第013話 組織の中で Ⅲ
闇に包まれた空間―――
幾つかの光が小さく灯る空間、
その中に据え付けてあるスピーカーから、声が響く。
「Cブロック情報収集部長官、連絡があります。」
女の声だった。
「…そちらはカリウス星に放った捜索兵、フィルだね。どうしたんだい?今のところカリウス星に、“選ばれし者”は居ないはずだけど?」
「それがその…発見いたしました」
「…はぁ?」
「…もう一度言います。“選ばれし者”を、発見いたしました」
声が強くなる。
「…あのねぇ、フィル。“選ばれし者”っていうのは最高指揮官が決定する者であって…」
「そのような問題ではではありません」
Cブロック情報収集部長官は、この押し問答にもどかしさを感じ始めた。一体何を言い出すんだ?という思いが、頭の中で渦巻く。それを、フィルがこの上なく簡単に破った。
「管理№02、地球と管理№03、ウィラムの“選ばれし者”を同時発見いたしました」
「…冗談はよしてくれよ」
Cブロック情報収集部長官は冷や汗をかきながらも冗談だと思い込む。
「画像を添付送信します」
フィルがそう言った瞬間、情報収集部長官の目の前のモニターに、写真が表示された。
何処かの家の中だろうか、書庫のような場所の中で向き合って話しをしている少年と、少女。
少年の方は先日ゾルスから連絡があったことで知っていた。
―――忍坂 航。
もう一人は…
「こいつは…! そうか…ウィラム星からも捜索兵の通信が途切れたと思ったら、こんなところに来ていやがったのか…!」
ウィラムの“風使い”、ローラだった。
情報収集部長官は、噛み締めるように言葉を呟き、
「Cブロック全域に告ぐ! “選ばれし者”を発見。繰り返す。“選ばれし者”を、発見。控えの捜索兵
は即刻出動を命ずる。場所はカリウス星。諸事情は後ほど連絡する。」
マイクに向かって叫ぶように言った。
話が終わってから、マイクの電源を切り、椅子に深々と座る。
一つの深い溜息をつき、仕事を再開する。
*
カリウス星、
航達が住み込んでいる、キールの家の前、崖の斜面に立っていた人物が、トランシーバーのような物を耳から外し、服のポケットに突っ込むようにして入れる。
深紅色の長髪を持つその人物は、フッと笑い、崖から飛び降りる。地面が、その人物の身体をゆっくりと受け止める。
「任務遂行ね」
呟くように言い、その人物、捜索兵フィルは、動き出した。
星の名前はどうやって考えたんだろうかつての俺。わからない。多分妄想成分100%です