ激痛が走る。



(夢じゃ…ない!?  しかもここって、日本じゃない!?)



涙混じりに頭の中で考えが浮かんだ瞬間、その考えをくしゃくしゃと丸め込み、以前封印された脳内ダストシュートの封印を解除してから、その中に放り込み、また封印を掛ける。

(落ちた衝撃で、見える世界が違っているんだ。多分。いや、絶対)

現実逃避ダメ、ゼッタイ。と無理やり目の前の状況を納得するがしかし、航は全くと言っていいほど冷静になれなかった。

そんな航の頭の中に、22世紀型猫型ロボットが現れ、黄色い洋服に黒い短パンの少年と一緒にピンク色のドアの中へと入っていく姿が現れた。


(いやいや空間移動なんてそんなことあるハズが無いじゃないか)


考えが浮かんだ瞬間、その考えを…(以下略)

(とにかく、ここが何処で、何故俺がここにいるかを知らなければ何もやっていけない)

しかし、言葉は通じそうになかった。

試しに立ち上がって目の前の男に“こんにちは”と話しかけてみた。

すると突然男はわめきながら航に向けてペンダントに付いている剣形のものを向けて来た。


「うおっ!?」


思わず叫んで尻餅をつく。航に剣形の物を突きつけた男は、まだ喚いていたが、暫くしてから人混みに引っ張って行かれた。自尊心を傷つけられたとでも思ったらしい。

(何なんだよ、まったく)

呆然とその場に座って周りの喧騒を眺めていた航だったが、その目の前で少しの間を置いてその場が静まり返った。水を打ったような静けさ、と言うべきか。

しかし、不思議に思っている航の目の前で、また喧騒が起こった。ただ、さっきのような見物の騒ぎとは違っていた。

(今度は何なんだよ…)

思った直後、人混みを掻き分けるようにして一人の老人が現れた。

(っうお!?)

今度も驚きを隠せなかった。

目の前の老人が、航の身長を1.5倍ほど上回る、大男と言われる類の人物だったからだ。

その大男もまた、胸に剣形のペンダントをつけていた。そのペンダントは、周りの人々が着けている銀色の物とは違い、一回り大きく、綺麗な翡翠色をしていた。

「ヌシは何者じゃ」

男が、長い白髭の間の口を開いて、言った。威厳があり、思わず圧倒されそうな声だった。

しかし、航には、言葉の意味が解らなかった。

答えない航に、言葉が通じないのではないかと察した老人は、周りの人々に向かって何かを大声で叫んだ。

それから時間が経つ毎に人混みが薄れていき、航とその老人だけが残った。

(うわぁ…)

視界が開けて航が最初に思ったこと、それは、



(やっぱココ学校じゃねぇ…)



ということだ。

航と老人がいるこの場所は開けて広場のようになっている。地面も整備されていた。

しかし、その広場の外に視線を移すと、道の両側には切り立った崖しかなかった。

そしてその崖の中に家があるのか、さっき航を取り囲んでいた大勢の群集はその崖に吸い込まれるように消えていった。

(しかも日本でも無さそうだ)

そう思った刹那、

『ヌシは何者じゃ』

頭の中に、目の前の老人の声が大きく響いた、ような気がした。

航が良く知っている、聞きなれた、

日本語で。

(!!?)

誰!?と、叫びそうになった。しかし、航にはどこから話されているのかが、分かった。

(剣形の…ペンダント……)

そこしか考えられなかった。老人は全く口を開いてないからだ。

まるでそれが、意思を持っているような、……

『通じるようじゃの』

また、声が響いた。やはりペンダントの方から聞こえる。

「貴方は、誰なんですか?」

ペンダントにも、老人にも、双方に訊いてみた。

わしは、この都市の長じゃ。今、ヌシに話しかけておるのは、このペンダントを通してじゃ。この都市の言語は通用せぬのじゃろう?』

「ペンダントを通して……ってことは、いわゆるテレパシー…ってやつですか?」

『テレパシーという物の類ではない。自分の伝えたい事柄、最低限の願いを具現化する為の道具を使っておるのじゃ』

「道具…って、そのペンダントの事ですか?」

『左様。因みに今ヌシが話しておる言葉も、このペンダントを通して儂に通じておる。安心せい』

「は…」

いそうですか、なんて言えるか!何だよ意思の具現化って!もうメルヘンの世界じゃないか!!

必死に言いたい気持ちを堪え、何とか「はぁ…」という生返事だけ返す。

『信じることが出来ぬのは仕方ないと思う。以前この地に流れてきた人間も、最初は、そうじゃった』

また、はぁ…としか返せない。

『ところで、さっきから何度も問うておるが、ヌシは何者で、どこから来たのじゃ?』

老人がまた、話題を変えた。

航は、周りを一瞥し、答える前にと、立ち上がって提案した。

「取り敢えず、場所替えをお願いします」

『ん?』

老人が、不思議そうに辺りを見回す。

さっき一旦消えた人混みが、また元通りになろうとしていた。

『……………』

はぁ、と、老人が汗と共に溜息を漏らし、『ついて来なされ』と言い、航に背を向けて、歩き出した。

航もその後を、周囲の興味の視線を一身に浴びて付いて行った。



未だ、この状況を理解できないまま



異世界に飛んだ主人公。多分あのころ読んだゼロの使い魔に影響されたんだと思います。でも大丈夫、魔法は出てきません。………たぶん

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