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L I M I T  作者: 植井 途央
11/17

第011話 安堵



ゴスッ!



響の後ろで鈍い音がした。

(何だ…?)

とっさに振り向いて、気付く。

「えっ!?」

思わず声に出てしまう。

(何で……ここに……?)

“捜索兵”ゾルス、響にとっては“禊祭りの時の大男”が、響の後ろに倒れていたからだ。

そして、その背後からはもう一つの声。

「羽祖君!大丈夫だった!?」

但徠 巫名の声がした。

「何が…どうなって?」

河川敷の斜面を滑るように降りてくる但徠に、訳も分からずに訊く。

「気付かなかったの?  その人が、羽祖君の肩に手を掛けようとしてたんだよ!」

聞こえた途端、響は、但徠の声に一瞬のひっかかりを感じた。

(何で、この男が俺の敵だと解ったんだ?)

「右手」

響の表情を読み取ったかのように、但徠が言い放った。

鋭い声での一喝に、響は反射的に首を下に向ける。

「うわっ!何だこれ!?」

響は驚きを隠せない。

響に手を掛けようとしていた大男の反対の手、

ゾルスの右手には、拳銃のような―――確実に殺人目的の武器であろう何かが握られていた。

「狙われているのも気付かないなんて、何やってたの? また忍坂君のこと?」

図星を突かれて一瞬怯みそうになった響だったが、同じ事故現場にいて自分と同じように悩んでいる但徠には、あの空間の事を話してもいいと思った。

「まぁ、そうなんだけどさ。つーか、俺、発見しちゃったんだよね」

響の顔には満面の笑みが広がっていた。

「な…何を?」

多少引き気味に但徠が尋ねる。

それに対する返答は、但徠にとって大きな衝撃だった。

「航が、生きてる可能性」

最初は、嘘かと思った。しかし、羽祖 響はこのようなことで嘘はつかない。

「どうして解ったのよ」

心の奥では信頼していても、つい声を出して確かめたくなってしまう。

「見たら解る」

響の答えは、素っ気無かった。

答えた瞬間、再びラジコンの操縦バーに力を込める。

空中で旋回していたラジコン飛行機が、響の頭上を通過し、看板の真上を通過し、川のほうへ進んでいった。

そして、それは、2人の見ている目の前で、

消えた。――――


「は?―――――――えええぇぇぇぇぇぇ!?」

但徠が大声を出す。

「シッ!気付かれたらどうする!」

響が、目の前に倒れている大男に注意を払い、言う。

「だ、だって、き…消えたんだよ!あれ!!」

但徠の声は焦ったままだ。

「…俺だって最初に見つけたときは焦ったさ。でも、こういう所があるのなら、っと。」

操縦バーを前に倒す。

ラジコン飛行機が再び空間から表れ、響のほうに向かって飛んでくる。

両手を使ってキャッチした響は、ラジコンの電源を切った後、満面の笑みを浮かべて言う。

「この中のどこかで航も生きてるんじゃないかな…って、思えたんだ」

響の声には、自信が満ち溢れていた。

「かも…知れないね」

但徠が同意しかけたとき、


「…ぅ……うん?」

大男、ゾルスが目を覚ました。

響と但徠は一瞬向き合い、

「逃げるぞ!」

響の一言で駆け出していた。


「んなっ!」

ゾルスの意識が戻ったときには、もう二人の姿はなかった。

「畜生、逃げられたか!」

トランシーバーのような通信機器を取り出し、叫ぶように言う。

「“SIMS”最高指揮官!応答を頼む。情報交換ワームホール発見者の少年を、取り逃した。背後には共犯者がいる模様!」

「知っている」

すぐに返答された。

………

「私は、どうなったのですか!」

訳の分からないゾルスが叫ぶ。

「背後から石礫を投げつけられたようだな。当分後頭部が痛むだろうが、辛抱したまえ」

対する最高指揮官の応答は、呆気なかった。

ゾルスの足元には、そのとき投げつけられたであろう拳大の石が転がっていた。

言葉に打ちのめされたように、ゾルスはがっくりと膝を突く。


逃げていった響達を追い駆ける気は、起こらなかった。


小分けしすぎたかもしれない……まあいいか。問題ない

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